第120話 結末

 分身ナンバー1の映像。


「くそっ、ちょっと休んだだけなのに課題をどっさり出しやがって」


 机に向かってひーこら言っているのはワイズベル達。

 休んでいたのだから仕方ないよな。

 逮捕がなかったことを喜んでほしいところだ。

 しかし、ワイズベルは真面目だな。


 自分でやらないで部下にやらせれば良いのに。


「なんでレポートの提出するときに質疑応答があるんだよ。それさえなきゃ」


 ああ、提出の時に質問されるのね。

 理解度が低いとやり直しさせられるのか。

 それは自分でレポートを書かないとな。

 他人に書かせたら質問されたら答えられない。


 分身ナンバー2の映像。


「モンスタートレインの罪で逮捕する」

「嫌だ! 牢は嫌だ! 犯罪奴隷は嫌だ!」


 だだをこねているのはプリンク。

 だが、近衛騎士は容赦なくプリンクを連れて行った。

 最近の犯罪奴隷は魔力の元だから待遇はそれなりに良い。

 自由が利かないのと、単純作業がめんどくさいだけだ。

 蛇女との接触が絶たれて、長生きできるんだぞ。

 俺に感謝しないと。

 まあ何年か臭い飯を食え。


 分身ナンバー3の映像。


「クラフティ、スロベニー、カルエル、モンスタートレインの罪で逮捕する」

「俺達は貴族の子弟。裁判はやってくれるのだろうな」

「もちろんだ」


 クラフティ達も逮捕された。


 ワイズベル達はコンピュータ搭載の魔道具に金を使ってしまったので、金がない。

 レポートはかなり打撃だったのか賢者の塔から脱会する生徒が続出した。

 ワイズベルは止めたかったようだが、どうにもならなかった。


 最初の勧誘が成績が上がるだったからな。

 授業と試験対策で留めておけば良かったものを。


 賢者の塔に所属する生徒が減ったので、元マフィアの割合が増えた。

 元マフィアの発言力が増して、ワイズベルは難しいかじ取りをしないといけないようだ。


 プリンクは奴隷契約を受け入れて、犯罪奴隷になった。

 なんと懲役50年。

 よく受け入れたと思う。

 俺なら死を覚悟して暴れるがな。

 プリンク健康的な生活なので体の調子が良くなったようだ。

 運動時間は元気に運動しているのを分身が見てた。


 プリンクの店は蛇女が奪い取った。

 初めからこのつもりだったんだろうな。

 計画ではプリンクを殺して乗っ取るつもりだったに違いない。


 蛇女は差し入れと称してプリンクに色々な物を持って行く。

 差し入れの中に危ない品が隠されていることもあるし、普通の品の時もある。

 プリンクはそれを囚人に売っているようだ。

 集金は蛇女が囚人の家族や属している組織から、行うという仕組みだ。

 転んでもただでは起きない奴。

 プリンクは女性の犯罪奴隷を物で従えて、ハーレム作った。

 懲りない奴だ。

 もうすっかり牢名主だ。


 クラフティ達は貴族の力で裁判を乗り切ってなんとか罰金刑に収めた。

 だが、名誉勇者パーティからは罷免された。

 俺はソロで名誉勇者をやることになった。

 めんどくさい。


「ついに時代はメガバイトですね」


 魔力コンピュータの記憶装置の類がメガバイトになった。

 サマンサ先生は、コンピュータ開発にのめり込んでいる。


「先生、コンピュータ開発競争は熾烈を極めますよ。修羅の道と言っても良い」

「お金と人材さえあれば、トップを取れます」

「儲かりますが、虚しいですよ」

「金じゃありません。性能の良い、コンピュータが作られるのが嬉しいのです」


 前世でコンピュータの買い替えが虚しくて寂しかった。

 でも時代遅れになるともう使えない。

 数年でOSとか新しいのがでるんだものな。

 それでコンピュータも性能の良いのでないと駄目。

 まあ、しょうがないか。


 リサイクルは既に仕組みを作っているし、問題は起きないだろう。

 あとはネットだな。

 魔石の粉で糸を染めての有線の敷設は始まったばかりだ。


 現在使えるのは王城の中だけだ。

 試験しているとも言える。

 伝令が要らなくなる日も近い。


「ちびドラは可愛いですわ」

「うん、可愛いね」


 よちよち歩くドラゴンの子供を俺とカリーナは見ていた。


「ウロコはいくら持って行っても良いから、酒が欲しい。できれば高い奴で頼む」


 ドラゴンはすっかり飲兵衛だ。

 ここはお宝の宝庫だな。

 ドラゴンが食ったモンスターの牙や骨や魔石に、ドラゴンのウロコ。

 城がひとつ買えるぐらいあるんじゃないかな。


 それが酒と交換で手に入るなんて。

 ぼったくったりはしない。

 あとで気まずくなって、ドラゴンと戦闘になるのもめんどくさいしな。

 生きた歴史の証人を殺すのは惜しい。

 気持ちよくさせてやるさ。

 こいつがいることで、モンスターの数も減る。


 人間さえ食わなけりゃ別に構わない。

 人間は不味いから食わないそうだ。

 うん、住み分けができているようで何より。

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