魔力操作無双～魔法が使えないで虐げられていた俺は、魔力を体内でひたすらグルグルしてたら、ざまぁしてました～

第１５話 死竜巻《デストルネード》

　順位戦が俺が１位のまま終わった。

　俺の評判は、回避が上手い魔道具使い。

　魔法こそ至高と考えている奴は、俺の戦い方は邪道に映るらしい。

　強ければ良いと考えている奴は、俺を絶賛している。

　賛否あるってところだな。

　死（デス）を解禁したら、おそらく最強の魔法使いと呼ばれるのだろうが、めんどくさいので解禁はしない。

　そう言えば、サマンサ先生から、流体把握（フルイドグラスプ）の魔法を見せてほしいと言われた。

　さて、どういうでっち上げの原理にするか。

「ではやってみて下さい」

「流体把握（フルイドグラスプ）」

「魔力感知（マナセンサー）、体内で魔力が循環しているだけですね」

「よく見て下さい。全身から放出しているでしょ」

「ほんとだ。全身が敏感になる魔法なのですね。感知系の魔法では地味ですね」

「空気の流れをキャッチして攻撃を避けます」

「ふむふむ、訓練しないと使いこなせないのですね。この魔法はどうやって訓練したのですか」

「暗闇で振り子をたくさん揺らして、その中を当たらないように歩くのです」

「それは難しそうですね。ですが納得です。破壊領域（デストロイフィールド）はどうやったのです？」

　漫画知識は偉大だ。

　嘘の訓練方法の宝庫だ。

「あれは妨害（ジャマー）の発展形です。遠距離妨害魔法は既に別物だと思いまして、しっくりくる魔法語を考えたのです」

「遠距離の妨害（ジャマー）はどうやっているのですか」

「妨害（ジャマー）は魔法で相手の体の中の魔力を乱す魔法です。逆に遠距離が難しい方が疑問です」

「それはですね。物理的な依り代があるかどうかなのです。物理的な依り代があれば遠くまで届きます」

「魔力譲渡（マナトランスファー）も物理的な依り代がなくて届きます」

「おかしいですね。何かカラクリがあるのでは」

「もしかして、空気に魔力的な性質を持たせたのでは」

「風魔法ですか。普通の妨害（ジャマー）は魔力で妨害します。妨害の性質を持った空気ですか。やってみましょう。妨害（ジャマー）」

　サマンサ先生が魔法を放った。

　流体把握（フルイドグラスプ）でみる限り魔力のこもった空気の塊が飛んできた。

「できているような気がします」

「本当ですか。風魔法に魔力属性を載せる。回復魔法とかにも応用が利きそうです。やった、大発見ですね。講師から教授になれるかも」

「おめでとうございます」

「ですが、風の塊を長距離維持するのは難しそうです。それに届く時には威力が半減している気がします」

「そこは色々と工夫ではないのですか」

「そうですね。工夫の余地がたくさんありそうです」

　循環していれば、魔力は散らない。

　なんでだろう。

　磁場的な物が回転させることで生じるのかな。

　分からんがまあ良い。

　できているんだから問題ない。

　回転していると魔法の威力が上がったりするのかな。

　サマンサ先生に次になんかネタがないか強請られたら話してみよう。

　さあ、今日も討伐するぞ。

　今日の依頼はグリフォンの素材。

　１００メートル以内に入ってくれば死（デス）の圏内だ。

　そう簡単に行くとは思えないが、何か考えつくだろう。

「あの点みたいなのがグリフォンか。遠いな」

「おびき寄せて討伐というのが定番なんですが、用心深いんでさぁ」

　グリフォンは知ってか知らずか、死（デス）の圏外から羽を飛ばしてきた。

　羽には魔力がこもっている。

　なるほどな。

　羽魔法というわけか。

　羽が当たらないのを見て突進してくるかと思ったら。

「キェェ！」

　この声には魔力がこもっている。

「親分。痺れて動けませんぜ」

「俺は動けるな。循環が麻痺魔法のシールドになるのか。だよな。大抵の魔法は俺の魔力を混ぜれば散る。体内には届かない」

「会話する暇はありませんぜ」

「突っ込んできたら、死（デス）があるから」

　来ないな。

　俺が動いているのを見て警戒しているようだ。

　来ないと殺せない。

　麻痺が解けたのだろう。

　ファントムがナイフを構える。

「ナイフじゃグリフォンはやれないだろう」

「奥の手でさぁ。スイッチを押すとバネでナイフの刃が飛びます」

「殺し屋が使いそうな武器だな」

「へい、そういう店で仕入れました」

　バネで飛ばすか。

　むっ、魔力もバネに出来ないか。

　循環を螺旋にしてバネに、限界までバネを押し込めて解放。

　さらに伸びる時にライフル回転も加える。

　魔力のバネはグリフォンまで伸びていって死の高濃度魔力をまき散らした。

　グリフォンが落ちる。

　良い技だ。

　なんて名前を付けよう。

　遠距離死（ロングデス）。

　うーん、いまいちだな。

　大砲死（キャノンデス）。

　良くなってきた。

　無限死（インフィニティデス）。

　うん、これにしよう。

　かなり遠くまで届くからな。

　伸びる速度も問題ない。

　金属のバネより速い。

　空気抵抗がないせいだな。

　名前を考えている間にファントムがグリフォンの死骸を収納してきた。

　手にはグリフォンの羽が数枚ある。

「その羽はどうするんだ？」

「へい、親分が贈り物に使うと思って確保しましたぜ」

「そうか。カリーナにひとつ贈るか。羽ペンに良いと聞いている」

「交換日記と共に持っていきまさぁ」

　技的には回転の動きが、重要か。

　じゃあ、魔力竜巻とかできるな。

　やってみた。

　流体把握（フルイドグラスプ）には死の魔力でできた竜巻が感じられた。

　この竜巻、魔力吸収（マナアブソーブ）も備えている。

　回転しながら魔力を吸い込み大きくなる。

　魔力感知（マナセンサー）で見たら驚くな。

　名前は死竜巻（デストルネード）だ。

　範囲攻撃に良いかもな。

　速度はたぶんゆっくり目だから、無限死（インフィニティデス）と使い分けたい。

　技もだいぶ増えたな。

　表に出せるのは。

　破壊領域（デストロイフィールド）。

　流体把握（フルイドグラスプ）。

　魔力譲渡（マナトランスファー）。

　鑑定（アプレイズ）

　だな。

　表に出せないのは。

　死（デス）。

　魔力吸収（マナアブソーブ）。

　魔力受流（マナパリィ）。

　無限死（インフィニティデス）。

　死竜巻（デストルネード）。

　だな。