第38話 技開発
元凶の露店商はのほほんと札を売っていた。
貴族の令嬢を眠り姫にしておいて、よくもまあと思うが、本人は知らないんだろうな。
「おい、札を全部買うから寄越せ」
「へい、らっしゃい。全部お買い上げで」
露店商が手を差し出した。
「その手は何だ。代金なら払わないぞ」
「ご無体な」
「お代はお前の命だ」
「へっ?」
「お前が売った札が元で貴族令嬢が死にそうになった。信じなければ別に良い」
「くっ、どれだろう。くそっ、女房の忠告を聞いておけばよかった。札の効果なんか鑑定できるか。そんなことができるならこんな商売はしてない」
「もらって行くぞ」
「あっ、ちょっと。ここから逃げるだけのお金は下さい」
「金貨3枚でいいか」
「足元を見やがって。いや何でもないです」
睨んだだけで縮こまるなよ。
弱い者いじめしているみたいじゃないか。
露店商は手早くゴザや色々な小物をしまうと駆け出して行った。
捕まらなきゃいいけどな。
捕まっても心は痛まない。
さて、札は全部で30枚ぐらいある。
ええと、効果の説明が書いてある生水、点火の札はやると言って、ファントムに渡した。
残った札は5枚だ。
さて、どんな効果だ。
魔力をほんの少し流す。
ああ、この感じは重力軽減だな。
便利な札ではある。
重力魔法の魔力波長は馴染みがあるから間違いない。
どこかの工房に作らせたら、きっと大儲けだな。
重力軽減の札が作れるのなら、重力増加の札も作れる。
逃げる時に使えば、相手の出足をしばらく鈍らせることができる。
だが、犯罪に使われるのを考えたらなしかな。
俺に対して殺し屋が使ってきたら、めんどくさい。
重力軽減の魔道具を作れば、きっと馬車とかに搭載されるな。
お金だいしゅきだから、試しにバッタ屋にやらせてみるか。
「邪魔をする」
「いらっしゃい」
「今日は儲け話を持ってきた。荷物が軽くなる魔道具の魔力回路だ」
「お、教えてくれるの?」
「目が点になっているぞ。嘘は言わないさ。取り分は俺が8でお前が2だ」
「作った数を誤魔化すとか考えないので?」
「俺は貴族だぞ。貴族を騙したらどうなるか知っているだろう」
「はい、もちろん」
「馬車を作る店と、鞄を作る店と提携しろ。ブランド名が要るな。グラビティ。うん花がない。グラビア、いいなグラビアのブランド名で売れ」
「はい」
グラビアなら綺麗な水着のお姉さんみたいで良い。
「ブランドのマークは裸の女性のシルエットだ」
「好きな様にしてくれ。うちは上品な店じゃないからな。そんな感じでも構わない」
次のガチャに行こう。
残り4枚だ。
札にほんの少し魔力を流す。
この感じは電撃魔法だな。
この札はハズレだ。
だが電撃にしては弱いような。
何だろう。
弱いなら自分にやってみても良いな。
札を自分に対して起動する。
おほっ、筋肉がピクピクする。
電気マッサージか。
アイデア的にはありだな。
「次はマッサージの札だ」
「はい、マッサージならうちにもありますぜ」
「どういう奴だ」
「念動のツボ押しです」
「ちっちっちっ、これは電気でマッサージするんだ。そこが違う」
「気持ち悪くないですかね」
「慣れないうちはな」
「じゃあ売れないじゃないですか」
「コアなファンが付くんだよ。取り分は5分5分にしてやろう」
「ありがたいことで」
「嬉しそうじゃないな。嫌ならグラビアの話も他所へ持って行くぞ」
「嬉しいにきまってますよ。ほんとです。この目を見て下さい」
残り3枚。
札を解析する。
この感じは風だな。
ただの扇風機代わりか。
またも外れか。
起動すると、下から風が吹き上げた。
スカートめくりの札か。
古代人、暇だな。
これは作らせなくても良い。
バッタ屋だったらこういうジョークグッズは好きだろうけど。
女性の敵認定されたくない。
残り2枚。
札を解析する。
この感じの魔法は知らないな。
どんな効果か分からないとちょっとな。
俺は札をバッタ屋に使った。
「痛た、痛い、うがっ、何っ……。くうっ、うがが」
魔力の流れを見る。
ああ、呪いだな。
痛みを与える呪いらしい。
きっと拷問用だろう。
バッタ屋の呪いを解いてやる。
「酷い」
「いまの札のことは忘れろ」
この呪いの技は
拷問する機会があるかは分からないが、懲らしめ魔法としては良いかもな。
最後の1枚。
さてどうだ。
この感じは光魔法だな。
起動してみるか。
赤い光の筋が出た。
レーザーかよ。
出力は弱い。
レーザーポインターだな。
まあ札ならそんな所か。
これも売らない。
殺し屋に目潰しとかされたら嫌だ。
俺の方は使うけども。
最近、技が増えた。
表に出して良い技は。
だな。
表に出さないのは。
だな。
だいぶ技も増えた。
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