第22話 白き牝鹿
「では87番始めなさい」
魔法祭はついにカリーナの番になった。
これは応援してやらないと。
「カリーナ、頑張れ!」
カリーナはにっこり笑って手を振った。
「
牝鹿の形の炎が形成された。
赤い色だったのがオレンジに、そして黄色になっていく、色は薄くなり遂には白に。
白い牝鹿は駆け出すと的に体当たりした。
的は一瞬で黒焦げに成り、鉄柱が飴のようにぐにゃりと曲がった。
「良いぞ! ナイス!」
俺は歓声を上げた。
「8点」
「9点」
「8点」
「10点」
「9点」
高得点だ。
やったな。
炎のレクチャーをした甲斐がある。
俺はカリーナに駆け寄った。
近衛騎士にブロックされた。
「その人は良いの」
「規則ですので。警備の都合上、何人も近寄らせることはできません」
「じゃあここから。暫定1位おめでとう」
「ありがとうございます」
「会話もお控え下さい」
「近寄らないって言っているだろ。話すなって何だよ」
他の近衛騎士を見たらお手上げのポーズをしてる。
ええと、俺を煽っているのかとも思ったが、近衛騎士が俺を煽っても仕方ないよな。
この分からず屋の近衛騎士がお手上げってことか。
「お前、カリーナに惚れてるな」
「なっ、何を」
「その反応が図星だ。カリーナは俺の婚約者だ。分かっているんだろうな。お前名前は?」
「ウザルだ」
「覚えたぞ。行き過ぎた行為があれば国王にチクってやる」
「お前ごとき国王様が話を聞いてくれるわけはない」
「馬鹿だな。カリーナを通して抗議するんだよ」
「そんなことをされたら」
「じゃあ、カリーナと話をしても良いな」
「好きにしろ」
「交換日記の内容が役に立って良かったよ」
「はい、参考になりました。それと
「じゃあ、国王様と王妃様にも献上しないとな」
「そうですわね」
まあ、魔力の塊って言えば良いような品物だからな。
たぶん僅かに魔力が漏れ出ているのだろう。
身に着けている物はその人の魔力に染まる。
だから、
染み出た魔力を利用できるのは当たり前だ。
「じゃあ、また」
「はい」
ウザルは憎々し気な目で俺を睨んでいる。
何か弊害が起きたら即刻対処しよう。
いや、何か起きた時では遅い。
カリーナの身を守る何かを作りたい。
うーん、魔道具を作るのだったらきっと職人に注文した方が良い。
金ならある。
そういうのではなく。
何か。
うーん、後で考えよう。
とにかく、緊急事態がすぐに連絡できるような何か。
使い魔みたいな物。
こうなれば
そしてそれを置いて少しずつ距離を取る。
繋がりは切れない。
良いぞ。
そう言えば、サマンサ先生が言ってた。
魔法は物理的な依り代があると魔力が散らないと。
つまり物理的な依り代があれば、繋がりも保てる。
繋がった
よし、成功だ。
聞く事だけでなく見ることも可能だが、プライバシー保護のため聞くだけにしておこう。
繋がりをもった
説明書きを書いた交換日記と共に。
ファントムの手に渡った時に
成功だ。
聞かれたくない時は収納魔法の中に入れてと交換日記に書いておいた。
カリーナは俺の声が聞こえるようにしたいと交換日記に書いて来た。
カリーナが俺が持つ
俺の魔力に染まらなければ良いんだ。
ということは机とかの上に置いて触らなければ良い。
カリーナに俺の部屋に来てもらう必要があるな。
それと魔法をずっと維持するのはつらい。
魔道具ならいけるか。
魔力電池にうってつけの物がある。
これを魔力電池に使えば、ずっと魔道具が使用できる。
たぶん1ヶ月は持つんじゃないかな。
いやもっとか。
もっかの問題はカリーナが俺の部屋に来ることだ。
一人で俺の部屋に訪ねて来るのは評判に関わる。
近衛騎士が付いて来ると、この魔道具の存在を知られてしまう。
それでは本末転倒だ。
カリーナが俺の部屋に訪ねてくる理由。
ああ、机に
掃除しにきたとでも言えば良いんだ。
近衛騎士には先に入ってもらって誰もいないのを確認してから、カリーナが
好きな女に掃除させるなんて、夢のようだ。
前世の彼女なら不機嫌になっていたところだ。
部屋が綺麗に掃除されたのは言うまでもない。
掃除は言い訳だったんだけどな。
カリーナは律義に掃除してくれた。
こういう所も好感が持てる。
何時でも声が聞けるが、交換日記は辞めないらしい。
うん、交換日記はあれはあれで良いからな。
説明とかになると言葉だけじゃ上手く伝わらないこともある。
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