第26話 捜査
カリーナからの交換日記に、古代魔法王国の札を買いませんかと言って商人が来ているらしい。
御用商人の紹介からということもありお父様が乗り気になって心配ですと書かれていた。
資金繰りの関係で、幸いなことに大量購入までまだ日にちがある。
これは捜査するべきだな。
「ファントム、偽札事件を追うぞ」
「へい、まずはどこから手を付けましょうか?」
「札を持って来た商人は駄目だ。きっと俺も騙されたというに違いない」
「ちげぇねぇ、そういう筋書きでしょうな」
「偽札一味を一網打尽が良い。だからそいつらのアジトを見つけるんだ。となるとインクだな。インクを大量に仕入れてる奴を見つける」
「魔法陣と札に使われる魔導インクは赤だ。だから赤インクを追う」
「大量にというのなら問屋か大店ですね。ちょっと忍び込んできまさぁ」
「頼む」
ファントム待ちだ。
市場に行くと古代魔法王国の札が売ってた。
コップ1杯の魔力量でため池一つが満たせるらしい。
魔力を流して、札を確かめる。
やっぱり普通のインクだな。
魔導インクで書かれたものじゃない。
こいつを捕まえてもたぶん末端のチンピラで仕入れ先の大元は知らないだろう。
締め上げて上へと辿っていくのも良いが、尋問に適した魔法とか魔道具は持ってない。
洗脳とか魅了とか、そういうのはない。
あるかも知れないが秘匿されているに違いない。
さて、どうする。
うん、簡単だ。
米粒より小さい魔力結晶を作って、お金に貼り付ける。
発信器というわけだ。
これで金の流れが追える。
「兄さん、銅貨しかないんだ。銅貨で良いか」
「しゃあないな」
上手くいくかは分からないが種は仕込んだ。
この銅貨の1枚が辿り着けば良い。
夜になって銅貨への魔力を辿る。
大抵の銅貨は別の店にあった。
支払いに充てられたらしい。
消去方で辿っていく。
半数近くの発信器付き銅貨がスラムに集まっていた。
俺は潜入スキルはないから、ここもファントム待ちだ。
ファントムが帰ってきた。
「どうだった」
「当たりですぜ。生産拠点が判明しやした」
「俺の方は密売の拠点だな。それと金庫。疲れているところ申し訳ないが、俺が見つけた拠点に潜入してくれ」
「へい」
そして朝方、扉に何か重いものが当たった音がしたので起きる。
扉を開けるとファントムが血だらけで倒れていた。
急いでポーションを飲ませる。
「ドジを踏みました。トラップに引っ掛かってこのありさまでさぁ」
「だよな。姿を消せても霧になるわけじゃない。俺に見つかった時も足を引っ掛けられたっけ」
「面目ねぇ」
「でどうだった?」
「密売人の会話は聞けたんですが、金庫の部屋のトラップに引っ掛かって。あそこがアジトのひとつだとは判明しやしたが、あっしがドジを踏んだんでヤサを変えられるかも知れません」
「まあ金庫の位置は分かる。発信器を付けたんでな」
今日は授業はさぼりだ。
金庫の位置を確かめに行く。
相変わらず、あの場所にあった。
トラップに自信があるらしい。
ええと、二人でこの一味を全員逮捕は無理だ。
仕方ない一人か二人残して殺そう。
「あいつら敵国の息が掛った工作員らしいですぜ」
「そういう話をしてた奴がいたのか?」
「へい」
売人のアジトの前で、特徴のある匂いを嗅いだ。
えっと何の匂いだったかな。
「ファントム、なんか微かに嗅いだことのある匂いがしたんだが」
「くんくん、これはモンスター寄せの香ですぜ」
「あれか」
「これは物騒な予感がしますぜ」
工作員は儲けた金で、モンスター寄せの香を買ったらしい。
微かな匂いだが、きっとどこかでは盛大にばら撒いたに違いない。
「手紙を書くからカリーナに持って行ってくれ」
「へい」
モンスターが王都に押し寄せてくると手紙に書いた。
カリーナは近衛騎士に報せているだろう。
王都の外で匂いを嗅げば真偽は分かると書いたから、きっと大丈夫に違いない。
しばらくして、敵襲を報せる半鐘がけたたましく鳴らされた。
何のモンスターが来るんだ。
それによっても対応が違う。
何だ。
何が来る。
カリーナは近衛騎士に守られているから心配は要らないだろう。
魔力結晶の子狼も付いている。
ファントムと待ち合わせるために寮に帰ると、ゲイリック王子が騎士を従えていた。
スェインは生徒を引き連れている。
両者出陣か。
良く見るとプリンクが取り巻きを引き連れて武装している。
プリンクよ、お前が行っても死ぬだけだろう。
「ライドよ。俺の陣営に入らないか」
ゲイリック王子が勧誘してきた。
「遠慮しておきます。騎士様と歩調を合わせることなど出来そうにないので」
「王子の誘いを断るのか?!」
「よい。だが、スェインとではあるまいな」
「いいえ、ひとりが性に合っているもので」
「ならばよい。皆の者行くぞ」
3グループが出陣して行った。
「親分、カリーナ様に届けてきましたぜ」
ファントムが帰ってきた。
「だいぶ時間が掛かったな」
「へい、馴染みの店に警告に回ったので」
「潰れて困る店もたしかにあるよな」
寮から出て空を見上げるとモンスターが何か分かった。
ワイバーンだ。
ワイバーンは群れで生きるモンスターだ。
孤高のドラゴンとはそこが違う
だが、群れで来るがゆえに脅威度は上がる。
群れで来たらSランクだ。
まあ、俺の敵じゃないけどな。
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