第104話 抗争準備

 分身ナンバー1の映像。

 ワイズベルが側近と悪だくみ。


「山芋トカゲを大量に仕入れろ」

「あれは禁制品になって飼育には許可が要ります。マイム男爵でも恐らく手に入らないでしょう」


「駄目元だ。本命の罠は落とし穴だ。古典的な罠だが、シンプルなのが一番効果的だ」

「ですが、相手も馬鹿ではないので罠を見破ると思いますが」

「罠を張るのは激突3分前だ」

「なるほど」


 ワイズベル達が魔法学園の空き地に場を移した。


「モグラ部隊、用意は良いか」

「はい。土魔法なら得意中の得意です」


 土魔法の得意な奴を集めたらしい。


「よし、開始」

土制御アースコントロール


 地面に穴が開いて、そこにモグラ部隊が飛び込む。

 穴はすぐに塞がった。


「念のためモグラ部隊が地面に潜るのは、奴らから見えない場所だ。これなら悟られないだろう」

「で、落とし穴ですよね」


「ああ、落とし穴は既に出来上がっている」

「落ちませんが」


「突撃部隊」

「はい、風魔法なら得意です」


「よし、集合」


 ワイズベルと側近は空き地から出た。

 入れ替わりに突撃部隊が空き地に集まる。

 そして地面は崩れた。


空気緩衝材エアクッション


 突撃部隊は高所からの落下を魔法を使って和らげた。


「どうだ。味方もろとも落とし穴に落とす。マフィアもこれは見抜けまい」

「なるほど、これなら勝てますね」


 ふん、考えてるな。

 だが落とし穴で死ぬ奴は小物だろう。

 そこで山芋トカゲの出番なのかな。


 分身ナンバー2の映像。


 プリンクの所。

 マイム男爵が来たようだ。


「山芋トカゲをありったけ」

「ほう、禁制品だから高いぞ」

「構わない」

「分かった用意する」


「それとファントムに仕事を頼みたい。浮浪者がマフィアに手紙を持っていくのを見届けてくれ」

「こっちも高いぞ」

「構わない」

「繋ぎを取ってみるさ。仕事を受けなくても半金は返さないが良いか」

「裏の者の慣例だからそれは分かっている」


 マイム男爵が帰って行った。


「くくっ、山芋トカゲならこんなことだろうと思って繁殖させている。変態に売れれば良いと思ってたが一挙に在庫がはけるとはな。バイパンヌを呼べ。それとファントムに繋ぎを取れ」


 従者のファントムが現れた。


「これっきりって話だったですぜ。旦那」

「固い事を言うなよ、同じ裏の住人だろう」


 ファントムには仕事を受けろと言ってある。


「今回限りですぜ」

「そうこないとな」


 この後、プリンクはお楽しみか。

 蛇女が来た。


「幹部の何人かは私にメロメロになりましたけど、どうするの?」

「ワイズベルに売ってやれ。あれの後なら深く寝入るから拉致も簡単だろう」

「荒事はしないんですけど」

「拉致はこっちでやる」

「それなら事後に部屋の鍵を開けておきます」


 プリンクはマフィアの幹部を拉致してワイズベルに売るようだ。

 手紙を書いてから、お楽しみタイムらしい。


 手紙を分身ナンバー2が追跡する。

 手紙はワイズベルに渡った。


「プリンクめ、こっちの足元を見て吹っ掛けやがって」

「どうします」

「幹部の何人かが殺せるのなら乗らない手はないな」


 プリンクは商売が上手いな。

 赤字は出してない。

 勇者選定で虫を売っていたが、ああいう所に目を付けるのは流石だな。

 普通の商人をやってたら大成したんじゃないだろうか。


 分身ナンバー3の映像。


「マフィアとワイズベルが決戦する場所の日時と場所が分かったぜ」

「隊長さんに任せるんでしょう」

「それが良いわね」


 クラフティは隊長らしき人を連れて来た。


「よし、隊長。どういう作戦で行く?」

「兵士を騎兵として、森に伏せます。戦闘が始まったら、マフィアの背後を取って突撃ですな」

「ワイズベルと挟み撃ちか。良いだろうそれでやってみろ」


 マフィア劣勢だな。

 まあ、良いか。

 どっちが勝っても問題ない。


 蝶々部隊の映像。


 10人もの浮浪者を監視している。

 ワイズベルからのマフィアへの手紙を持った人達だ。

 ほとんどの浮浪者が金だけもらって飲んだくれた。

 使ってしまえばもう取り返せないと思っているのだろう。

 後で懲らしめの暴力を受けることより目先の酒に天秤が傾いたらしい。

 だが、ふたり、マフィアに手紙を届けた。


「これ見ろよ。ふざけやがって。街の外で決戦しようだと。舐められているな」

「きっと、何度が勝ったので気が大きくなったんだぜ」

「罠の匂いがプンプンしやがる」

「今から決戦の日まで調べ続けりゃ問題ないだろう」


 マフィアも罠を疑っているらしい。

 クラフティ達の軍勢はきっと見つかるな。

 それぐらいはマフィアもするだろう。

 落とし穴も古典だが、伏兵も古典だ。

 用心しないわけがない。


「おい、今日は顔を見せない奴が4人いるな。裏切ったんじゃないだろうな」

「まさかな。この期に及んでそれはないだろう」


 ああ、拉致られたのね。

 蛇女なんかと付き合うからだ。


 マフィアはいない幹部を探し回って、蛇女が敵の回し者だと突きとめた。

 だが、蛇女も裏の者。

 居所を掴まれるへまはしない。

 結局、マフィアの敵のリストに蛇女が加わってそして終わっただけだ。


 蝶々部隊のひとりが蛇女を追っている。

 だが、蛇女の顔が違う。


「尾行に失敗したんじゃないだろうな」

「魔法で顔を変えた瞬間を見てます」


 誰にも素顔は明かさないか。

 今見てる顔も偽りのものなんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る