第91話 呪いの品

 ワイズベルも懲りないな。

 また悪だくみしている。

 その様子を分身ナンバー1が見ていた。


「持ち主を死に至らしめる呪いの品だって?」


 ワイズベルが商人らしき奴に尋ねた。


「どうでしょう。お買い求めになられるのでしたら、ご用意いたします」


 そう言ったのはどこかで見たと思ったら、プリンクの所の店員。

 また、プリンクのでっち上げ商品なんだろうな。

 そんな危ない物があったら、所有しているプリンクがまず死んでる。


「持って来い。ただし、使って効果がなければ、金は払わん」

「まいどありがとうございます。では入荷次第、商品をお持ち致します」


 プリンクの所の店員が帰っていった。


「本物だと思うか?」


 ワイズベルが側近に尋ねる。


「恐らく偽物でしょうね。ただ、何かしらの効果はあるかも知れません。それがライドに効けば、瓢箪から駒ですね」

「ふむ、試してみる価値はあるか」


 いま呪いのレパートリーは。

 永遠睡眠エターナルスリープ

 掻痒イッチ

 激痛シビアペイン

 時限爆弾タイムボム

 抵抗レジスタ

 衰弱ウイークネス

 魔封マジックシール

 がある。


 このリストにない呪いがあると良いがな。

 最近、バッタ屋でスキル屋と解呪屋をやってないな。

 久しぶりにスキル屋をやってみるか。


「ファントム覚悟」


 仮面を被ってバッタ屋に入ろうとしたら、殺し屋が襲ってきた。


排出ドレイン

「くわーっ」

「くっ、あれが止まらん。くー」

「みんなどうした? うー」


 はい、天国に3名ご案内。

 守備兵に3人の殺し屋は連れて行かれた。

 もうそれは満足しきった顔で。

 男性は女性に比べて快楽の耐性が少ないと言うのは本当のことだな。

 簡単に快楽で気絶するようだ。


 さあ、スキル屋を始めよう。

 まえほどは客は来ない。

 魔力を枯渇させない限りスキルは解けないからな。

 ほとんど永久に使えると言っても良いだろう。


 だから、一度来た客はほとんど来ない。

 呪いに掛かった客もいない。

 今日はハズレだな。


「あの闇商人、呪いの品はないかと言ってきたぜ」


 プリンクは呪いの品を集めているらしい。

 蛇女が呪いとしては一番強烈だ。

 生きているが、あれほどの呪いの品はない。


「何か売ったか?」

「売らないよ。手が後ろに回るのは嫌だからな」


「使ったら死ぬシリーズでも渡しておけばよかったのに」

「あれは、店の評判を落とす品だ。売らないのに限る」


「俺には売ったくせに」

「買うとは思わなかったんだよ。冗談で出したんだ」


「使ったら死ぬシリーズの新作はないの?」

「あるよ。無限水生成だ。日照りもこれで解決って。人柱じゃねぇか。こんなもの売れるかよ」


 人一人犠牲にしても大した量の水は出ないだろう。

 限界まで魔力を絞っても、せいぜい普段の2倍ぐらいだ。


「他には」

「無限金抽出。犯罪奴隷がやったら、小麦粉より小さい金一粒抽出して死んだ」


 俺が使ったら、きっと金塊が無限に作れるな。

 金には困ってないし、金相場を混乱させても仕方ない。


「貸してみろ」


 起動したら、魔力が吸われていく。

 凄い勢いでだ。

 俺で無かったらさすがに死んでいるな。

 確かに金の塊ができていく。


 金塊が10センチぐらいになってやめた。

 ドスンと音がして金塊が落ちる。


「これだけで食っていけますね」


「ここら一帯の地中の金は抽出したから、別の場所に行かないともう効果がないけどな」

「これを改良して普通の魔力で鉱石から抽出すれば、山師がこぞって買いそうですね」


「それは普通に抽出魔法使った方が早い」

「抽出魔法が苦手な山師もいますから」


 俺は金塊を収納魔術で仕舞った。

 それをバッタ屋は羨まし気な感じで見ている。

 あげないよ。

 争いの元だから。

 きっとバッタ屋のことだから、金塊をあげたら、飾って魔道具で金を出したってペラペラ喋るんだろうな。


「他には?」

デス

デスって相手が殺せるのか?」

「まさか。そんなことできるわけないだろう。無限ほどの魔力があれば魔力毒で相手は死ぬ。ただしその前に自分が死ぬけどな」


 俺のデス魔術を魔道具で作ったのか。

 きっと、魔脈の利用がされ始めて、その魔力噴出事故からヒントを得たんだろうな。

 魔力電池の性能が黒虹並みの1万倍とかなったら、この魔道具も作動するに違いない。

 現状では無理だな。


「もうないよな?」

「無限警報。一度起動すると、死ぬまで大音量で警報を発する。辺境騎士団が欲しいと言った時には心が痛んだぜ」

「自分は犠牲にしても、警報を発するか」

「嫌な魔道具だが、辺境騎士団は、これを魔力電池式に改造したらしい」

「当たり前だよな。死ぬ前提じゃ使えない」

「俺もほっとしたぜ」


 無限警報か。

 自己犠牲ありきの魔道具だ。

 この使ったら絶対に死ぬ魔道具を作っている奴はかなり残虐な奴だな。


「どんな奴が作っているんだ?」

「俺も顔は知らないんだ。フードを被って声を変える魔道具を使っている。男か女かさえ分からん」


「よくそんな奴と取引するな」

「ここは場末の魔道具屋だぜ。違法スレスレの物が売りだ」


「でも、死人が出ないように気を使っているな」

「まあな。店の評判も大事だからな」


 そういう所は気が弱いというか憎めない所だ。

 使ったら死ぬシリーズは改良して上手く使って欲しいと思っているんだろうな。

 そういうことにしておいてやる。

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