第37話 治療
医者の恰好をしてカリーナの友達の家に行く。
「ライド診療所から来ました。こちらに病人がいると伺いました。治療できなかったら、お金は貰いません。治療できたら金貨100枚頂きます」
門の所で門番に俺は告げた。
「騙りだと思うが、背に腹は代えられない。診てくれ」
騙りの医者なんかが既に訪れたらしい。
かなりの塩対応だ。
お茶も何も出ない。
いきなり寝室に通された。
カリーナの友達はぐっすりと眠っている。
顔色はさほど悪くない。
まあ、診察は
「お手を拝借」
寝ている友達の布団を少し剥いで、手を取った。
周りで見ている、メイドと家族が唾を飲み込む。
ええと、こりゃ何だ。
馴染みのある魔力のしこりがあると思ったら、腹の内臓がない筋肉の場所に魔力回路ができてやがる。
これが原因だろう。
魔力の流れなら俺は専門家だ。
流し込んだ魔力で魔力回路を破壊していく。
ふぅ、死んだりしないよな。
カリーナの友達が目を覚ました。
「おお、目を覚ました」
「あなた」
「お嬢様、私が誰か分かりますか?」
「あなたはラ……」
俺はカリーナの友達の唇に手を当てた。
そしてウインクする。
通じたようだ。
それから、カリーナの友達は家族と抱き合って喜んでいる。
「奇跡だ。ありがとう、金貨100枚でしたな」
「いや金貨1枚で良い」
「なぜです?」
「病気ではなかった」
病名を聞かれると困るからな。
ここに来た医者が治ったと聞けばどんな病気か知りたがるのは当然だ。
まともな医者ならな。
「なら何です?」
「ええと、呪い。そう呪いです。今回の治療は何もしてません。私が手を握ったら呪いが霧散したのです。なぜなら私は何万人もの病人を救って聖気が備わっているからです。聖気の仕業ではお金は貰えません。訪問代の金貨1枚だけ頂きます」
「なるほど聖人みたいなお方ですね。聖気が宿るのも納得です」
最初の金貨100枚というのは何が聖人か、笑わせるという突っ込みはなしだ。
カリーナの友達が俺を知らなかったら頂いてた。
知っていたら友達とカリーナとの関係が不味くなる。
カリーナの彼氏ったら酷い、ボッタクリなんだよなどと言われたら、困る。
ボロが出ないうちに友達の家から退散した。
しかし、今日は良いものを教えて貰った。
永遠睡眠の魔力回路は覚えている。
少し訓練すれば、再現できるはずだ。
久しぶりに街の外に出る。
とりあえずゴブリンで良いか。
ゴブリンを見つけ、俺は魔力結晶を纏う。
ゴブリンは殴りかかってきたが、魔力結晶を破れるほどではない。
「
少し手こずったが体内に魔力回路を構築できた。
ゴブリンは眠りに就いた。
この魔力回路の優れている所は掛けた相手の魔力で維持されることだ。
だから掛かると永遠に眠り続ける。
あとは習熟して1秒ぐらいで発動できるようにしないと。
今は3分ぐらい掛かった。
さあ、ゴブリンよ来い。
俺の周りには眠りこけるゴブリンで埋め尽くされた。
おっ、オークが来た。
「
ふむ、3秒か。
新記録だ。
オークなんかでもレジストはされないんだな。
接触した方が掛けやすいのはゴブリンの実験で分かっている。
ドラゴンとかに掛けるのなら接触しないとだな。
別の呪いも知りたいな。
魔力放出とかを防げたら、魔法が使えなくなって悪さができなくなる。
殺すまでもないけど懲らしめたいみたいな用途に使いたい。
そういう便利なのがあると良い。
「このモンスターはどうしやす」
「殺しておくか。クズみたいな物だから、魔石は要らないな。オークだけ持って帰れ。
一応バッタ屋に行く。
「いらっしゃい。今度は何か買ってくれよ」
「呪いみたいな魔法を掛ける札か魔道具はないか?」
「そんな物、あるわけないだろ。あってもあるとは言えない」
「ほう、知っているような口ぶりだな」
「ぐっ、呪いだなんていうな。ただの魔法だ。ただレジスト方法がちょっと変わっているだけだ」
「あるんだな」
「ここだけの話だ。痒みの札がある。ただ、魔力を使いきるとレジストされる。まあジョークグッズだが、レジストする方法を知らない奴には脅威だ」
「くれ」
「いいかここで買ったとは絶対に言うなよ。大銀貨1枚だ」
「ほらよ」
覚えておこう。
痒みの札は量産されているんだな。
他にもあったらほしい。
痒みの札を自分自身に使った。
痒い。
どんな魔力回路か把握して壊す。
ふう、すっきり。
こんな技はあまり役に立たないが、まあ覚えておこう。
邸宅に帰ると、カリーナから通信があった。
「ありがとう」
「どう致しまして」
「事件の原因のあらましは後で交換日記で」
「じゃ、お休み」
「お休みなさいませ」
朝起きると交換日記が届いてた。
ええと友達は美人になれると怪しい札をある露店で金貨10枚で買ったらしい。
売った本人もおそらく効果は知らなかったのだろう。
だが、他に呪いの札を持っているとしたら面白い。
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