第50話 借り物は役に立たない

 結局、スェインはスキル屋に来ない。

 逮捕されたクロフォードのことは少し気になったが、邪教集団を皆殺しにしたんだから、しょうがないよね。

 ただ心情的には分かる。

 人間に爆発の呪いを埋め込む奴は殺すべきだ。

 ただ実家が邪教集団を利用してたんだろう。

 そう考えると自業自得かなという気もする。

 


 そして、やって来たよプリンクが。


「スキル屋。身体強化のスキル100個だ」

「それはさすがに無茶だと思うよ」

「出来ないのか?」

「どうなっても知らないよ」

「構わないやれ」

「となると施術が難しくなるので、10倍価格の金貨100枚を頂くが」

「払ってやれ」


 プリンクのお付きの者が払う。

 オークを討伐していい気になっているな。

 まあ金を落としてくれるのは別に良い。

 スキルならいつでも無効化できるからな。


 次の日、学校で分身ナンバー1が決闘を申し込まれた。

 分身で決闘を受けてやるか。


「では、これより。プリンクとライドの決闘を始める」


 審判はまいどおなじみの先生ね。

 怪我をしない例の結界内で戦闘は始まった。


「神速を得た俺に敵う者はいない」

「御託は良い」


 なんかデジャブ。


「あがが」


 何にもしないのにプリンクが倒れた。


「戦闘継続不可能により、ライドの勝ちとする」


 あー、植え付けたスキルが一部重なり合って、ショートしたみたいになっている。

 プリンクはスキル屋に文句を言いに来るかな?

 案の定、授業をさぼって文句を言いにきた。


「お前のせいで決闘に負けた。かけ金と慰謝料を払え」

「どうなっても知らんと言っただろうが」

「貴族に歯向かうのか」


 うん、どう言い包めよう。


「この店は王族も利用する店だ。ゲイリック王子に聞いてみるといい」

「くっ」


 さすがに王子の名前には黙るか。


「とっとと帰れ。二度と来るなよ」


 プリンクは帰りがけに扉を蹴飛ばして、足を痛め引きずりながら帰っていった。

 来ないと思っていたスェインが学園の放課後の時間に来た。


「そのスキルの技術を教えてくれ。金はいくらでも払う」


 そうきたか。

 スェインはスキルを自分の技術としたいようだ。

 借り物ではなく自分の力ととして取り込むために。


「金は要らない。その姿勢に感心した。そうだよな借り物の力は不味いよな」

「その通りだ。借り物の力ではいつか裏切られるかも知れない」


「付与魔法はできるか?」

「ああできる」

「スキルは理論上付与魔法で可能だ」


 身体強化スキルの魔力回路を描いてやった。

 付与魔法で魔力回路が植え付けられるはずだ。

 スェインが遠回りなようで一番近道を行っているかな。


 そして、閉店間際、クロフォードがやって来た。

 釈放されたのか。


「頼む。力を貸してくれ。邪教を領地から追い出すためなら、どうな要求にも応えよう」

「逮捕されたと聞いたが」


「邪教は見つけ次第、死刑ということになっている。殺すのは褒められる行為だ。ただ実家との繋がりがあるから、連座で罪がないとは言えないが」


 実家と敵対する道を選んだか。


「なんでまた邪教を引き入れた?」

「うちの領はモンスター被害が激しくてな。限界だったんだ」

「そうか。王に助けは求めなかったのか?」

「治められないなら爵位を返上せよと言われたそうだ」


 ありがちな話だ。


「で俺か?」

「そうだスキルの力があれば、邪教に頼らずモンスターには負けない」

「俺を信用しているのか」

「そうだライド。君を信用している」


 ばれた。


「尻尾は色々と出しているが何故分かった」

「ゲイリック王子が調べたんだ」


 王族に所属している影の者辺りが調べたんだろう。


「仕方ないな。金は貰うぞ」

「モンスターが倒せれば、素材でかなり金は儲かる。冒険者Cランクの実力が、スキルの力でAランク近くになるのだからな」


「よし、分かった。料金は規定でいい。1スキル、大銀貨1枚だ」

「助かる」


「邪教には俺も借りがあるんでな」

「頼むぞ。デス魔法使いが付いていれば、必ず勝てる」


 さあて、色々と準備をしないとな。

 何日も出掛けないといけない。

 なるべく早く帰るつもりだが、邪教の根は深そうだ。


 邪教の人間にマーカーが付いていたりすると便利だが。

 嘘判別、魔術で出来ないかな。


 何かそういう手段が必要だ。

 嘘判別魔術は会得しないといけないな。

 困った時のサマンサ先生だな。


「サマンサ先生、嘘判別魔法ってどんなのですか?」

「入っていきなりですね。質問に魔力を乗せて放ちます。相手の魔力の反応を見て嘘判別をしています。魔力は思考に反応するエネルギーなので簡単には嘘はつけません」


 質問を魔力で放つか。

 サマンサ先生は処女か?

 魔力に質問の意思を込めて放ってみた。

 おっサマンサ先生から反応があったぞ。

 質問に対しては受け入れるみたいな反応だ。

 じゃあ処女だな。


 ファントムは童貞か?

 消えているファントムに意思を込めた魔力を放った。

 拒絶の反応。

 ファントムは童貞ではないのだな。

 まあそうだろうな。

 怪しい風呂屋も知ってたし。


 邪教か?

 100メートルの範囲で質問フィールドを作った。

 そして歩くと、ほとんどは拒絶の反応だが、受け入れた奴がいる。

 受け入れたということは邪教関係者だな。

 本当に根深いな。


 そういう奴はゲイリックにチクっておこう。

 奴が手柄にするだろう。

 それにしてもこんなに簡単にできるとはな。


 1キロメートルぐらいに範囲を広げられないかな。

 そういう訓練はしたことがない。

 邪教をやる前に技を磨こう。

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