第3章 闇邪教編
第121話 ワイズベル死す
分身ナンバー1の映像。
「ぐっ……」
ワイズベルが苦しんでいる。
毒によってだ。
犯人は元マフィアの男。
ワイズベルを助けるほど俺はお人好しではない。
たしかに、俺がマフィアのボスを殺して、罪をワイズベルになすりつけたのは事実だが。
ワイズベルはマフィアとの関係など持たずに、防衛に徹して無罪を叫び続けたら良かったんだ。
そうすればマフィアもあれっと思うだろう。
陰謀が隠されているとなる。
そうするとファントムの犯行が明るみに出たかもな。
マフィアを乗っ取ろうとした時点で、無罪と言ったところでどうにもならない。
そして、マフィアとの抗争の決着が着いた時点で、とりこもうとせずに放っておけばよかった。
マフィアの思考は単純だ。
強いうちは従う。
落ち目になって弱くなったら下剋上する。
弱みを見せたワイズベルが悪い。
さらばワイズベル。
男は念のために短剣をワイズベルの胸に突き立てた。
「ボス、仇はとりましたぜ」
ワイズベルらしい死に方と言える。
味方に裏切られるとは思ってなかったのかな。
いや、用心はしてただろう。
だが、賢者の塔での元マフィアの存在が大きくなったので、二人だけの会談をしなければならなくなった。
いつもなら、側近をたくさん連れて、威圧するような態度を取れてたのにな。
弱り目に祟り目という奴だな。
「次はファントムか」
えっ、ボスを殺したことがばれたのか。
これは尾行しないとな。
分身ナンバー1が男の後をつける。
男は怪しそうな酒場に入った。
そして、個室に入る。
分身が霧化して、個室に入った。
個室には既にフードを被った男が既にいた。
「お前達の手引きで、ワイズベルは仕留めた。そのお礼にファントムを仕留めりゃ良いんだな」
「ええ。奴は闇邪教にとって最大の敵ですから」
「ファントムは神出鬼没だ。どこに住んでいるかも分からない」
「そちらは闇邪教が全力を尽くしてなんとかしましょう」
「頼むぜ」
話が見えない。
闇邪教って何?
俺が倒した邪教と関係があるの?
謎だ。
ただ尻尾を掴んだからにはその尻尾は離さない。
蝶々部隊の蝶をこの酒場に呼んだ。
フードの男と接触した人物から情報を盗み聞きするためだ。
マフィアの男の後を分身はつけた。
マフィアの男は、宿に入るようだ。
宿の中はいかにも裏の人間というような者が従業員をやっていた。
そういう裏の者達の御用達の宿かな。
「兄貴、首尾は?」
「ワイズベルは仕留めた。これで俺達は闇邪教の一員だ」
「闇邪教は信用できるんですかねぇ?」
「信用なんかしてないさ。利用してやるのよ。向こうも俺達を利用するつもりだろうがな」
マフィアはワイズベルを見限って、闇邪教の一員になるらしい。
分かったことはこれだけだ。
蝶々部隊の報告を待とう。
しかし、嵐が来るような不穏な感じだ。
ライド邸に来客だと、蝶々部隊のひとりが報せてくれた。
分身ナンバー4がお出迎えしてみると、クロフォードだった。
久しぶりだな。
クロフォードは実家の領地を邪教に乗っ取られて助けを求めてきたから、助けてやった過去がある。
「久しぶり」
「大変だ! 邪教が復活したぞ」
「もしかして闇邪教か?」
「そっちにも殺し屋が来たのか?」
「殺し屋ではないがちょっとな。とにかく表で話すことでもない。中に入れ」
応接室にクロフォードを招いた。
「邪教の奴ら、闇邪教と名前を変えた。より地下に潜むらしい。それと眠っていた邪教の信者な。目を覚まして逃げたぞ」
呪いを破ったのか。
淫魔法でも敗れるし、絶対はないからな。
きっと魔力を吸い出すなんらかの手を打ったのだろう。
となるとこの国中の俺が眠らせた邪教信者は目を覚まして、闇邪教の一員になっているな。
始末を後回しにした俺がいけなかった。
「何とかするしかないな。激戦の予感がある。人間を爆弾に変えるような奴らが、さらに凶悪になったんだからな」
「タフン男爵領は戦闘態勢に移行した。警備は戦時下より厳重だ。だが、防げるかどうか?」
「見えない兵器を派遣してやろう」
分身をクロフォードの実家のタフン男爵領に派遣することにした。
「助かる。君のことだから、大層な兵器なんだろうな」
「ああ、街の一区画を皆殺しにできる」
「なるべく被害は出さないでくれよ」
「善処する」
クロフォードは感謝して帰って行った。
驚いたことに蝶々部隊の蝶は振り切られた。
魔法の結界があって進めないようにしてあったらしい。
その結界の場所を聞いて、分身を差し向けた。
ここかな。
分身を霧化したが結界に阻まれた。
どうやら登録してある魔力の持ち主しか入れないらしい。
分身は俺の魔力で染まっているからな。
だが中に入れないのではな。
闇に潜む邪教というのは侮れないな。
当分は闇邪教の信者がどこへ行ったかだけの報告になるな。
とりあえず結界の位置の地図だけは作ろう。
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