第32話 ピクニックの準備
柔らかい結界は、クッションや寝る時の低反発マットになった。
低反発マットは特に好評だ。
定期的に魔力電池である
こうなったら掛布団も作りたいな。
結界の掛布団は空気を通さないようにはできるが、水蒸気も通さないため蒸れる。
乾燥の魔法はあるので、魔力回路を作るのは簡単だ。
断熱性ばっちりで、蒸れない掛布団ができた。
なんと重さゼロ。
慣れるまで、重さがないと何だかなという気分になった。
商品として売り出すつもりはない。
ピクニックの下見に行くか。
景色の良い所が良いな。
花なんか咲き乱れているとなお良い。
さすがのファントムもピクニックの候補地は知らなかった。
「モンスターはいても構わない。
「お花畑だと薬師達が知っているかも知れませんぜ」
誘蛾灯は売れに売れてるらしい。
「お花畑の情報を寄越せ」
「うちはポーション工房で何でも屋じゃないんですが」
「知らないのか、がっくりだな」
「知ってますよ。植物の群生地は押さえてます。職業病なのか、目が自然と行って覚えているんでよね。キノコとか山菜は良い小遣いになります。花も季節によっては小遣いになりますから。需要が高まる記念日とかになると花が不足するんで。野原の花でも結構綺麗なのはあります」
「知ってるなら最初から言えよ」
「儲け話だと思ってがっくりきたことの意趣返しです」
「そんなこと言っていると、懇意の工房を変えるぞ」
「変えないでしょ」
うん、面倒だからこれぐらいでは変えない。
お花畑のある所を何か所か聞いた。
さて、下見だ。
うん、あまり歩くのは駄目だな。
待てよ。
歩く必要なんかない。
椅子の形の魔力結晶を作って飛ばせば良いんだ。
俺は鍛える意味もあるからこういうのは普段使わないが特別な日なら良いだろう。
アベックシートを作った。
試運転をする。
うん、乗り心地は悪くない。
どうせなら四人席にするか。
後ろの席にファントムとメイドを座らせよう。
うん、シートベルトがないと危険だな。
魔力結晶ってすべすべなんだよね。
停まる時に放り出されそうになる。
安全ベルトなんてのはどこに発注すれば良いんだ。
着脱の機構は魔力結晶でなんとかなる。
魔力結晶の接着は容易いからだ。
切り離しも俺なら余裕だ。
ベルトさえあれば良いんだな。
革製品の工房なら、ちょうど良いのがあるかもな。
飛ぶ座席にクッションを取り付けよう。
そうすれば乗り心地さらにアップだ。
おっと、ここが候補地だな。
湖が遠くにある。
奇麗な景色だ。
ここに決めた。
緩やかに吹く風が気持ちいい。
遠くで狩りをしている冒険者達が見えた。
毛皮ゴールドラッシュの影響かな。
ピクニック当日にそんなのが見えたら興覚めだ。
「ファントム、肉食のモンスターを狩るぞ」
「へい」
俺達が根こそぎ狩ってしまえば、冒険者はいなくなるだろう。
「
「へい、この辺りにはもういませんぜ」
「よし、狩りは終りにして、飛ぶ座席を完成しよう」
まずは、クッションだ。
布団などを作る工房に行った。
ファントムが収納魔法から飛ぶ座席を出す。
「これの座り心地を良くしたい」
「馬車の工房に行かれた方がよろしいのでは」
めんどくさい。
「金貨1枚出す」
「喜んで」
飛ぶ座席の座り心地は格段に上がった。
「ここが、革製品の工房か」
「いらっしゃい。何をお求めで?」
「座席に人間を固定するバンドが欲しい」
「変わった注文ですが。鞍を固定するバンドみたいな物と考えたら良いんですか」
「ファントム」
ファントムが飛ぶ座席を出した。
「なるほど。たしかにこれだと急に停まると放り出されますね」
「着脱の機構はこっちで用意した」
ベルトが使う長さに切られ、取り付けられた。
「この着脱機能は便利ですね。ほしいですね」
「高いぞ。金貨1000枚はするかもな」
「そんなに。では飛ぶ座席も?」
「ああ、金貨1万枚ぐらいだな」
エリクサーを魔力結晶から作れるのなら、それぐらいの値段になるだろう。
着脱なら磁力という手もあるな。
鉄の剣とか持っていると使えないが、ネックレスとかそういうのは良いかもな。
「いらっしゃい。また花畑ですか? それともデートスポットですか?」
ノムノムナオールに行くと、またかという顔をされた。
「今回は儲け話なんだがな」
「何でも言って聞いて下さい。もはや私はあなたの奴隷です」
現金な奴だ。
「磁力の魔道具を作った。ネックレスの留め具と、穴の開けないで装着できる磁気ピアスなんだが」
「魔力が切れると、落としますね」
「だから常に魔力を吸う魔道具にする。これぐらいなら干からびたりしないさ」
「作らせて頂きます」
また小遣いが増えた。
そして、飛ぶ座席が完成した。
まあ止まった時に放り出されるほど早くは飛ばさない。
だが、俺とファントムが乗って急ぎの用の時は時速100キロぐらいは出すかもな。
普段は時速30キロぐらいの安全運転で行こう。
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