第64話 冷えたからだをあっためて





 ぐっと冷え込みが強くなり、日差しも弱まる今日この頃、わたしは頭を抱えておりました。



「ちいちゃんに着せる服が、ない!!」



 赤ちゃんはすぐに大きくなってしまうため、服は最低限しか揃えてこなかったわたし。ここ数日の悪天候もあいまり、残っているのは薄手のカットソーとレギンスのみ…。



「ちいちゃ~ん、ごめんよ~これしかないよ~」


「あ、あ、うー」



 元気に絵本を出し始めたけれど、どう考えても寒そう…。


 なぜならここは、いわゆる雪国だから!



「雪の季節はまだだからって油断しすぎた…」



 出掛けるにもちいちゃんに着せるアウターがないし、ネットよりも出来れば実物見てサイズ感を確認したいし…。



「なんか着せるのないかなー……ん?」



 これは……新生児の頃着せてたもこもこベスト2着!



 ベージュのもこもこベストはクローバーの刺繍がさせていて、白地に黒ドットのふわふわベストは犬の刺繍がされている。



「なつかしいー!着てたこれ!」



 …はっ!これを着せればよいのでは?



「サイズは……50~70、9キロまで…ギリいける!」



 洗っておいたとはいえ、本当は着せる前にもう一回洗濯したいけど、そんなことは言ってられない!



「ちいちゃん!これ着てみよう!」



 もそもそと腕を通そうとすると、



「う、う?……やああーーーっ」


「や、ちょ、せめて入るか、確認…」


「やあーーー!」



 嫌々しながら着させようとしてる本人わたしに助けを求めてよじ登りしがみついてくる。



「やあ!うっ、うー」



 …………なにこのかわいい生き物。



「わかったよ!嫌なのね!もうしないよ!だからちゅっちゅさせて!」



 娘をだっこして、ん~と唇を近づける。



「や!」



 ぺちん!



「うぐっ!」



 油断した!まさか平手打ちくらうとは…



「ちいちゃん、痛いよ~えーん」


「……へへっ」



 以来、娘の前で泣き真似をするとめちゃくちゃ笑います。



「…か、かわいけりゃあなんでも許されると思うなよお!」

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