第43話 歌
次の日、ナンバー2とナンバー3はチンピラと対峙してた。
「おらっ、やるってのか。俺達が泣く子も黙るサグス一家と知っての行動か」
「プリンクの差し金だろうが帰れ。今ならなかったことにしてやる」
「引き下がれるか。おらっ、やっちまえ」
「仕方ない」
ナンバー2と、ナンバー3が電光石火の如く動き、スタンガン魔道具で気絶させていく。
拷問の呪いがあったな。
やってみるか。
魔力回路を相手の体内に構築すれば良いので、分身でも呪いは掛けられる。
「痛い。あがっ、がぁ。悪かった。くそっ、いだだ。あっ。ががが」
「どうだ。誰に頼まれたか喋るか」
「プリンクだ。早く止めろ。あぐっ」
呪いを止めてやった。
守備兵に突き出すと彼らは連れて行かれた。
プリンクはまたも、事件をもみ消したらしい。
だが、着実にプリンクの評判は悪くなっている。
実家の家中も俺に跡を継がせろと言っている人が増えて来た。
パン屋に本体で会いに行った。
「あっ、三つ子のお兄さん。パンなら売り切れました。護衛ありがとうございました」
「いいんだ。良ければパンを作る所を見せてくれないか」
「はい、そうですね。パンを焼きますから、お土産に持っていって下さい」
パン屋にお邪魔した。
さっそく作っている所を見せてもらう。
「捏ね捏ね♪
ああ、魔法語が歌に入っている。
ただ、付与魔法の才能が無ければ発動しないのだろうな。
俺は防御力アップと、思考力アップの魔法語を教えてやった。
3時間後、それらで作られたパンが焼き上がる。
防御力アップと、思考力アップの付与魔法もパンに宿っている。
俺は真実を教えてやった。
「へぇ、そうなんですが。昔からうちのパン屋で歌い続けられた歌だったんです」
「どれぐらい昔からかな」
「分かりません。ひいおじいさんも少なくてもこの歌を歌ってたらしいですよ。王都に移り住む前もパン屋だと聞いてます」
新しい付与魔法とかあったら大発見だったのにな。
このパン屋が古代魔法王国からやっているパン屋だったらロマンがあるな。
そうであってほしい気がする。
古代魔法王国の肉体労働者がこのパンを食べて働いていたりしてな。
さて、いつまでも護衛は続けられない。
恒久的に守られる仕組みを作ってやりたいな。
カリーナと通信機で話す。
「あのパン屋がつまらない横やりでなくなるのは嫌な気がしないか」
「ええ、思い出のパンですから、初めての買い食いは美味しかったです。あの味がなくなってほしくありませんわ」
「国王様に献上してみるのはどうかな」
「良い考えかもしれませんわ。王室御用達なら貴族でもどうにもできません」
国王様に献上すると決まった。
パン屋の女の子は畏れ多いと言ったが、最後には折れた。
国王があのパンを気に入ったのは言うまでもない。
筋力に衰えを感じる年ごろだからね。
筋力アップは嬉しいだろう。
あのパン屋の露店に王室御用達ののぼりが加わった。
しばらくナンバー2とナンバー3を遠巻きに待機させてみたが、チンピラがくる様子もない。
貴族とか守備兵が露店に買いにくるようになった。
横柄な貴族はいない。
王様の耳に入ったら、スキャンダルだからな。
名店は善人の貴族を多く味方につけているものだ。
あのパン屋も例外ではない。
そういうファンがたくさんできているみたいだ。
思考力アップも筋力アップ同様、年寄りに好まれている。
防御力アップは、守備兵と冒険者が好んでいると聞いている。
防御力アップで命が助かったと思われる事例は増えている。
まさしく、幸運のパン。
サマンサ先生に、思考力アップのパンを差し入れする。
「いつもながら美味しいですね。先生、閃いちゃいました。ライド君によれば付与魔法は小さな呪い。呪いの魔力回路を立体的にすれば色んな種類の付与魔法を同時に掛けれるのでは」
「そんなこと、普通の魔力操作じゃ出来ませんよ」
「ライド君ならいける。ライド君のちょっといいとこ見てみたい。一気一気」
「飲み会じゃないんだから」
ひとつやって見ますか。
筋力アップ+思考力アップ+防御力あっぷ。
サマンサ先生の体の中に3つの魔力回路が立体的に組まれた物がいくつもできた。
成功だ。
付与魔術は互いに干渉してない。
でも、あまり要らないスキルだな。
「一応、成功しました」
「理論上可能なのですね」
「一度に複数の魔法を唱えられれば、あるいは」
「ライド君はどうやっているんですか」
「無詠唱なので唱える必要がありません」
「羨ましい。無詠唱は教えてくれないのですね」
「ええ」
「ならば魔道具で再現するしかないですね。魔道具なら詠唱は関係ないですから」
「複数の魔法を同時に展開する魔道具はなかったように思うのですが」
「ありません」
俺はそういう魔力回路を知っている蘇生の札だ。
三つの魔法を結合する部分の魔力回路を書いてやった。
「結合する部分の魔力回路です」
「どこでこれを?」
「秘密です」
「まあ、いいです。これを使えば魔道具は画期的な物ができ上がります。また共同研究になりますね」
「それでお願いします」
名声は要らないが、将来的には誰かに蘇生の札を開発してほしい。
それに魔法結合の技術は必要だ。
他の魔力回路は揃っている。
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