第37話 旬の味覚を味わおう





「離乳食期に食べなれなかった味は、成長したときに嫌いと感じる確率が上がる」



 …と、栄養士さんからお話しいただいたわたしは、冷蔵庫を開けた。



「ミニトマトと人参と…枝豆か」



 実母が夕食を作ってくれるため、わたしは原則買い物をしない。


 朝はお弁当の残り、昼はあるものでささっとすませがち。



 そのため冷蔵庫は必要最低限のものしか入っていない。




「枝豆、つくってみるか」



 枝豆の離乳食ってわたしは聞かないけど…せっかくなら旬の味を味わってほしいもんね!



「まずは柔らかくなるまで煮て…」


 コトコトコトコト、何分くらいかはわからないけど、それっぽいところで上げ、薄皮もはずしてう……


「あっちーーーーーーー!!!!!」



 だめだ、熱すぎる!断念しよう!人参を茹でよう!



 皮を剥いた人参を水から茹でてすんなり楊枝が通るまで待つ。その間にトマトを湯剥きすれば、枝豆も少し熱を飛ばす。



「薄皮をはずして、まずはすり鉢ですりつぶして…」



 お、思ってたより大変だな。豆って人参とかよりよっぽど難易度高いかも…。


 すってもつぶしても、なかなか滑らかになってこない。


「裏ごししよう!」



 きれいに裏ごして…。



「出来た~!枝豆のペースト!今日の離乳食は枝豆と10倍粥にしよう」




 *




 …いざ、実食。


 ※実はこれが初めてのお粥以外の食べ物です。



「ちいちゃん、あーん…」



 …ドックン、ドックン、ドックン…


「…おいし?」

「へへぇ」



 枝豆おいしくいただきましたーーーー!!!!


 これでこそ苦労が報われるってものよ!



「ひゃーあ!」


 べちゃっ!



「…ん?」



 …枝豆ペーストに両手を突っ込んで、それがおじゃんになったって、気にしない、気にしないわ……。

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