第12話 暇つぶし
順位戦は退屈だ。
俺に敵う奴は一人もいない。
俺に対する目新しい攻略法はない。
もっとも結界魔法を使っても俺は遠距離からそれを壊せる。
魔法を散らすのも、妨害するのも自由自在だ。
いまやっているのは身体強化の魔道具で電光石火の如く動く戦闘方法だ。
誘導する魔法すら俺に追いつけない。
俺を近寄らせないために
あの魔法を消す魔道具はどこの工房の品だと噂になっている。
スタンガンはバッタ屋の欠陥商品だが、それを言うと種をばらしているようなものだから言わない。
自分で探して注文しろよと冷たく突き放した。
俺が使っているスタンガン魔道具を手に入れた奴もいるが、順位戦で使って、ダブルノックアウトしてた。
使った方は魔力切れで、使われた方は電撃でダウンだ。
俺の使っている魔道具が本物で、手に入れた奴のは劣化コピーということに落ち着いた。
作った工房に押し掛けて複製したんだろオリジナルの工房を教えろと迫った奴が何人も出たが、教えてもらえなかったらしい。
そんな工房はないからな。
単純作業の如き順位戦を終えて、暇なので行った冒険者ギルドはめぼしい依頼がなくなってた。
塩漬け依頼ね。
オーガか。
刺激しなければ人間は襲ってこないが、餌がなくなると家畜が襲われるとある。
緊急性はないな。
でも面白そうだ。
「ファントム、受けられるか」
「へい、オークの納入でランクが上がりました。受けられますぜ」
「受けて来い。先に行っている。後から追いかけてこい」
「へい」
走るのはもう嫌だと言わんばかりのファントム。
魔力操作で飛べれば、ファントムを飛ばしてやるのにな。
今後の課題だ。
現場にはすぐについた。
身体強化の魔道具に慣れたというのもあるが、ジョギングの効果が上がっているらしい。
引き寄せの香を使う。
オーガはすぐに現れた。
「グガァ!!!」
「うるさい。
オーガはあっけなく死んだ。
ファントムは遅いな。
なにちんたら走っているんだ。
くそっ、暇つぶしにきて、暇だとはな。
本末転倒だな。
ふと目をやると薬草があった。
雑草の中に生えている。
雑草と薬草の見分けは付かない。
おれがなんで分かったかというと、
薬草の中には魔力の流れがある。
魔力が流れている草なんて薬草ぐらいしかないだろう。
薬草を摘んでみた。
魔力の流れは止まったが、薬草の中に魔力は残り続けた。
これが薬効の素になるんだな。
ふーん。
疑似的に薬草を作れないかな。
薬草と似た雑草に魔力の流れを作ってみた。
流れが固定される。
やった、薬草を作れたぞ。
大金持ちだが、いまさらだな。
オークの素材で毎日金貨1枚が入ってくる。
でも暇だから。
雑草を全部薬草に変えた。
「はぁはぁ」
「ファントム、遅いぞ。罰として薬草を摘め。ここら一帯のこの草が薬草だ」
「ほんとですかい。薬草が群生しているなんて聞いたことがありませんぜ」
「ファントムは鑑定魔法は使えないのか」
「あれは学者じゃないとですぜ」
「口を動かしている暇があったら摘め」
「へいへい」
魔力操作で鑑定か。
魔力の流れなら分かる。
そういう鑑定なら一発なんだけどな。
金属の組成とかそういうのは分からない。
魔導金属なら魔力の流れで一発だが。
なんとなく悔しいな。
ええと、鑑定魔法って魔力をどういう力に変えているんだ。
脳内の記憶を参照しているのかな。
うーん、分からん。
あーだこーだと考えていたら薬草摘みは終わってた。
「帰りも走ってですかい。あっしは馬車を拾って帰りますぜ」
「好きにしろ」
俺は走って王都に戻ってきた。
ああ、そうだ。
閃いた。
鑑定魔法は全てを記録しているというアカシックレコードと接続している。
そう仮定しよう。
アカシックレコードはどこにある。
異次元だと座標が分からないから接続しようがない。
学園の図書館で、魔法大全の鑑定魔法の項を読んだ。
ええと、知識は頭の中にあるもの。
魔法でそれに接続するイメージでやりなさいとある。
となると、自分の脳内の知識を参照するのか。
夢がない。
とりあえず、魔力を脳で循環させた。
あれっ、魔力的な異物があるぞ。
そこに強引に魔力を送り込むと、魔法大全の鑑定結果が表示された。
うひょ、やったな。
魔法に頼らず、魔法が使えた。
人間全員の頭の中にアカシックレコードの端末があるんだな。
いろいろと実験してみて、読んだことのない本の情報は出て来ない。
ええと知らない情報は制限が掛かっているらしい。
ありがちだ。
全知全能になったら神だからな。
とりあえず、
知識を蓄えないと使えない技だが、とりあえずあって困る物でもない。
しかし、脳内にアカシックレコードの端末がね。
監視されているみたいで嫌だ。
魔力の流れでシールドを作ったら、神様とかが出てこないよね。
出て来てイレギュラーは抹消するとか言われたら嫌だからやらない。
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