第116話 お気楽思考
質問領域でプリンクの居場所が分かった。
分身ナンバー2が空を飛びその場所に向かう。
プリンクは地方領主が住む城の奥にいた。
卵もあるのを確認。
ここの地方領主は糞親父か、プリンクの母親が手配したのだろう。
「くっ、ドラゴンがこっちに向かってきているというのは本当か」
「はい、情報ではそうなってます」
プリンクが長考に入った。
どうするか考えているんだろう。
ここで卵を茹でて食おうとか言い出したら止めるけどな。
卵を売る場合は、卵を確保しよう。
「卵を返すぞ。ドラゴンは言葉が喋れるらしいじゃないか。謝って赦してもらおう」
おっ、プリンクにしては平凡で意外な答え。
さすがに卵を食うみたいな答えは出なかったか。
プリンクは卵を馬車に積むとウラント山に向かって馬車を走らせた。
クラフティ達が赦してもらえないのに、プリンクが赦されるわけはないよな。
だが、何か嫌な予感がする。
まだ一波乱ぐらいありそうだ。
「貴族の子供をさらって、犯人が子供を返します、赦して下さいと言って来たら恐らく皆殺しでしょうね」
「そうなるよな。赦しても禍根は残る。また再び誘拐する可能性もあるからな」
「貴族でもそれぐらい苛烈なのにドラゴンを舐めてますわね」
「自分中心に世の中が回っていると思っている奴らだからな」
「わたくしと致しましてはどなたにも死んで欲しくないところですが、おさまりがつくのでしょうか」
「どうなるか読めないんだよな。ワイズベルっていう部外者もいるからな」
「魔法学園を休学して皆さん落第しないのか少し心配ですわ。生徒の半分が落第なんてことになったら、きっと学園の予算が減らされますわね」
「俺達は分身が授業に出席しているからいいけどね」
そうなんだ。
4は不吉だから、分身ナンバー5が俺の代わりに授業に出ている。
カリーナの分身は前から使っている奴だ。
なので、俺達は問題ない。
「遊んでいるのですから、追試で済めばいいですが」
「サマンサ先生には彼らが帰ってこれたら、レポートとかの課題をたくさん出すように進言しておくよ」
「ええ、それがよろしいですわ」
「俺が心配するようなことじゃないんだけどな」
「ライド様は、この国の影の重鎮。気配りしませんと」
「そんな物かな」
魔法学園が必要以上に荒れるのは良くない。
まあ、微力を尽くしますか。
本体は出動はしないけど。
ドラゴンの巣穴に入ったのは分身のナンバー2と3。
それが焼き尽くされても構わないが、本体の俺がそんな目に遭うのは嫌だ。
安全第一で高みの見物。
これに限る。
事態を収拾できるのならするけど。
「何で俺様は卵を盗もうなんて考えたんだ」
「お金のためではないですか」
「そうだ。お金のためだ。卵でドラゴンと交渉しよう。身の安全の保障と宝物を分けてもらうんだ」
プリンクが馬鹿なことを言いだした。
「お馬鹿さんですね。ドラゴンが約束を守るとは限らないのに」
「全くだな」
俺とカリーナはプリンクのお気楽思考に呆れた。
「くふふっ、大金持ちの予感。バイパンヌと好きなだけいちゃいちゃできるぞ」
「私達にもボーナスをお願いしますよ」
「任せとけ」
本当にお気楽思考だな。
ドラゴンに宝なんて物はない。
あるとすれば、食べ残りの骨とか牙みたいな硬い物と、魔石だ。
それと、戦いに敗れた戦士の武器。
まあ、お宝には違いないが。
金貨を貯めるドラゴンはいない。
童話ではドラゴンの巣穴には宝物がどっさりと書いてあるが、実際はそんなことはない。
夢のない事だが。
「ドラゴンの巣穴には一度お邪魔してみたいですわね。楽しそうです」
「かなり危険だと思うが」
「産まれたばかりのドラゴンの赤ちゃんとか可愛いと思うのですよ」
「まあな。動物の子供で可愛くないのはほとんどいない。ドラゴンと友達になれたら、一緒にドラゴンの赤ちゃんを見に行こう」
「約束ですわよ」
俺達も、プリンクを馬鹿にできないな。
かなりお気楽思考だ。
ドラゴンと友達にはたしてなれるだろうか。
カリーナの要望はできるだけ叶えたい。
「作戦を立てねばなるまい」
プリンクが悪だくみしている。
「どのような」
「卵を前面に出すのは愚策だな。見えないようにしておかないと」
「では密閉容器ごと巣穴に運びましょう」
「それと卵の拓本を作ろう。俺達が卵を持っていると証拠になる」
「はい」
拓本て魚拓とかのことだったな。
この場合は卵拓になるんだろうけど。
まあ、別に良いけど、そんなことをしたらドラゴンが怒り狂う気がする。
子供を誘拐して、そんなことをされたら怒り狂うよな。
ドラゴン目線の思考が抜けている。
プリンクの部下はそれぐらい指摘してやれよ。
イエスマンばかりなのだろうな。
だから蛇女を誰も警戒しない。
知ってて言わないのなら、凄いと思う。
あり得るかも知れない。
プリンクは人望なさそうだからな。
金払いが悪くないから、部下が逃げないのだと思う。
そんな気がする。
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