第34話 プリンクやらかす
分身への攻撃は日に日に激しさを増す。
人混みで何度刺されたことか。
魔力結晶にグサグサやっても無駄なのにな。
俺がいる邸宅へくる殺し屋は皆殺しだ。
この邸宅には俺とファントムしかいないから、入って来る奴はもれなく敵だ。
邸宅ごと大破壊を起こすような攻撃はしてこない。
さすがにそこまでやると王が介入してくるだろうからだ。
邸宅に足を踏み入れて3秒と生きた暗殺者はいない。
一応無関係な人が来るかも知れないので、極悪トラップありますの立て札も出してある。
御用の方は郵便ポストに手紙を入れて下さいとも書いた。
殺し屋はトラップにやられたと思っていると俺は推測した。
俺が皆殺しという選択をしないのを見抜いてやっているなら大した胆力だが、
俺を狙っている貴族のひとつの悪行を徹底的に調べて、王から抹殺の許可を貰いたいな。
うん、そういう作戦は良いかもな。
悪を懲らしめたとなれば、味方になってくれる良い奴も現れそうだ。
ただ、勇者の称号がうっとうしい。
名声を上げるともれなく付いて来る。
ゲイリックかスェインのどちらかが、早く称号を貰っちまえよと思わないでもないが。
俺の目からみて二人とも勇者というにはお粗末すぎる。
あの戦闘力で勇者はちゃんちゃらおかしい。
だから、王も称号は与えてないんだろう。
魔法学園の卒業生や騎士の中から選んでくれても良いのになと思うが、近衛騎士をみた感じでは望み薄だ。
分身ナンバー2に集中しよう。
ちなみに分身ナンバー1は魔法学園で授業を聞いている。
ナンバー3は街で買い物。
この邸宅に食料を届けないとだからね。
買う店は毎回変えている。
毒が仕組まれると厄介だから。
解毒の魔道具と魔術は使えるが、即死だと役に立たない。
用心に越したことはない。
それでナンバー2は街の外にいる。
家の中だと外の景色が恋しくなるからだ。
とにかく、死ぬ危険性がないので好き勝手動き回っている。
「まだ毛皮ゴールドラッシュは続いているのか?」
出会った冒険者に分身が話し掛ける。
「おう、続いてるよ。ここ何年かはブームが続くとみてる」
「流行は誰にも読めないと思うがな」
「だがよ、冒険者の勘が言っているんだ」
「勘じゃ、しょうがないな。じゃあ、良い狩りを」
「あんたもな」
うん、上流階級で流行ると、何年か後に平民に流行る。
まだ、今は裕福な商人が毛皮を使った服を着始めたところだ。
まだまだ、ブームは去らないか。
土埃が上がっているのが見えた。
竜巻?
いや、必死に逃げているのはプリンクと取り巻きだ。
あいつらまた何かやらかしたな。
知らねっと。
土埃の正体が分かった。
ウルフ系のモンスターの大軍だ。
こんな数がどこに隠れていた。
まあ気にすることでもないか。
金貨がやってきたと思っているに違いない。
冒険者達がホクホク顔で狩っているのだから、彼らの邪魔するのは申し訳ない。
分身に向かってくるモンスターはいない。
分身が人間じゃないことを見抜いているな。
匂いかな。
魔力かな。
なんなのか分からないが、流石だと思う。
ウルフ系モンスターは王都の城壁に押し寄せた。
冒険者達は城壁ですりつぶす作戦だ。
城壁の上にも冒険者達が現れた。
矢を放っている。
魔法だと商品価値が下がるからかな。
それに矢だと殺した奴が分かり易い。
矢に目印が付いているからだ。
「開けろ! 俺を誰だと思っているモナーク伯爵後継だぞ! 開けてくれ! 頼むぅ!」
プリンクが扉をドンドンと拳で叩いてる。
城壁の冒険者がいなければとっくにモンスターの腹の中だったのにな。
面白い見世物だから見物しておこう。
プリンクは泣き叫び涙でぐちゃぐちゃの顔になった。
取り巻きが変な顔をした。
ケツがもっこりしている。
こいつ糞を漏らしたな。
あとで噂を流してやろう。
通用門が開いて冒険者の一団が躍り出た。
掃討戦に掛かるらしい。
プリンク達は通用門から入ろうとして、殴られ踏まれて散々だ。
出る人を待ってから入れば良いのに。
そして、この騒動は収まった。
だが、俺は見た一部始終を報告。
プリンクはスタンピードを起こした罪で罰せられた。
だが意外なことに冒険者達から罪を減じる嘆願書が寄せられた。
儲かったからね。
運の良い奴だ。
だが、商業ギルドははそうはいかなかった。
商売の邪魔をしたと訴えて多額の賠償金をプリンクが払うことになったらしい。
ちなみにどうやってスタンピードを起こしたかというと、ウルフ系のダンジョンで肉屋から貰った食えない内臓とかを集めて、ダンジョンにばら撒いたらしい。
それで増えまくってこうなったと。
大量のモンスターをどうやって倒すとプリンクが考えていたかは分からないが、きっと通用しなかったのだろうな。
普段の行いが悪いからろくな目に遭わないんだよ。
プリンクの破産は近いかな。
破産したらあざ笑ってやろう。
それが楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます