46. 大人も子供もお疲れ様




「つか、れた」


 夫と5日、そのあと連休を取った母のところへ5日、計10日間の非日常を味わったわたしは正直ヘトヘトだった。


 夫がいればご飯はいつもの倍作らないといけないし、実家へ行ってもちいちゃんのご飯は毎食作らなきゃいけない上、あちらの家族にタイムスケジュールを合わせなくてはならず、なんやかんやと気を遣って疲れる。


「昔からわかってたけど、集団生活って苦手」


 主に同じ空間で「暮らす」ことが。


 でも今、それ以上の地獄を見てる。


「ぎゃあああ!やあー!あああ」

「ちいちゃんごめん、でも洗濯機回さないとだし、ご飯も作らないとだし、荷物も片付けないと…」

「なあああああ!」


 いつものことだけど、夫や実家で散々甘やかされ、尚且つ必ず誰かが構ってくれる状況に慣れてしまったちいちゃんはすごい。耳がキンキンするほど絶叫して大粒の涙を流し、顔を真っ赤にしながら、最後には泣きすぎて戻す。


 きっとこれを見てる人は「そうなるす前にだっこしてあげれば」「かまってあげれば」と思うだろう。


 でもちいちゃんはだっこなんてさせてくれない。逃げるどころか叩き這いつくばってでもわたしから逃れようとする。結構ショックだ。 そしてご飯がないならないでお腹を空かし、相乗効果で更に泣く。構われるのも嫌、放置されるのも嫌、すべてが嫌で何に泣いてるのかもわかってないような感じなのだ。


「いやもう、辛い、ふつうに」


 響き渡る絶叫、抱き締めることも放置することも許されぬ中、娘を見守るわたし。育児を過酷だと思う瞬間だ。


 15分ほど泣いたあと、落ち着いたところにすかさずブドウを出した。アンパンマンカレーを温めると、嬉しそうにしていた。忙しいとか疲れたとか、そういうときは簡単でいいのだ。


「はいちいちゃん、ちいちゃんも疲れたよね、お疲れ様」

「んっんっ」


 嬉しそうにスプーンでカレーをすくい、口に運ぶ。


「あっ、まだ熱いかもだから気を付けてね」

「…っち!なあああっ!」

「ぎゃあっ」


 カレーのついたスプーンは、買ったばかりのパーカーに飛び付いた。


「どっとつかれたわ…」

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