第3話 最強

 冒険者登録して、カードを貰った。

 カードはありがちだよな。

 Fラングダンジョンの最初の敵は、ビッグラット。

 大ネズミだ。

 まあ、猫よりでかいネズミなので可愛げはない。


火球ファイヤーボール

雷球サンダーボール

空刃エアカッター


 うん、ノーコンでないようで何より。

 俺の方に向かってきたら、謀殺を疑う所だ。


「どうだ。魔欠者にはできない芸当だろう」


 ちっ、自慢したくて俺を連れてきたのだな。

 プリンクは収納ストレージの魔法が使えないということもあるけど。


「ぼさっとしてないで魔石を取り出せ」


 モンスターは体内に石を持つ。

 魔道具やポーションの材料だ。

 採取ナイフで魔石を取り出す。


「行くぞ」


 やがて、10階層を過ぎた。

 ここいらの敵はゴブリンだ。

 さほど強くはない。

 武器さえあれば俺にも殺せるだろう。

 ゴブリンは小学生ほどの背丈だから、力もリーチもそれなりだ。


 とくに遠距離攻撃主体のプリンク達なら問題ない。


 広間に出た。

 モンスターはいない。

 広間の中央には宝箱がある。

 なんか怪しいな。


「宝箱を開けるんだ。背負いを置いて一人で行け」


 くっ、プリンクからは策謀の匂いがする。

 だが、拒否するわけにはいかない。

 最近、プリンクは俺に魔法が効果がないと知って、鞭で打つことを覚えた。

 鞭打ちは魔力操作じゃ防げない。

 カリーナは忙しいのか家に遊びに来る頻度が減った。

 カリーナの回復魔法をあてにはできない。


 背負いを外すとプリンクに渡した。

 ゆっくりと広間の中央に行く。

 ふう、トラップはなかったな。

 もしかして、ただ宝が置いてあるだけか。

 まあ開けるしかないんだけど。

 宝箱を開けると、広間の床一杯に召喚陣が現れた。

 やっぱりか。


引付アポーツ。やったぞ宝が手に入った」


 嬉しそうなプリンクの声。


 俺はハイゴブリンの集団に囲まれていた。

 プリンク達の遠ざかる足音。

 最初からこのつもりだったのだな。

 そんなに俺が邪魔か。

 俺は家督なんか要らない。


 なのに、ここまでするのか。

 こんな所で死んでたまるか。

 俺の腕力じゃハイゴブリン一匹を道連れにするのがやっとだな。

 考えろ。

 俺の手札は魔力操作。

 こうなったら魔力をぶつけよう。


 魔力は現象に変換してなければ、ほとんど空気だ。

 だが、空気だって叩きつければ風を起こせる。

 足掻くだけ足掻くのだ。


 魔力を圧縮。

 高密度にした方が堅いイメージがあるからな。


 行くぞ。

 放出。


 風さえ起こらない。

 やっぱり駄目か。

 その時に俺の周りのハイゴブリンが喉を掻き毟って倒れた。

 なんだ。

 魔力に毒属性でも付いたのか。

 検証は後だ。

 俺は放出された自分の魔力を散る前に素早く掌握。

 体内に戻して循環圧縮した。

 再び囲まれたので同じ事をする。


 やはり、喉を掻き毟って死ぬハイゴブリン。

 もはやこうなれば余裕。

 俺に近づいたモンスターは全て死ぬ。

 そして、放出把握を繰り返して、ある技も覚えた。

 放出した魔力の流れがレーダーの役目をするのだ。

 循環の妨げがあるとすぐに分かる。


 そして、体外でも循環ができるようになった。

 これは別におかしくない。

 カリーナに魔力を受け渡すのに体外で循環してたからな。

 何もない所の方が簡単なぐらいだ。


 高濃度の魔力の循環が俺の周りにできる。

 もはやバリヤーだ。

 いや死の領域だ。

 そこに踏み込んだモンスターは死ぬ。


 俺は移動するだけでモンスターを退治して行った。

 なんだ、俺って最強。

 いや、いま投げナイフを投げられたら死ぬ。

 循環が飛び道具を捉えた。

 この形は矢だな。

 形さえ分かる。


 目で見るよりもはっきりと軌道が分かった。

 余裕でさける。


 うん、レーダーがあって良かった。

 俺は領域を支配する死神、なんちゃって。

 さすがに銃とか撃たれたら死ねる。

 さっき、矢は避けられたけど。


 まだ最強には程遠い。

 体外の循環の範囲を徐々に広げる。

 100メートルぐらいが限界のようだ。

 でもこれなら不意打ちは食らわない。


 レーダー能力は高性能なようだ。

 ダンジョンのトラップには魔力が流れている。

 これも捉えられる。

 なのでスイッチがどこにあるのか丸わかりだ。


 準最強ぐらいかな。

 今まで魔力操作を頑張ったのがこんな形で花開くとは。

 余裕ができたのでモンスターが死んだ原因を考える。


 魔力を圧縮して叩きつけるとどうなる?

 魔力中毒で死んだんだよな。

 そう言えば魔脈の噴出事故の話を読んだ。

 魔力が濃く流れている所を魔脈というのだが、地震などで地割れが起きると、魔力が噴出される。

 魔脈の噴出事故と同じか。


 俺が死なないのは魔力の循環で高濃度の魔力に慣れているからか。

 それとも自分の魔力では死なないのか。

 異物ではないからかな。

 俺が死なない理由はそんなところだろう。


 最強になったからには、とにかく色々と遠慮は要らないってことだ。

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