第31話 薬草変換の札

 散財の何かを考えないといけない。

 毎日、金貨500枚は不味い。

 オークの素材を売った金貨もあるからな。

 お小遣いだけならオークの奴で十分だ。


 商業ギルドも毎日金貨500枚のローンは組まない。

 邸宅のローンひと月で金貨1000枚だ。

 金、余り過ぎ。


「お前ら首だ」


 俺はカリーナの部屋の前で近衛騎士に告げた。


「我々は国王陛下の命でここにいる」

「カリーナも俺と同意見だ。カリーナから国王に言う前に俺が宣告した」

「嘘だ」


 ウザルが激高して剣の柄に手を掛けた。


「抜くのか。抜いたら死ぬぞ」

「くっ、覚えていろよ」


 ウザルは職場放棄してどこかに行ってしまった。


「分かりました。国王様から撤収の命令が着きしだい引き上げます」


 カリーナの護衛は俺の金で雇う。

 それでも毎日金貨30枚ぐらいの出費だ。

 くそっ、散財って難しい。

 孤児院に寄付したら、勇者が近づく。

 名声は要らない。

 妙案を捻り出したい。


 そして、近衛騎士は撤収して、護衛のプロがその任に就いた。

 やっと気兼ねなくカリーナに会える。


「ようやくだね」

「はい」


 メイドと女性の護衛がいるから二人きりではないが、うるさく言われないのは良い。


「散財の方法を考えてよ。金をどぶに捨てる行為で、ひとのためになって、名声が上がらないのが良い」

「名声が上がらない事業ですか。開拓しかありませんね」


 開拓か。

 金はじゃぶじゃぶと飛んで行く。

 まあ、後世の人のためにはなるよな。

 開拓はのちにそこを自分の物にするから、名声はあまり上がらない。

 引退したあとはそこに住めたりするし、結構良いかも。


 カクルド伯爵家で開拓の指揮をする人間を出してくれた。

 給料は俺が払っているけど。


 ポーションの値段が下がった。

 エリクサーが上級ポーション並みの値段だからね。

 薬師ギルドから泣きが入った。

 ポーション職人をどうにかしてくれと。


 すまん、俺のせいだな。

 そうだ、薬草変換グリーンサムの札を格安で売ろう。

 俺が作るんではなくて工房に魔力回路を教えて作らせるのだ。


 これもカクルド伯爵家の出入りポーション工房のノムノムナオールに頼んだ。

 ポーションの質を上げられる薬草変換グリーンサムの札でポーション職人の仕事と収入は楽になった。

 それと雑草を薬草に変えられるので採取の値段も下がった。

 冒険者ギルドから、泣きは入らない。


 俺がやっている開拓事業で冒険者の仕事が増えたからだ。

 なんとなくサイクルが回るようになった。


 だが、まだ散財が足りない。

 毎日金貨500枚は流石にね。


「芸術を支援したらどうですか。名声はあまり上がらないで、お金をつかえますわ」

「カリーナ、ナイス」


 よし、ファッションデザイナーを支援しよう。

 カリーナに毎日のようにきれいな服を届けてもらうのだ。


 カリーナが選んだデザイナーに支援したら、毛皮を使った服をデザインして来た。

 服の一部が毛皮になっている。

 それがかなりいけてる。

 ドレスなんかの一部も毛皮だ。

 暑い時には流行らないだろうけどと思ったら、魔力回路を組み込んできやがった。

 カリーナから相談された俺が魔力回路を設計したんだけど。

 前世の扇風機付きの服を思い起こされる。


 毛皮なのにひんやり。

 うん、異世界ならではだ。


 冒険者は毛皮のゴールドラッシュ状態になった。

 夏冬関係なく毛皮。

 まあ一過性の物なんだろうけど。

 カリーナはファッションリーダーになって、社交界で名声を得た。


 ウルフ系のモンスターの毛皮が人気らしい。

 特に白。

 次に赤に、青。

 牛柄のウルフ系モンスターもいる。

 縞柄の奴も。


「カリーナ、今度、狩りにでも行こうか」

「血を見るのはちょっとですわ」


デス魔法があるから綺麗な物だよ」

「でも……」


「死ぬのを見るのが嫌なんだね」

「はい」


 これはチョイスを間違ったか。


「じゃあ、ピクニックにしよう。お花畑でお弁当を広げる。それなら良いだろう」

「はい」


 カリーナが嬉しそうだ。

 カリーナの前でデス魔法は禁止だな。


 ピクニックを盛り上げる品物を考えるか。

 まずは虫対策だな。


 魔道具で殺虫したい。

 今の俺には容易い。

 青色の光と電撃を組み合わせれば誘蛾灯ができる。


 これを工房に売ったらひと財産できるな。

 金はだいしゅきなので、薬草変換グリーンサムの札を作った工房のノムノムナオールに売る。


「うちはポーション工房なんですがね」

「でも作るんだろう? 買うよな?」

「はい買わせて頂きます」


 小金が入った。

 そうだ。

 バッタ屋に行こう、ピクニックグッズがあるかも。


「こんちは」

「いらっしゃい、物騒なのはないよ」

「こんかいはピクニックグッズを買いに来た」

「そういうのなら置いてある。水筒の中に水を作る奴だとか。お弁当を温めるのだとか。あと結界のシートがあるな」

「ぜんぶくれ」

「まいど」


 結界のシートはかなり良かった。

 座り心地が良いのだ。

 柔らかい結界なんてのは考えなかった。

 脱帽だな。


 野営には重宝しそうだけど。

 柔らかい結界はクッションとか作るのにいいな。

 黒虹こっこうを魔力電池に使えばかなりの時間、起動できる。


 あとで作ってカリーナへプレゼントしよう。

 前回のプレゼントのシンセサイザーも好評だった。

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