魔力操作無双~魔法が使えないで虐げられていた俺は、魔力を体内でひたすらグルグルしてたら、ざまぁしてました~

喰寝丸太

第1章 転生

第1話 転生して虐げられる

 ばぶぅ、俺は転生しました。

 父はロンタイド・モナーク伯爵。

 母はラナシェリー。

 俺はライド。


 ありふれた貴族一家だ。


 周りを良く観察するとみんな魔法を使っているのが分かった。

 異世界なんだなここは。

 俺はワクワクしながら魔法を使える日を待った。


 そして、6歳になった。


「今日から魔法を教える」


 父さんが真剣な顔でそう言ってきた。


「早く教えて」

「慌てるな。まずは体内の魔力を感じるんだ」


 腹の中を注意深く探ると暖かい物があるのが分かった。


「できた。お腹の中にポカポカしている物がある」

「それだ。今度はそれを指先まで持ってこい」


 体内の魔力を指先に移動する。

 のろのろと魔力が腕を伝わって指先に来る。

 簡単に出来たな。


「出来た」

「次は光を思い浮かべて。ライト


 父さんが魔法の見本を見せてくれた。

 光が生まれる。


ライト


 俺も真似してやってみたが、出来ない。


「おかしいな」

「もう一度。ライト


「ふむ、魔力感知マナセンサー。これは、なんて事だ」

「どうしたの」

「いいか良く聞け。魔力は指先まで通っている。魔法語の発音も完璧だ。原因は魔力の現象変換だ。こういう人は稀にいる。くそっ、モナークから魔欠者がでるとはな。今日限り、後継はお前の腹違いの弟プリンクだ」


 俺は魔法が使えないのか。

 これは俺が転生者だからなのかな。

 原因はまあ良い。

 原因を今更知った所でなんとかなるような気はしない。

 俺は俺に出来る事をするんだ。


 出来る事を精一杯やる。

 それが仕事する上で大事だ。

 サラリーマン時代にそう教わった。

 出来ない事は教わるか、出来る人にやってもらえ。

 その言葉に従ってやって来た。


 俺に出来る事ってなんだ。

 指先まで魔力を運ぶ事だ。


 俺にも魔力は動かせる。

 俺は魔力操作キングになる。

 そう心に誓った。

 本によれば魔力を的確に早く動かせば、魔法を使う時に効率が良くなる。

 体内をグルグル魔力を回す訓練は、魔法を使う奴なら誰でもやることだ。


 俺は魔欠者でいくら魔力を早く動かせても魔法は使えない。

 分かってるがそれが何だ。


 母は出来損ないを産んだとされて実家に戻された。

 俺にはボロボロの服が与えられ、食事も満足に出なくなった。

 ボロボロの服はきっと弟のおさがりだな。

 弟は太っているから、服はだぶだぶだ。


 俺は体内で魔力を回し始めた。

 のろのろと魔力が動き体内で循環する。

 意外に早く動かすのは難しいな。

 俺は魔法を使えないのを忘れて魔力操作に夢中になった。

 きっと逃避してたのだと思う。


 それから1年。

 のろのろだった魔力の循環もかなり早くなった。


「おい、クズ兄。お前、魔法の的になれ」


 ひとつ下の腹違いの弟のプリンクからそう言われた。


「嫌だよ」


 拒否するに決まっているだろう。

 防御魔法が使えれば問題ないが、鎧も着けないで生身で魔法を受けたら下手したら死ぬ。


「俺は後継者だぞ。嗣子なんだぞ。偉いんだぞ」


 連呼しなくても分かっているよ。

 俺はメイドより下ってことは。

 だがな、平民より劣るとしても虐げて良い理由にはならない。


「何だその目は歯向かうのか。火球ファイヤーボール


 覚えたての魔法は遅かった。

 余裕でかわす。


「逃げるな」


 無茶を言うなよ。

 当たったら火傷する。


 俺は逃げまくった。

 プリンクはかんかんになった。


「捕まえろ」


 俺は使用人に捕まって、杭に縛り付けられた。


「くくくっ、火球ファイヤーボール


 火球の魔法は俺に当たって俺を焦がした。


「熱っ!」

「ひゃはは、あの顔見ろよ。俺より顔が良いっていい気になるからだ」


 そんなことを気にしてたのか。

 痩せれば良いのに。

 くそっ、火傷は1週間で治るかな。

 ズギズギヒリヒリジクジクと魔法が当たった箇所が痛む。


 そして、俺はそのまま放置された。

 せめて縄を解いてから去ってくれ。


 誰か来た。


「ああ、ライド様。どなたがこんなことを?」


 来たのは俺の婚約者のカリーナだった。

 髪をツインテールにして、7歳にしては物凄く可愛い。

 俺には勿体ない婚約者だ。


「弟にやられたんだよ」

「そうですか」


 カリーナの悲しそうな目。

 俺の家族構成も、俺が魔欠者だということも知っている。

 カリーナはポーチからポーションを取り出すと、火傷にそれを掛けた。

 痛みが消えた。


「ありがとう」

「これからは毎日参ります」

「俺は実験台だ。俺なんかに構うとろくなことがない」

「では私もあなたを実験台に致しますわ。治癒魔法を覚えたいので付き合って下さいませ」

「ああ、俺は実験台だから文句は言わないさ」


 カリーナは俺の縄を解いてくれた。

 くそっ、カリーナのためにも生き残る。

 プリンクになど殺されるものか。

 どうやったら防御できる?

 鎧を買う金はない。

 手札は魔力操作だけ。


 これで何とかしないと。

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