第103話 抗争の兆し

 分身ナンバー1の映像。


「もはやマフィアとの抗争は避けられませんね」

「元からそのつもりだった」


 側近とワイズベルの会話。


「どこを戦場に選びますか?」

「地の利があるのは魔法学園だ。だが、マフィアは襲撃してこないだろう。街に魔法学園の生徒が数人でいれば襲うだろうな。各個撃破は基本だから」


「街に出ないように通達するべきですね」

「だが、長期戦になると不満が溜まる。なので今回は街の外で一戦交えないかと、マフィアに通達するつもりだ。日時も指定してな」


「それなら決戦になるでしょうね。ですが、街の外になると地の利がありません」

「罠が仕掛けられるのを黙って見ている奴はいないよな。だから直前まで罠は仕掛けない」


 街の外で決戦か。

 ワイズベルには勝算があるのだろうな。

 直前になったら罠を仕掛けるみたいだし。


「マフィアに決闘の場所と日時は誰が伝えます?」

「心配するな。殺されるかも知れないのに生徒を行かせたりしない。こんなのは浮浪者にでも持っていかせるさ。たまり場の場所は情報屋から買えば良い」


「浮浪者が嘘を言って行かない場合どうします?」

「ファントムに探らせるさ。奴ならどこへでも潜り込める」


「これっきりと言ってたと聞いてますが」

「裏世界の者なら、金次第で受けるさ」


 ファントムに仕事が来そうだ。

 決闘を街の外でやってくれるのは嬉しいから受けるけどもね。

 ファントムに手紙を持って行かせると考えないのかな。

 ああ、ファントムを切り札のひとつとでも思っているのかもな。

 そうなると安易には存在を報せたりできないよな。

 きっとワイズベルはファントムが裏切ったりしないと思っているのだろう。

 金を払っているうちはな。

 甘いな。

 そんなだから俺には勝てない。


 分身ナンバー2の映像。


「マフィアはプリンク商店を裏切り者として処罰するつもりです。噂ではワイズベルの次だそうです」

「ふん、チンピラが怖くて闇商人なんかできない」


 店員とプリンクの会話が流れた。


「チンピラではないんですが」

「いやチンピラに毛が生えたみたいなものだ」


「勝算があるんですか?」

「ワイズベルが死んだら、逃げる。向こうは何千人といるんだぞやってられるか。闇商人が良いのは逃げても問題ないことだ。この瞬間いなくなってもなんの支障もない」


 プリンクは卑怯なことを何とも思わない奴だ。

 逃げるのも恥だと思ってないらしい。

 貴族籍をはく奪されてプライドもなくなったか。

 奴らしいけどな。


「その時は退職金を頼みますよ」

「おう、任せとけ。逃げると言っても別の場所で闇商人をするだけだ。店員は首にしない」


「それにしても手打ち式の騒動は怖かったですね」

「あんなのモンスターに比べれば屁みたいなものだ。バイパンヌを呼べ」


「はい」


 バイパンヌが来て、密談部屋に入るかと思いきや。


「金なら払うから、仕事を受けないか」

「受けるのは仕事と額によりますね」


「仕事はマフィアの幹部を篭絡しろ。できるだろ。その性技があれば」

「ええ」


 プリンクは知ってか知らずか蛇女を武器として使うみたいだ。

 これは淫魔法がばれなきゃマフィアの幹部は全員死ぬな。

 恐ろしいことだ。


 分身ナンバー3の映像。


「くそっ、名声が高まるどころか犯罪者扱いされた」

「ええ、これもファントムが裏で糸を引いているに違いないわ」

「近衛騎士の教官はファントムだからそうかもね」


 そうクラフティ、スロベニー、カルエルが話している。


「マフィアは潰さないと不味いな。やつら執念深い。幸い父に兵士を貸して貰えた。マフィアが一堂に集まったりしないかな」

「そこは情報屋次第ね」

「今まで聞いて答えられなかった情報はないから、今回も何とかなるでしょう」


 うん、面白いから、日時と場所が決まったら、俺が情報を流す。


「作戦を練らないとな。包囲戦でいくか。突撃隊形で腹を食い破るか」

「クラフティは指揮ができるの?」


 カルエルの疑問は当然だ。


「やったことなんかない」

「じゃあ、兵士の隊長さんに任せましょうよ」

「俺達はお飾りか? そのんなの許さない。俺は先陣を切るぞ」

「じゃ私は後方支援に加わるわ」

「私は衛生兵の一団ね」


 クラフティは先陣を切るのか。

 こいつ実力はないけど度胸は凄いな。


「勝たないとね」


 カスロベニーは不安そうだ。


「負けないさ。正規の兵士だぜ」


 クラフティは自身満々だ。


「さあ、難しい話は終りにして楽しみましょう」


 クラフティ達は女と役者と子供を呼んだ。

 こいつら変わってないな。

 たぶん最後の瞬間まで変わらないんだろうな。


 蝶からのマフィアの映像。


「くそっ、だから手打ち式には反対だったんだ」

「そんなことを言っても仕方ないぜ」

「とにかくやるかやられるかだ」

「まだ増援は増えているから、負けないぜ」


 マフィア側の士気は落ちてないな。

 講和派の幹部が捕まったり死んで、残った幹部はホクホクかもな。

 ライバルが減ったからな。


 武闘派の意見が通るようになったしな。

 ただこいつらおつむの出来はどうなんだ。

 ワイズベルの罠が見抜けないと終わるぞ。


 蛇女がそこに現れた。


「お前はなんだ?」

「嫌ですわ、恐い顔をなさっては。ただの娼婦ですよ」

「娼婦ならあとで可愛がってやる。外で待て」


 あー、蛇女に一人食われたな。

 淫魔法に気がつかなければ犠牲者は増えるだろう。


 マフィアを生かしておいても仕方ないから、警告はしないけど。

 蛇女は最後まで生き残るような気がする。

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