63.せーので一歩
あっという間に月日は流れ、春を感じ始めた3月。娘の成長を記したい一方、書いても書いても伝わらないとモヤモヤしすっかり更新できなくなってしまった。
そんなわたなべ家、この春、新生活に向けて大きく一歩、踏み出そうとしている。
「保育園決定&昇進おめでとうー!」
「そんな大したものじゃないから」
東海から戻った夫は昇進(と一般の会社ではいうのではないか?)が決まり、今までとは違う仕事も任されるようになっていった。さらに忙しく、時には半鬱状態なのでは?と思うようなこともあった。あのときは本当にすさんだ我が家であった…。
そして愛娘ちいちゃんも保育園の入園が決定した。私もこの春から手に職をつけることとなる。
一気に忙しくなった。2歳の娘はイヤイヤ期、体力も精神も消耗する毎日だというのに、コロナウイルスの拡大は痛かった。市内の支援センターや市営施設は閉鎖され、消耗品も品薄状態、思うように動けない日々の中、ちいちゃんはお昼寝をすることがなくなり、心休まる時間はすっかりなくなってしまった。
とにかく毎日必死で、気がついたら3月だったのである。ほんの少しだが気持ちも持ち直したような気がするのは、春らしくなったこの気候のお陰だろうか。
「ねぇちいちゃん、もうすぐ保育園だね」
「うんー」
わかっているのかいないのか、娘の返事はゆるく軽い。寝る前のふとんでのコミュニケーションはわたしたち親子の大切な時間である。
なんだかすごくさびしい。
この子と過ごした2年間は、自由が少なくて、大変で、目まぐるしくて、濃くて苦しくて、すごくすごく、愛しかったから。
「おかあさん、ちょっとさびしいな。でも、すごく、大きくなったね。そういうことだもんね」
眠る前のぬくいふとんの中、このぬくもりが第一の親離れの階段をのぼろうとしているのだろうか。それはこの春、もうすぐのことだ。
「ままぁ、いっしょ、ぎゅー」
まどろむ娘をぎゅっと抱き締める。安心した表情でうとうとと目を閉じた。
それはもう少し先のこと。
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