第55話 母になる1





 このたび、風邪を引きました。




 幼い頃は何かあると風邪を引いていたわたしですが、小、中、高と成長していくにつれて風邪を引かなくなり、妊娠中ももちろん厳重注意をしていました。



 つまりは今回、久しぶりの本格的な風邪だったのです。





「ああ~大人の風邪がこんなに辛いなんて~」



 風邪に気づいたのが土曜の夕方。その後夜に悪化し、日曜日にはついに……


「けぇほっ、けぼっ、げ、ご、ごほっ…………ふえ~」


「大丈夫?苦しいね、やだね」



 ちいちゃんに移してしまったようなのです。



 しかし世は連休真っ只中、発熱もなく、すこし咳と鼻水くらいで救急外来にも行けず、夜中にグズりつづける娘を風邪ピークのわたしが寝不足で夜通しあやし続ける…。



「睡眠時間2時間じゃ治るものも治らん…」



 接客業の家族はこぞって仕事、夫は県外。ひとりでなんとかするしかない。



 離乳食は何かあると悪いから既製品、おっぱい以外にも水分を定期的に飲ませ、待ちに待った小児科受診。




「おかあさん、安心してください、肺炎もないしただの風邪です。ただね、この感じ、夜中に熱が出たり、数日寝付きが悪くなると思うから、頑張って」


「は、はい…」



「たぶんね、おかあさんの風邪が移ってるんだけど、つまりおかあさんも夜中に発熱してるはずなんだね。だから風邪引いてないひとに頼ってね」




「…………」




 そっか、本来なら夫がいて、こういうときすこし見てもらって休んだりできるんだ。



 自衛官この人と結婚するって、そういうことだってわかってたつもりだったけど。



 わたしいま、辛いって思っちゃってるんだ。

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