第62話 大じじばばの元気の秘訣





 家系の本家が近くにあるおかげか、なにかといろいろなお裾分けをいただく。



 季節の果物や野菜、山菜、お菓子にアイスにジュースと、子供のころはそれを目当てに祖父母のもとへ泊まりにいっていたようなものだった。



 その伝統は今でも受け継がれているのだが、特に我が家へのお裾分けはめちゃくちゃ多い。



「もしもしー」

『おう、今おこや作ったっけ取り来いえ、でっこい皿持ってくだよ』



 何かあればくる電話。娘を抱いて、本家へと歩く、数十秒の道のり。



「お~来たか来たか、あがれいや!」



 わたしは知っている、もう86歳の大ばあちゃんの目的が、…



「ちーいちゃん!や~かわいいねぇ、目がくりっとして鼻がたこうて!」



 …ちいちゃんであることを!




 本家は男系家系でひ孫に至るまで男、男、男と来たもので、分家の中でも明らかに女系の我が家は可愛がられたのである。



「おう、ちい、来たか」



 声の小さい92歳の大じいちゃんも、女の子にメロメロ。これで昔はちょっとヤンチャで、悪い人たちの付き人をしてたなんて聞くから驚きだ。




 とにもかくにもちいちゃんに甘い二人は、毎日のように電話で呼んでは、やれ顎が旦那に似てるだの、やれこの子は美人になるだの、誉めに誉めてお土産を持たせてくれるのだ。



 食費は浮くし、普段食べない高級品や見たことのない品種、興味はあったけど食べたことのない食材が回ってくることもあり、お手もお得だ。



「…でもね、ちょっとこれは……」



 もりっ

 もりっ




「食べきれないよ!!うち3人だから!」


「ちいちゃんにもやればいいねっかね!ほれ、こいだけあれば三食おこわ食われっがね!」




 ……いや、おいしいけど。




「さすがに多いて」

「あ?あんだ?なんだって?」


「なんでもない!!!」

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