第110話 ゲーム

 コンピュータ開発が止まらない。

 クレイメモリーとパウダーメモリーは20メガバイトに。

 CPUは8ビットになった。

 クロックは遅い。

 1メガヘルツぐらいかな。


 だが、初期のコンピュータとしてはかなりいい出来だ。

 C言語の開発も進んでる。

 だいぶ標準関数も揃ってきた。


 ここまでくるとゲームが作りたいな。

 エイリアンが横に動いて、端までくると1段下がるあのゲームを作らせた。


 それを設置したバッタ屋には長蛇の列が。

 あのBGMが鳴り止まない。


 俺も試しにということで、名古屋撃ちを披露した。


「おおっ、あんた凄いな。こんな戦法があるとは」

「簡単そうだが難しいかもな」

「こんど真似しよう。そのにしても1時間に1回ぐらいしか番が回ってこない」


 ゲームの代金は1回、銅貨1枚だ。

 列になっているから大儲けだが、コンピュータの価格を考えると大赤字だ。


「なぁ、コンピュータを増やそうぜ」


 バッタ屋がそんなことを言い始めた。


「コンピュータ一式で金貨200枚はするんだぞ」

「そんなにか。ええと一回の遊びで銀貨1枚取れば、2万回で元が取れるな」

「馬鹿だな。銅貨1枚だから列になっているんだよ。銀貨1枚も取ったら閑古鳥だ」

「やってみようぜ」

「まあ実験か」


 銀貨1枚に値上げされたゲームは、前より少し人は減ったが、途切れなく遊んでいる。

 回転率はかなり良い。

 でも、2台になったら列が半分になる。

 客が少ない時は途切れるかもな。


「どうだ。銀貨1枚でもやってくれるだろう」

「まあな」

「それに待ち時間に売る酒と食い物が爆売れだ」


 商魂たくましいな。


「ちなみに、トイレとか行きたくなったらどうするんだ。列を並び直すのか?」

「アルバイトがいて、代わりに並ぶようになっている。サービスが行き届いているだろう」

「商売が上手いな」


 2台にしてみるか。

 耐久実験にもなるしな。

 今の所コンピュータは上手く動いている。


 バッタ屋のゲームが2台になった。

 みんなゲームに夢中だ。

 賭けをする奴まで現れた。

 何点行くかで賭けをするのだ。


 かなりイカサマ臭いが、払い戻しの倍率も工夫しているので、普通にやったら勝ったり負けたりだ。

 だが手数料が取られるので胴元は儲かっている。


「俺の所にも賭博の利益が入るんだぜ。金貨200枚なんか軽いぜ」

「そのうちゲームは飽きられるな」


 まあ、別のアーケードゲームの初期作品を知っているけどな。

 そういうのを作ったらまた流行るんだろうな。


 コンピュータは日ごと進化している。

 ここで使っているコンピュータも何回かバージョンアップした。


 ハエみたいなエイリアンをロケットで撃つゲームを開発した。

 またまた、大盛況。


 風船を撃つゲームも開発。

 潜水艦に地雷を落とすゲームは魚に重りを落とすゲームにした。

 魚からの船への攻撃は泡だ。


 そんな感じに色々と作った。

 バッタ屋は今ではゲームセンターだ。

 いつの間にか増築もされている。


 そして、恐れていたことが起こった。

 別の奴がゲームセンターを開設したのだ。

 1回を大銅貨5枚にして。

 値下げ合戦が始まった。

 結局大銅貨1枚に落ち着いた。


「とほほだぜ。ライバルが現れるなんてな。今じゃこの王都に10店舗はある」

「俺はコンピュータが売れてウハウハだけどな」

「新しいゲームを俺の所だけに卸してくれないか。頼むぜ」

「却下だ。そういう商売はしない。やりたければプログラムを勉強して自分でゲームを作るんだな」


 そう言って俺はC言語の教本を出した。

 バッタ屋は教本をパラパラめくり。


「こんなの分るか」

「まあ頑張れ。ひとつ良いネタを教えてやろう。名前を打ち込んで、適当な計算式で運勢を占う。これなら簡単に作れるはずだ。占いっていうのはコアな客がいるぞ」


「えっと、文字列の入力と、計算と、分岐と。分かるかこんなの」

「じゃあ金を払って、魔法学園の生徒にでも作らせるんだな」

「それしかないか」


 ふふっ、頼まれた生徒はきっと他所にも売り込むだろう。

 売り込まなくても簡単だからすぐに真似される。

 結局、競合する未来が目に浮かぶな。


 今まで作ったゲームの亜種もたくさん出ている。

 ボーナスキャラが出て来たり、お助けキャラが出て来たり、強大な魔法が撃てたりだ。


 まあ日本でもそんな感じだったよな。

 占いは結局、真似されてという結果に終わった。

 バッタ屋は諦めきれず、占いゲームのバージョンアップを続けている。

 カップルには恋占いとか。

 運勢があるスコアを超えたら景品を出すとか色々と工夫している。

 計算式には日付が含まれているので、毎日違う結果が出る。


「景品はぬいぐるみが良いぞ。女の子は喜ぶ」

「おう、良い事を聞いた」


 まあ、これも結局真似されるんだけどね。

 ゲーム業界の開発競争はしれつだ。


 前世でもそうだった。

 今はアーケードだけだが、家庭用ゲーム機が出るとまた違うのだろうな。

 それにはコンピュータの値段がもっと安くならないといけない。


 この開発スピードなら1年経たずに実現するかもな。

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