第124話 温度上昇物質
「ライド君、この魔道具の仕組みが分かりますか?」
サマンサ先生に出されたのは、魔力放射式温熱グッズの小春日和。
「分かるけど」
「あれってライド様の」
俺が作ったから分かる。
「赤い光でなぜ温かくなるんですか? こんな弱い光では絶対に温かくならないはずです」
「ノムノムナオール工房製だよね?」
ノムノムナオールはポーション工房なんだが、カリーナの実家の取引先で、俺はちょくちょく新製品を持って行っている。
ポーションに限らず魔道具とかもだ。
「ええ、ノムノムナオール工房製です」
「サマンサ先生ともあろう人がトラップに引っ掛かるの」
「トラップ?」
「赤い光、それ実はダミーなんだよ」
「わたくしも引っ掛かりましたわ」
「ええ、じゃあ。何が温めているんですか?」
「
「ええ、何らかの魔法が放射されてます」
「あれ、魔法じゃないんだよ。魔力そのもの。体の中の魔力って温かいでしょ」
「そんな簡単な!」
「簡単過ぎて分からなかったようだね」
「くっ、屈辱。凌辱された気分。もうお嫁に行けない。ライド君、責任を取って研究の題材を出しなさい」
「魔力がなぜ温かく感じるかじゃ駄目?」
「わたくしも知りたいですわ」
「考えたことがない研究ですね」
「やろうよ」
サーモグラフィ魔術で温度を確かめながら、実験する。
常温の物体に魔力を放射しても温かくはならない。
だけど、モンスターの肉に放射すると温かくなった。
体に含まれている何かの成分が、魔力に反応して温かくなるらしい。
「おそらくですが、氷河期を乗り越えるために備わった能力なんじゃないかと先生は思うわけですよ」
「昔の人は体温が高かった?」
「今は使われてない能力なのでしょうか?」
「ええ、古代人類は魔力が体全体に満ちていたはずです」
「なるほどね」
「これが分かって何ができるのでしょうか」
「この物質はモンスターにもあるから取り出せば、調理に使う器具が作れます。ただ、言うほど温かくないんですよね。ほんの数度ほどです」
「濃縮すれば良いのでは」
「わたくしもそう思います」
体温上昇物質の抽出が始まった。
モンスターの肉から色々な物質が抽出されて、魔力が当てられる。
温度が高くなったのが、体温上昇物質だ。
その物質は簡単に分かった。
体温上昇物質を固めて固体にする。
魔力を放出するとかなり熱くなった。
調理に使える温度だ。
温度調節は魔力の量で出来る。
炎を出す魔道具と大差はないので、使うとすれば気分だろうな。
火にトラウマがあるような人にはうってつけだろうけど。
ニッチな需要だ。
「これは凄いですよ。保温水筒が簡単に作れます」
ああ、100度以下なら、炎を出す魔道具より、確かにこっちの方が良い。
「この体温上昇物質を飲んで、冷え性が改善されたら良いですわね」
「カリーナさん、実験してみないと」
犯罪奴隷に人体実験するらしい。
サマンサ先生は申請書を書き始めた。
モンスターの肉は食っているから、まあたぶん無毒なんだろうな。
凝縮すると毒という可能性もあるけど俺は低いとみてる。
「ところで、温度を目で見る魔術はどんな仕組みなんですか」
「秘密だよ。色々とやばそうだから」
「なら、聞きません」
「温める物質はそれでいいとして、魔力を当てると冷える物質なんかないかな」
「どういうモンスターの肉に含まれていると思いますか?」
「寒い所に暮らしていたモンスターが温かい所に取り残されたかな」
「ペンギンさんですわね」
「カリーナ、そういう奴」
「ニードルペンギンの肉ならあります。さっそく実験してみましょう」
肉から物質が抽出される。
ビンゴ!
温度下降物質が見つかった。
これで、冷やす水筒も作れるぞ。
温度下降物質を使えば冷房も作れる。
まあ、冷却魔法があるけどね。
温度下降物質を染料に入れて、布を染めてみた。
うわ、ひんやりする。
体から出る魔力が温度下降物質に当たって冷やすんだな。
これは大ヒットの予感。
体温上昇物質も服を染めるのに使えば、冬服ができる。
俺の持っているブランドのグラビアから売り出そう。
この温度なら、低温火傷にもならない。
手袋や靴下とか色々と作れそう。
また金が入るな。
俺と、サマンサ先生と、カリーナとで山分けだけど。
金貨10万枚どっかんをするか。
温度上昇物質と温度下降物質を持っているモンスターで飼育が可能なものを養殖しよう。
俺が金を出してカリーナの実家のカクルド家にやらそう。
最初は苦戦するかもだけど、飼育ノウハウが蓄積されれば大儲けで、特産品になるはず。
この国の主要輸出品になるかもな。
体温上昇物質の薬は、犯罪奴隷に使って冷え性の改善が見られた。
副作用も今のところないらしい。
ただ効果が長続きしないようだ。
飲み続けないといけない薬らしい。
儲かる要素だな。
ノムノムナオールから、冷え性改善薬のポカポカーノは売り出された。
ネーミングが酷いがどうせ薬の名前なんか誰も気にしない。
それに俺が付けたわけじゃない。
ノムノムナオールの親方が付けた。
笑われても問題ない。
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