第45話 討伐の見学

 分身ナンバー2が街の外へ出ようと門の所へ行くと、ゲイリック王子、スェイン、プリンクがいた。

 ゲイリック王子は騎士を従えて、スェインは同級生と、プリンクは女冒険者達に囲まれていた。

 何だかな。

 分身ナンバー2の体の模様を背景と同じにする。

 これでほとんど見えないはずだ。


 隠蔽魔術にもだいぶ慣れた。

 今ならファントムと同じぐらい隠蔽魔術ができるはずだ。


 ここで会ったのも何かの縁。

 3人を観察して暇を潰そう。


「俺は勇者になる男だ。どうだ俺の物にならないか」


 そんなことをプリンクがほざくが、女冒険者達は無視している。


「くそっ、無視しやがって。俺の雄姿をみてからでは遅い」


 やっぱりプリンクは面白いなこいつについていこう。

 プリンクと女冒険者達は門を出るとオークダンジョンへの乗合馬車に乗った。


 分身は魔力結晶なので空を飛べる。

 プリンクの乗った馬車を空を飛んで追跡、ダンジョンに着いた。

 ダンジョンに入るとオークを見つけたプリンクは。


 魔道具を握ると気合を入れた。


「くっはぁ、爽快一発フィニッシュ」


 プリンクの服がはじけ飛ぶ。

 筋肉隆々となったプリンクはオークを殴り飛ばした。


「最低、仕事はいえ全裸早漏フィニッシュのお供なんてね」

「ぐへへへっ、俺の雄姿を見たか。ほれほれほれ」


 股間を見せつけるプリンク。

 これがやりたくて女冒険者を雇ったのか。


「さあ、早漏野郎はほっといて、オークの死骸を収納するよ」

収納ストレージ。服を早く着なさいよ」


 収納役の女冒険者がプリンクに服を投げつける。


「ぐふふっ、恥じらう姿がぐっとくる。はぁはぁ」


 本当に変態だな。

 プリンクが服を着て、だらしない顔を引き締めた。

 服を脱ぐと変態のスイッチが入るようだ。


 そこへ、スェインがやって来た。


「いい機会だから言っておく。貴様みたいな変態に勇者の称号は渡さない。二度と勇者になるなんて言うな」

「男は実力だ。俺はオークを殴り殺せるぞ」

「オークキングにその拳が通用したら少しは認めてやる」

「ふっ、話にならんな。余裕だよ、余裕」


 話にならん発言に、呆れたのかスェインが去って行った。


 いや、プリンクよ。

 なに勝った気になっているんだ。

 お前、オークキングなんて倒せないだろう。


「私達もオークキングを倒せたら、少しは認めて上げる。付き合ったりは絶対にしないけど」


 女冒険者にも言われているぞ。


「ふっ、オークキングならさっき倒したじゃないか。死骸を出してみろ」


 出した死骸の額にプリンクは王と書いた。

 ぶははっ、前世の某漫画みたいだな。


 やはりこいつは面白い。

 どこまで笑わせるんだ。


「まったく、変態は始末に負えないわ。幻想との区別がつかないんだから」

「ちょっとした冗談だ。オークキングはあれだ。弱すぎて話にならん。それに今日は素振りの日だ。ザコオークを殴り殺すのは俺にとっては素振り。お前らは素振り感覚でザコオークを倒せるのかよ。言ってみろ」


「話すだけ無駄ね。ファントム様なら抱かれても良いわ」

「そうね」

「同感」


 ファントムお前人気だぞ。

 いやたぶん俺のことだな。


 プリンクのオーク討伐は続いた。

 ほんとうにザコオークに対しては無双だな。

 2体同時は駄目みたいだが、それなりに強い。

 俺の身体強化をドラゴンとすると、ゴブリン並みだがな。


 婦女暴行をしないことを祈る。

 もっとも一撃だけであとは一般人だと思うが。


 ゲイリック王子にも会った。

 こちらもオーク相手に無双してた。


「このクラスのダンジョンをライドは一人で討伐したのか」

「そう聞いてます」


「化け物だな。オーク5体ぐらいは相手どれるが、それ以上はきつい。オークキングには集団で立ち向かっても敵わないだろう」

「あっちはデス魔法がありますので」


「なんで俺にはそういう力がないんだ」

「兵は詭道なりですよ。勝てばいいのです。殺すだけの力など役には立ちません」


「だがモンスター被害が出ている以上無視はできん」

「トラップでも何でも使えばいいのです」


 ゲイリックは天才ゆえに、才能の行き詰まりを感じているのだろう。

 泥臭くても勝つみたいな意識があれば伸びるかもな。

 こいつに勇者を押し付けるのなら、アドバイスしてやるべきか。

 だがお付きの者が、そういう戦いを勧めているみたいだからな。


 99回負けても最後の1回で勝てば良いみたいなのは天才の美学に反するんだろうな。

 そういう意味ではスェインの方がしぶとそうだ。

 ただスェインは才能があまりない。

 だから伸び悩んでいる。

 努力の限界なんだろう。


 二人とも殻を破るのは難しそうだ。

 プリンクを入れた3人とも俺を意識しているんだな。

 だからオークダンジョンで修業か。


 意識なんかしなくていいのに。

 勇者問題はなんとかしないと。

 スェインの方が俺としてはありだな。

 何か才能を与えるようなことができれば良いのだが。


 もっともスェインは借り物の才能は嫌いそうだが。

 そういう意味では意外にプリンクが大穴か。

 奴は見境なしだから。

 恐らく、どんな卑怯な手もためらわないのに違いない。


 ゲイリックとスェインにその覚悟があれば勇者になれるのかもな。

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