第20話 争奪戦始まる
雑草を薬草に変える技の名前を付けた。
詠唱する機会はあまりないだろう。
だが技としてはある。
秘伝書を書く事になったらその名前で書こう。
俺が推測する薬草のでき方はこうだ。
薬草になる雑草は魔力を持たない。
それで魔力の濃い流れとかが偶然流れて来て、それを浴びると雑草が薬草に変化する。
たぶんこんなことだろう。
「カリーナ、お招きありがとう」
「いいえ、私達は婚約した同士です。気兼ねなく我が家を訪れて下さい」
「この間の交換日記は良かったよ。あれで俺は最強になれた。魔道具使いから脱却したんだ」
「役に立ててなりよりでございます」
「今日はカリーナの役に立ちにきた。薬草の研究をしているんだって」
「はい、回復魔法が得意なので、同じく回復の効果があるポーションの研究をしております」
カリーナの家の薬草園に入る。
「
「
「
「しっかりと見ましたわ。雑草に魔力が宿って薬草になりました。ですが、どうやったら?」
「魔力放出はできるよね。その時に魔力が薬草に宿るようにとイメージして呪文を唱える」
「
「うーん、簡単には出来ないか。そうだ。手を出して」
「はい」
俺はカリーナの片手を握った。
カリーナの顔が赤くなる。
「雑草に手をかざして」
「ええ」
カリーナが握られてない方の手を雑草にかざす。
「
「私の魔力が勝手に出て行って、そして雑草が薬草に」
「感覚がつかめた?」
「はい、なんとなく。あの魔力の流れをイメージして。
カリーナが聖女扱いされたら嫌だから、
「まあ、お嬢様とライド様が手を繋いで、あんなにお顔を赤くされて」
「ジェシー、からかわないで。秘匿魔法を教わったのです」
「そういうことにしておきましょう」
「もうもう」
「お茶がはいりましたよ」
お茶を飲みながら、平和な時を過ごして、これでやっと元通りだと思った。
俺はカリーナをこの手に取り戻したんだという実感が湧いてきた。
「わたくし、ポーションを作ってみましたの。ですが、上手く行かなくて。お守りだと思って一本お持ち下さいませ」
「もらうよ」
ポーションをカリーナから貰った。
ピンク色のポーション瓶だ。
流行っているのか。
「どうですか」
そう言われても分からん。
ぐぬぬ。
何かしないといけないという念に駆られた。
「
「
「あれっ、そうか。魔力が増えれば効果も上がるのか」
「Cランクのポーションを買い漁ってAランクに底上げしたら、お小遣いには困りませんわ」
「市場を混乱させない程度にやったら良いと思うよ」
そうだ。
今日、カリーナと会うのに贈り物を用意してなかった。
ポーションのお礼に何かないかな。
手持ちは魔石だけだな。
でもこんなの貰っても嬉しがらない。
手の平で魔石を転がした。
魔石って魔力を溜めるよな。
限界まで込めるとどうなるのか。
「
結界の中に魔石を置く。
こんにゃろ、ズンドコ魔力よ入れ。
一定量が入ったら、入らなくなった。
高濃度の魔力を叩き込むように無理やり入れる。
「眩しいばかりの魔力ですわ」
カリーナが少し怯えて言った。
「ごめん、驚かすつもりはなかった」
魔力を送るのをやめて結界を解除する。
虹色の光を放つ黒色の魔石が残された。
おっ、何やらできたぞ。
「それはっ?」
「怯えさせたお詫びと、ポーションのお礼にこれを上げるよ。なにに使えるか分からないけど」
「光を放つなら、宝石としてアクセサリーに加工しましょう」
「どう使おうが好きにしてくれ。もし、もっと欲しいなら作るから」
「ではあとひとつ同じ物を」
カリーナにもうひとつ不思議な魔石を渡して、帰った。
寮でくつろいでいると、扉が激しくノックされた。
なんだよ?
まったりしていたのに。
扉を開けると、カリーナの所のメイドがいた。
息を切らしているところからするに走ってきたのだろう。
あの魔石が爆発でもしたか。
「カリーナは無事か?!」
「はぁはぁ、お嬢様は無事というか、無事でないというか、大変なことになりました。怪我とかではないです」
「じゃあ何だ」
「あの魔石でポーションを作ったらエリクサーができてしまいました」
何だって?!
おいおい。
そうだよな。
あの魔石に込めた魔力は尋常じゃない。
となると材料に使えば、ポーションの効果は上がりまくるよな。
エリクサーができても不思議はない。
「でどうした?」
「できたエリクサーは王へと献上致しました。そして庇護を願い出ました。貴族の他の家からの干渉を避けるためです。カリーナお嬢様の争奪戦が水面下で始まってます」
やっとカリーナが俺の元に戻ってきたと思ったのに、自分からぶち壊してしまった。
あの魔石なら、簡単に作れる。
あれを作ったのが俺だと公表すると今度は俺の争奪戦が始まる。
きっとカリーナの所に殺し屋が来るだろうな。
それは不味い。
あの魔石作成はほどほどにするのが良いだろうな。
こうなってしまっては切り札のひとつだ。
カリーナは俺と別れるとは言わないはずだ。
それは信じている。
いいさ、争奪戦に身を投じてやろう。
最強になれたのだから、それぐらいできるはずだ。
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