第39話 あほで愛しい寝相





 妹が大好きな漫画の新刊を買ってきてくれた。



「うわー!新刊出てたんだ!本屋なんて全然行かないから知らなかったよー!」


「お礼は冷凍担々麺でいいよ。」




 ファッション誌をめくりつつ返事をした妹を無視しつつ、いそいそと漫画を開く。



 今日はツイてる。



 山にこもったり当直だったりしてしばらく会ってなかった夫がいて、なおかつ娘は既に膝の上で夢の中。


 読めと言わんばかりのシチュエーションだ。



「ねね、ちいちゃんむこうに寝かしてきたら、これ読んでいい?」


「いいよ、俺も寝ていい?」




 いいけど、まだ8時だよ………。








「───はー!よかった!最高!かっこよすぎ!」



 推しキャラは少な目だったけどいい仕事してたぜ!



「えー、おわったー?読んでいい?」

「どうぞどうぞ」



 ばあば、妹と漫画を読む間に、娘の離乳食の食器を片付ける。



 歯磨きをしてスマホをいじって、見たい番組を一通り見て…。



「んー、そろそろ寝ないと、ちいちゃん早寝だったぶん早起きだろうし」



 授乳クッションを持って寝室へと向かい、和風な引き戸を開けると、夫が目にはいった。



 大きなゴツゴツした両手をパンツのなかにいれて、おしりをさわるような格好で寝ている。



「え、ちょっとどうなのそれ」



 一方、目の前の小さなお布団には愛娘のちいちゃん…は寝ておらず。


 ちいちゃんは転がって、わたしのお布団で寝ていた。



 なにこのひとたち。

 寝相悪いの?(わたしはミイラのようにして動かず寝ます)




 でも……。



 おしりをさわりながら寝てても、わたしのお布団独占して寝てても、なんだかむしろ、あほ可愛く見えてきた。



 うん、あほ可愛い!



 こういうとき、私はそっと夫に掛け布団をかけて、娘を抱き締めて寝ればいいのね。



 あほで愛しい、この寝相をずっと見られますように。

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