第36話 眠り姫
「友達が眠ったまま目を覚まさない?」
「はい、そうですわ」
カリーナに会いに行ったらそういう話題が出た。
ふーん、毒かな?
病気?
それとも魔法?
カリーナの悲し気な顔は見たくない。
調べてみるか。
ただ、原因が分からないと、カリーナの友達には会いに行けない。
医者でもないのに女性の寝室には入れて貰えないと思うからだ。
この捜査は難航が予想される。
とりあえずファントムに姿を隠して見に行ってもらった。
「ぱっと見た感じでは外傷はありませんぜ。原因はさっぱりでさぁ」
「まあそうだよね。専門家じゃないから分からないよね」
「普段、飲んでいる薬はなさそうでしたぜ。ベッドわきの水差しの水を採取して薬師に見せても毒はないと言われました」
うーん、簡単に分からないか。
「動機から探るべきかな」
「メイドの話によると、眠り姫になった女性は男を取り合って三角関係だったそうですぜ」
「怪しいが。うーん、ちょっと分からないな」
カリーナとの交換日記に調べたことを書いた。
返事には三角関係と呼べるほどではないと書かれていた。
カリーナの友達が好きな人がいて、告白もしてない。
他の女の子もその人が好きで、ライバル関係らしいが、どっちも告白する勇気はないらしい。
もっと関係が進んでいれば恋のもつれという線もあるかもだが。
どうもこの線はないような気がする。
気分転換にバッタ屋に分身ナンバー3で行く。
相変わらず乱雑だ。
「いらっしゃい」
「人を眠ったままにできる魔道具なんてないよな」
「
「だよな。睡眠の魔道具が無敵ならみんな使っている。やっぱり毒か病気かな」
「眠らせる薬はあるが、効果は一時的だ」
「となると病気かな」
「魔道具屋に聞くのが間違っている。魔道具のことなら分かるけどな。あー、あったな。眠ったままにできる魔道具ではないが札が。古代魔法王国の品らしい。見た事はないが、魔道具屋の伝説になっている」
「札なら、すぐに効果が切れるよな」
「伝説によれば、切れないらしいぜ。まあ伝説だな」
効果が切れないって、本当か。
まあ、伝説だからな。
こうなったら、医者に成りすまして、カリーナの友達の家に行くか。
偽医者をやるとしたら、試験されたらばれるな。
何とか口だけで誤魔化しができないかな。
業界用語とか知っておく必要がある。
よし、医者に弟子入りしよう。
俺は本体で医者の門を叩いた。
「弟子入りしたいのか。10年は掛るが良いか」
「構いません」
そう言っておかないと。
「よし、俺の方針は見て盗めだ。とにかくやってみろ。才能が無ければ破門だ」
「はい」
医者での修行が始まった。
問診の手順だけでも覚えないと。
「次の方」
「はい」
患者が入ってきた。
「お手を拝借」
「はい」
医者が脈を取る。
「ふむ。おい、弟子。お前もやってみろ」
いきなりかよ。
脈ぐらい取れるが、早いか遅いかとか脈とびとかそう言うのは分かる。
だが、ちょっと悪戯心を出した。
だって、診察が始まる前にさんざんこき使って何も教えないんだぜ。
これはちょっとないなと思った。
教えないなら俺のやり方でやってやる。
俺は病人の手を取って魔力を流し始めた。
あれっ、膝と肝臓に魔力のしこりがある。
今まで
病人は魔力の流れも変わるのだな。
おお、診察だけなら免許皆伝じゃないか。
「右膝と、肝臓が悪いです」
「お前、魔法を使ったな」
「ええ、駄目ですか」
「いや、使える物は使わないとだな。何の魔法だ」
「ええと、
「ほう、どういう原理だ?」
「磁気を当てると、共鳴して磁気が生まれます。これで判断します」
「お前、医者の家系か?」
「そんなところです」
「よし、診察を手伝え。俺とお前の意見を総合して考える」
病人を
これ、どこが悪いかまでは分かるけども、何の病気かまでは分からないんだよな。
でも医者の真似事はできそうだ。
1日、医者見習いをやった。
「すいません。やっぱり向いてないみたいです」
「お前の秘匿魔法があれば診察だけなら一流だぞ」
「でも悪い箇所が分かっても、どんな病気か分からないんじゃやっていけません」
「じゃあ、何が向いているんだ」
「ええとカウンセラーです。悪い箇所を指摘して、その箇所に詳しい医者を紹介します。病気の種類は分からないですが、かなり悪いのか軽傷なのかは分かります。それと人の命に責任が持てません」
「人の命に責任が持てないか。そりゃ駄目だな」
「ええ、実家でも言われました。その時は意味が分からなかったですが」
嘘も方便。
「分かった。病人を見つけたら俺の診療所を紹介しろよ」
「はい」
これから、医者の衣服を仕立てないと。
それと器具だな。
元師匠から、器具の仕入れ先は聞いたから大丈夫だろう。
カリーナの友達を
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