第24話 魔力結晶

 街にでたら、殺し屋らしき人達と守備兵ひとりに囲まれた。

 不味いのは守備兵の恰好をした奴がニヤニヤ笑っていることだ。

 こいつが本物だと殺し屋を殺すと俺は牢屋行きか。

 そういう手に出て来たのか。

 皆殺しにしても誰か監視してて守備兵を殺したと証言するんだろうな。

 嘘判別魔法もあるから不味い。


 殺し屋だけを殺しても、守備兵が嘘の証言をするに決まっている。

 スタンガン魔道具と身体強化だな。

 俺はスタンガン魔道具を取り出して構えた。


 そして、戦いが始まった。

 殺し屋は一流らしくスタンガン魔道具を食らわない。

 逆にこっちはかすり傷を負った。


 俺の身体強化は一流レベルだと思うが、いかんせん武術をやっているわけではないので動きが素人だ。

 デスを使うしかないのか。

 だが相手の思うつぼに嵌るのも癪だ。


 ヒーローならこういう時に新たな力に目覚めるものだ。

 もう自棄だ。


 極限までの圧縮をやろう。


 魔力ポンプをフル稼働。

 魔力を圧縮し始めた。

 デスの魔力濃度を越え、その数百倍になった時に、なんと魔力が固体になった。

 目にもちゃんと見える。


 俺は結晶を剣の形にしてみた。

 動かせられないかな。


 魔力の結晶なら魔力操作で動かせるはずだ。

 魔力なんだから。

 剣の形の結晶は、縦横無尽に動き回った。


 もう5本ぐらい増やすか。

 6本の剣が、飛び交った。

 この攻撃には、殺し屋もたじろいだ。


 逃げ腰になったので、足の腱を斬ってやった。


「ぐっ、くそっ」

「逃がさないよ」

「お前ら毒を飲め」


 守備兵がそう命令する。


「約束が違う」


 仲間割れが始まった。

 全員の足の腱を斬ってやった。

 ポーションで元通りになるのだから、遠慮は要らない。


 ファントムが呼んで来た守備兵が到着。

 全員が逮捕された。

 殺し屋はある貴族の家が雇ったらしい。

 狙いはカリーナだ。

 婚約者である俺を亡き者にしたかったようだ。


 殺し屋の腕が立つと思ったら、全員が元騎士。

 問題を起こして騎士を解雇されたやつらばかりだった。

 腕は立つが素行に問題ありの奴らを集めたらしい。

 暗殺者ギルドとは関係ないとの証言だった。


 もう殺し屋のことなんかどうでも良い。

 頭の中は魔力結晶で一杯だ。


 まず操れる。

 魔力だからね。

 俺の魔力の操作はもう達人だから、100本ぐらいは同時にいける。


 そして結晶から元に戻すと高濃度の魔力になる。

 魔力爆弾として使えるのだ。

 良いね。


 そして、一度魔力の繋がりを作ると、絶とう思わない限り繋がりが切れない。

 どんな理由なのか分からないが、都合のいい性質だ。


 こういう使い勝手の良い技はとっても良い。

 魔力結晶は、ポーション、魔道具、その他にも使えそうだ。

 たぶんぶっ飛んだ性能の物ができ上がると思うから、表には出さない。


 魔力結晶は軽い。

 そして硬い。

 フライングソードとしては十分だ。

 あとはこれにインテリジェンスの部分を加味すればいうことはない。


 そして、技として、毒を塗った剣みたいな使い方もできる。

 切り口から、濃い魔力を送りこむのだ。

 人ひとりを殺す分量だけの魔力を元に戻すこともできる。


 デスの機能付き剣だ。


 表には出さないが、カリーナへは一本作っても良いだろう。

 俺は魔力結晶の短剣を作った。


 カリーナの寮の部屋に行くと、扉には近衛騎士が3人立っていた。

 ウザルもいた。


「プレゼントを持ってきた」

「俺が渡してやる」


 ウザルがそう言って手を差し出した。


「駄目だ。貴重品なんでね。本人に手渡したい」

「ちっ、見てる前で渡せ。手短にな。ウザルだ、開けろ」


 そう言うとウザルは扉をノックした。


「了解」


 女の人の声がした。

 カリーナではない。

 扉が開き、女性の近衛騎士が現れた。


「プレゼントを手渡したいらしい」

「カリーナ様、プレゼントだそうです」

「はい」


 やっとカリーナが出て来た。


「短剣ができたので持って来た」

「嬉しい」


 嬉しいとは言ったが、カリーナは余り嬉しそうではない。

 選択を間違ったか。


「やり直しをさせてくれ。子狼の人形を持ってきた」

「まあ、嬉しいですわ。その人形をあなただと思って話し掛けます」


 俺は短剣を出すと、魔力結晶を狼の子供にする。

 ええとここからだ。

 カリーナの漏れている魔力を俺の魔力と混ぜて、魔力結晶に混ぜる。

 わずかだがこの魔力結晶はカリーナの魔力が入っている。

 カリーナの物になったと言えるだろう。


「動かしてみろよ」

「動くんですの。あっ、動きました」


 子狼がカリーナの周りをぎこちなく動く。

 魔力爆弾と毒としての使い方は、交換日記に書けば良いな。


「気にいったか」

「まあ、まあ、こんなにも愛らしくて。ええ大変気に入りました」


「ちっ、黒虹こっこうで作るとは成金趣味だな」


 魔力結晶と黒虹こっこうは見た目に違いはない。

 ウザルが嫌味を言う。


「悔しかったらこれを越える物を贈るんだな。動く人形は作れないだろうがな」


 この人形はカリーナの護衛だ。

 恐らく1000人ぐらいは皆殺しにできるだろう。

 使うのはもしもの時だ。


 これで一安心だ。

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