第112話 卵盗難事件

 分身ナンバー2の映像。

 プリンクが卵の偽物の魔道具を持って、ドラゴンの巣穴へ。


 プリンクはドラゴンが餌を取りに行くまで、遠くの横穴から見守った。

 ドラゴンが巣穴から出て来た。

 プリンク達は、卵を魔道具の偽物と取り換えた。

 温める魔道具を卵に取りつけて、大急ぎで撤退。


 馬車が山裾から出る頃にドラゴンが帰ってきた。

 ドラゴンは怒りの雄叫びを上げた。

 そして、巣穴から出て来て、飛び立った。


 あれ、どこに行ったんだ。

 プリンクを追うはずなのに。

 明後日の方向に飛んでったぞ。


 まあいいや。

 分身ナンバー2がドラゴンの巣穴に入ると偽の卵の魔道具は黒焦げになっていた。

 やはり分かってしまったか。


 王都に帰ってきたプリンクは密談部屋に卵を隠した。

 そして、ドラゴンの目撃情報を集め始めた。


 ドラゴンは王都とは別の都市に向かっている。

 報復として街を焼き払うつもりなのかな。


 街道のある地点に立ち寄ったドラゴンは徐々に王都に近づいた。

 そして、ドラゴンはある地点でまた別の街に向かう道を辿った。


 どうなっている。


 王都に接近した時はプリンクは大慌てしてたな。


「おい、誰かドラゴンの行動を説明しろ」


 プリンクがちょっとパニックだ。


「モンスターの行動なんて分かりませんよ」


「卵を追っているわけじゃないのか?」

「何かを追っているのでしょうね。色々な街に立ち寄っています。ただ街を焼いたりはしてません」


「理由が分からないのが不気味だ」

「卵は持ち帰る時に匂い消しをして、密封して持ち帰りましたから、ドラゴンも混乱しているのでは」


「じゃあ、何を追っている?」

「分かりません」


 うーん、俺も分からん。


「ここで下手に動くのは下策だ。とにかく情報だ」

「はい」


 動くと墓穴を掘るという意見は俺も同意する。

 うーん、どうなっている。

 ドラゴンは何を追っているんだ。


「カリーナはどう思う?」

「何かの匂いでしょうね」


 匂いか。

 何の匂いだろう。

 プリンクの映像。

 プリンクは部屋を行ったり来たりしている。


「卵を売れば、俺はドラゴンから逃げられる? いいや、ドラゴンは執念深いと聞く。きっと駄目だな」


 プリンクがいつになく弱気だ。

 王から俺に使いが来た。


「王様が会いたがっている。登城するように」

「伺うと伝えろ」


 俺は隠蔽ハイド魔術を使い、城に入った。

 そしてファントムの仮面を被り王の前に姿を現した。


「ウラント山のドラゴンが出没している。何か知らないか?」

「卵を盗んだ馬鹿がいる」

「誰だ?」

「プリンクだよ」


「おい」


 王様が手を叩くと騎士がぞろぞろと現れた。


「お呼びですか」

「プリンクを捕まえて来い。ドラゴンの卵を確保しろ。卵には触るなよ」

「ただちに」


 しばらくして騎士達が帰ってきた。


「申し訳ありません。逃げられました。卵もありませんでした」

「蝶々部隊? プリンクは?」


「煙幕を張って逃げました。現在不明です」


 蝶々部隊から応答があった。


「目を離した隙に逃げたらしい」

「くっ、後手に回ったようだ」


 王様が悔しそうに呟いた。


「プリンクは俺も探してみるよ」


 蝶々部隊の蝶は、霧化も出来ないし、視界が奪われれば操縦できない。

 煙幕で無力化されるとは。

 プリンクは感づいていたのか。

 いいや、念には念を入れたのだな。

 理由なんかないだろう。


 邸宅に戻り、蝶々部隊を集めた。


「街道を行く全ての馬車を見張れ」

「了解」


 プリンクの馬車は見つかるだろうか。

 時間の問題だろうな。

 蝶々部隊の蝶が飛ぶ速度は速い。

 街道にいる限りは見つけ出せるはずだ。


 どこか村とか森に入った場合はややこしくなるな。

 仕方ない。

 質問領域クエッションフィールドを国中に展開するか。

 時間が掛るが虱潰しに行くしかない。


 それにはまず、中継器リピーターを国中に飛ばさないといけない。

 これが一苦労なんだよな。

 前にやった時は3日掛かった。

 何万とある魔力結晶を操るのは無理だから、少しずつやらないと。


 それから、少しずつ質問領域クエッションフィールドを展開していく。

 とにかく1週間以上時間が掛かる。

 馬車が街道にいてくれるのを祈るだけだ。


 こんな大事になるんだったら別の手を考えておくべきだった。

 いや卵が王都に持ち込まれた時点で告発すべきだったのかも。

 クラフティ達も一網打尽にしたいなんて考えたのが不味かったか。


「お茶にしませんか」


 カリーナが気を利かせて、お茶を淹れてくれた。


「ちょっと焦ってた。裏をかかれたものだからな」

「焦っては成功はおぼつかないですわ」


「とにかく虱潰ししかない。卵が王都にないのだったら、ドラゴンは襲って来ないんだよな」

「確実ではないですが、そうですわね」

「なら、プリンク発見は時間の問題だ」


 真っ先に、王都に質問領域クエッションフィールドを展開、プリンクの所在を確かめた。

 やっぱりいなかった。

 灯台下暗しではなかったようだ。


 俺がプリンクならどうするかな。

 プリンクの気持ちになって考えよう。

 ドラゴンと騎士団が追ってきているとして、武力で撃退は無理だ。

 となると常に移動するとどこかに隠れるの二択だが。


 プリンクの性格では、常に移動だろう。

 おそらく馬車は頻繁に乗り換えているな。

 こうなると蝶々部隊が補足し損ねる場合もある。


 やっぱり、質問領域クエッションフィールドが確実か。

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