第49話 待ち人来たる
「大変だ」
スキル屋をやってたらバッタ屋が飛び込んで来た。
「逮捕状でも出たってのか?」
「その通りだ。もぐりの治癒師は申し開きがなければ逮捕すると言っている。治癒師ギルドがな」
なんだ。
要は裁判に訴えるということだろ。
申し開きが無ければな。
「よし、治癒師ギルドに行くぞ」
「俺は客をなだめておくよ」
治癒師ギルドは冒険者ギルドと変わりない。
ただいるのが白衣を着た人物達なだけだ。
「バッタ屋の所のスキル屋だ」
「ええともぐりとの噂の」
「そうだ。申し開きに来た」
会議室に通された。
「治癒師ギルドに入っていないくせに治療行為はけしからん」
「いややってないが」
「体調が悪い患者を治しただろう。それにスキル。あれも治療だと考える」
めんどくさいな。
待てよ。
治癒師ギルドに入っていないのが問題なんだな。
「じゃあ治癒師ギルドに入る。今まで治療した患者に対するギルドへの手数料も払う。これで文句ないだろ」
「いや、お前、治癒師ではないだろう」
「試しに病人を連れて来い。悪い所を当ててやろう」
治療の依頼を出しに来た病人が俺の前に連れて来られた。
俺は次々に悪い箇所を当てた。
「ぐぬぬ。お前、元医者か」
「弟子入りしたことならある。文句あるか?」
「仕方ない。ちゃんと今までの患者の分の手数料を払えよ」
「おう」
金なんか惜しくない。
ファントムの名前で治癒師ギルドに登録した。
「でどうなった?」
バッタ屋に帰ると、バッタ屋が心配そうに尋ねて来た。
「ばっちりだ。手数料は収めないといけないが。構わないさ」
「よかったぜ。辞めるなんてことになったら暴動が起きるところだった」
「大げさだな」
溜まった客を次々に捌く。
もう慣れたものだ。
おりょ。
知っている顔が客としてきた。
確か、クロフォード。
腹に一物ある虐げられて、育った奴か。
「身体強化を頭、胸、腹、両手、両足に頼む」
「何でまたそんなスキルが欲しいのか」
「力が要るんだ。誰にも負けない力が」
「まあ良いか。客のことは詮索しない。こっちも知られて困ることはある」
施術して、クロフォードは帰って行った。
そして次の日。
クロフォードが100人ぐらいの兵士を連れてやってきた。
兵士達に施術してほしいというから、クロフォードにやったのと同じ施術をする。
「これは口止め料だ」
そう言ってクロフォードは金貨200枚を置いてった。
しかし、知り合いでクロフォードが最初に来るとはな。
しばらくして、王都の街に爆発音が多数響き渡った。
誰かが魔法実験しているわけではないか。
火の手も上がる。
やがて火の手は収まった。
意外と生水スキルが大活躍。
水を出し続けて消火作業がはかどった。
とっさの時に集中はできないものらしい。
魔法で消火しようとして、慌てて失敗という例が相次いだ。
スキルはスイッチを入れるだけだからな。
後は自動でやってくれる。
次の日、ますます、客が増えた。
そして、ついにゲイリック王子が現れた。
やっとか。
待たせやがって。
ゲイリック王子は列に並ばず俺の所にいきなり入って来た。
何で部屋にいる俺が知っているかと言えば、
並べよ、などということは言わない。
ゲイリック王子は金貨を5枚出すと。
「身体強化フルコースだ」
と言った。
クロフォードに話を聞いたのかな。
まあ良い。
言われた通りに施術してやった。
「胃が悪いですね」
「なぜ分かった?」
「これでも治癒師ギルドの一員なので」
「そのことは誰にも言うなよ」
「ええ。胃に回復スキルを付けましょうか」
「やってくれ」
胃潰瘍かな。
ゲイリック王子は笑いながら帰って行った。
胃潰瘍が治って良かったな。
7つも身体強化のスキルを重複して使用すれば、オーガとでも殴り合えるだろう。
ただ魔力消費の関係で時間的な限界はあるが。
早く勇者になれよ。
「クロフォードが逮捕されたって」
分身ナンバー1が気になる音声を拾った。
あいつ、なにやったんだ。
「クロフォードの実家は邪教集団を匿っていたらしいよ」
「でそれがばれたのか?」
「ばれたんだけど、クロフォードと兵士が邪教集団を王都で皆殺しだよ。仲間割れって言うのかな」
なんか面白いことになっているな。
「詳しく」
「ひゃ、神像のライドが喋ったぁ」
やっぱり微動だにしないのは不思議がられていたんだな。
じっとしているのはつらいからな。
あれは尋常じゃないと思われていたのか。
まあそれは別に良い。
「早く話せ。邪教を皆殺しは分かったが、その邪教ってのは?」
「暗殺教団らしいよ。体内に爆発する呪いを埋め込んで攻撃するらしい。死ぬと天国にいけると本気で考えている危ない奴らさ」
あいつらか。
よくも、子供に爆発の呪いを埋め込んで俺の所に差し向けたな。
許せん。
本拠地の奴らも皆殺しだ。
クロフォードよくやった。
後は任せろ。
クロフォードは死んでないが、仇は討ってやる。
ところでクロフォードの実家ってどこよ。
ファントムに調べさせよう。
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