第85話 二重スパイ

 分身ナンバー3の映像。

 クラフティ達が悪だくみをしている。


「情報屋の話によれば魔法学園にスパイが留学したらしいぜ」

「捕まえたら、手柄よね」

「金一封でるかも」


「よし、やろう」


 クラフティ達が校門の近くで待ち受ける。

 スパイ達がやってきた。


「悪く思うなよ。お前らを捕まえて拷問してでもスパイだと吐かせてやる」

「俺達はこの国に入ってから何も法に触れるようなことはしてない。それにスパイなんかじゃない」


「問答無用」

「仕方ない。正当防衛だ」


 戦いが始まった。

 スパイ達は魔力電池式の攻撃魔道具で応戦している。

 クラフティ達はスパイだからという論理なのだろうけど、スパイ達は悪事だとは思ってないらしい。

 だから、魔道具は正常に作動している。

 嘘判別魔法の穴だな。


 戦いは引き分けで終わった。

 街中で戦っていたので、クラフティ達とスパイ達はみんな逮捕されたのだ。

 分身がクラフティの取り調べの様子をみる。


「あいつらはスパイなんだ」

「はいはい、街中で武器を振り回し、魔法使って戦っていい理由にはならないから」


 まあ、どうせクラフティ達は貴族の力で釈放されるんだろうな。

 スパイの取り調べを見る。


「君達がスパイだってことは分かっている」

「何の事かな」

「君達の国に、君達が裏切ったって情報を流してから、今すぐ釈放しても良いんだ。すぐに釈放されたらどう思うんだろうな」

「くっ」

「よく考えたまえ。こっちの言う通りにすれば、些細な情報は与えてやる」


 こいつらを二重スパイにするつもりらしい。

 何となく面白くない展開だ。

 だが、王にとっては良い展開なんだろうな。


 そして、クラフティ達とスパイ達は釈放された。

 スパイ達はカリーナに目を付けたらしい。

 教室で常にカリーナを窺っている。

 それと、俺の分身だ。

 どうやら俺とカリーナは、スパイ達に獲物認定されたようだ。


 俺の分身はわざと人気のない場所に入った。

 後を付けて来たスパイ達に、永遠睡眠エターナルスリープを施した。


 サマンサ先生の研究室にスパイ達を引きずりって連れてった。


「ライド君、拉致は不味いんじゃないですか」

「嫌だな先生、こいつら眠ってたから助けたんだよ」


「ライド様、護衛チームから報告を受けています。わたくしを見張っていた者達ですよね」


 護衛チームはこいつらの視線を感じていたらしい。

 まあ、高い金を払っているんだから、それぐらいはしてもらわないと。


「カリーナはこいつらをどうしたら良いと思う」

「24時間監視させてはどうでしょうか。蝶々の魔力結晶は使えると聞いてます」

「先生、魔力結晶なんて聞いてませんよ」


「うん、24時間監視してレポートを突き付けてやるか。見張られる者の気持ちを味わったら良い。サマンサ先生、魔力結晶は秘密です。1個で王都が吹き飛ぶぐらいのエネルギーがありますから、研究させるつもりはありません」

「では任務に当たらせるメイドを選別しておきます」

「そんな。ライド君が冷たい。先生すねちゃう」


「サマンサ先生は、ライド様の婚約者ではないので冷たくて当然です。メイドからあれの話を聞いた時にわたくしの気持ちを考えて下さい」

「カリーナさんからもライド君を説得して下さいよう」

「嫌です」


「はいはい、魔力結晶の話は終り。サマンサ先生がしつこいと永遠に眠るはめになるよ」

「先生を脅迫するんですか。仕方ないですね。次に来る時は何か代わりの物を持ってきて下さい」

「覚えてたらね」


 さて、スパイ達を起こすか。

 護衛チームも呼んでスパイ達を起こした。


「君ら、スパイ失格。魔法学園に入る年齢だから、駆け出しなんだろうけど。とりあえず学園にいる間は24時間監視の刑にすることにした」

「何の事かな?」

「惚けてててもレポートを読めば考えも変わるさ。もう行って良いぞ」


 スパイ達の監視が始まった。

 最初のレポートを貰ったスパイ達の顔と言ったらなかった。

 きょろきょろ周りを見渡して、人がいないか確認してた。

 感知系の魔道具を何種類も仕入れたが、発見には至らない。


 感知系魔道具は、前に無効化が証明されているからな。

 女性のスパイは、トイレと風呂での様子をレポートにされて真っ赤になってた。

 うぶだな。

 そんなんじゃ、スパイ失格だ。


 王から来たのか、偽情報を受け取って本国に送っていた。

 もうこいつは無力化したも同然だ。

 こんど何かあったら、二重スパイと囁いてやるだけで良い。


 24時間監視はさすがに堪えたのか、俺とカリーナを監視することはなくなった。

 でも面白いので24時間監視は続けている。

 本国に帰ってこいつらが出世したら、レポートは弱みになる。


 きっと将来恥ずかしくて、スパイだったなんて誰にも名乗れない。

 魔力電池式魔道具と魔力電池は本国に送ったようだったが、急いでも馬車じゃ着くまでに魔力が抜けている。

 ただの魔石を研究すると良いさ。


 スパイ達の注目はファントムに移ったようだ。

 日夜、ファントムの正体を探し出そうと、街に繰り出している。

 たまに、従者のファントムが目撃されているから、その情報をせっせと送っている。

 24時間監視レポートにも、情報の内容があった。


 凄いなと思うのは、従者のファントムの馴染みの店が網羅されていることだ。

 ファントムよ、強く生きろ。

 たぶん殺し屋が来ると思うから。


 最近、ファントムは魔力電池式の魔道具を使っているみたいだから、武力は問題ないだろうな。

 防御系の魔道具も渡しておくとするか。

 魔力電池なら俺が供給元だから、湯水のように使える。

 ここまでして負けたのならそれまでだ。

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