第78話 金貨10万枚どっかん

「大変です」


 アルファが部屋に飛び込んできた。

 何だ。

 誰かが何かやらかしたか。


「話せ」

「干ばつです」


 何だ干ばつかよ。

 でも王に貸しを作れるな。


「でかした」


 俺は王の執務室に入った。


「よう」

「またお前か」


 今日は護衛が反応しない。

 つまらないな。


「干ばつが起きているんだって。無限じょうろを作ってきたよ。ついでに巨大魔石の魔力を満タンにしてやろう。貸しひとつだからな」

「まあ良いだろう。借りておく」


 干ばつは無限じょうろ1000個ほどで乗り切れたらしい。

 王様から感謝の言葉と、貴族が無限じょうろを欲しがってたまらんと言っていると書いてあった。

 まいど。

 ぼったくろう。

 貯まった金をなんとかしないと。

 最近貯まり過ぎだ。


 カリーナが喜びそうで、金をじゃぶじゃぶ使うような事業はないかな。

 もう孤児院への寄付は十分だ。


 治水か。


「ねえ、治水してほしい所ってない?」

「いきなりだな。あるに決まっている。予算が都合がつかないだけだ」

「見返りはその川の水利権と漁業権ね」

「そんなの貴族が黙ってない」


 水利権と漁業権は地元の貴族が持っているんだな

 見返りがないんじゃ、やる気が出ないな。


「半分でいいや。水利権と漁業権を半分」

「分かった。貴族に根回ししてみる」


 王様からオッケーが出た。

 金貨10万枚どっかん。

 うお、散財してすっきりした気分。


 現地に飛んだ。

 曲がりくねった川が直線になっていく。

 土手も築かれ、水害に強くなったようだ。


 農業用に関や水路も整備されていく。

 金さえあればこんな大規模な工事ができるんだな。


 一人で見るのも虚しいので、休日にカリーナを誘った。

 飛ぶ座席でひとっ飛び。


「大規模な工事って初めてみました。壮観ですね」

「そう言って貰えると金を出した甲斐がある」


 巨大魔石と無限魔道具シリーズの売り上げでまだ金はある。

 次はトンネルを掘ろう。

 これなら通行料が取れるぞ。


「ねえ、トンネルが欲しい所ってない?」

「あるに決まっている」

「通行料全部で手を打つけど」

「駄目だ、3割は国に入れろ」

「まあ良いか」


 金貨10万枚どっかん。

 足りなくなったら言ってねと言っておいた。

 金があるのでファントムトンネルは1週間で開通した。

 土魔法の勝利らしい。

 延べ人数は10万人を超えたらしい。


 役人の人ごくろう様です。

 管理は大変だったろうな。


 やはり週末カリーナと飛ぶ座席でトンネルに入る。

 馬車の上を飛んで行くのは楽しい。

 あんなのありかと商人が驚きの声を上げた。


 このトンネルは何時でも俺は追い越し車線を走れる。

 独占だと言っても良い。

 ただトンネルの景色は詰まらない。

 見えるのは灰色の石の壁と、無限灯の光だけだ。


 トンネルって圧迫感があるような。

 トンネルから出るとほっとするのは俺だけだろうか。


「ちよっと怖かったです」

「うん俺も。次の工事は港の整備にしよう」


 やはり王様に言って港の整備を申し出る。

 金貨10万枚どっかん。


 トンネル工事をやった職人が大集結。

 土魔法で瞬く間に港を作った。

 港には灯台があって、そこの一階は俺の別荘だ。


「風に潮の匂いがします」

「うんそうだね。モンスターがいるから泳げないけどたまに来ようね」

「はい」


 分身ナンバー1。

 ワイズベルの所。


「ライドが王と組んで公共工事を始めた。どこにそんな金が」

「情報ではライドともファントムとも。例の巨大魔石を売った金ではないですか。ひとつ金貨1万枚ですから」


 そうなんだ。

 巨大魔石はひとつ金貨1万枚。

 でも材料費は金貨100枚も掛かってない。

 ゴブリンの魔石がひとつ銅貨3枚ぐらいだからな。



「くそう。こんな金で嵐みたいなのを起こされたらどうにもならない。賢者の塔など赤ん坊だ」


 今頃分かったのか。

 でも諦めないんだろうな。


 分身ナンバー2。

 プリンクの所。


「工事に使う金があるなら税金を安くしろ」


 いや、お前は税金を払ってないだろう。


「巨大魔石の注文が入ってますが」

「仕入れられるわけないだろう。金貨1万枚で王の審査がいるんだぞ」


「では断っておきます」

「いいや石をツルツルに磨いて、赤い塗料を塗って渡せ」


「偽物を渡したら。どうなるか」

「相手は敵国のスパイだ」


「えっそうなのですか」

「俺がスパイだって言えばスパイなのだ。王が羨ましい。やっぱり俺は王になるべき男だ。闇商人で天下を取るぞ」


 おお、プリンクは諦めないな。

 でも俺が公共事業をやっているとは気づいてないらしい。

 巨大魔石の発注元を王に報せたらスパイだった。

 プリンクって悪運が強いな。


 分身ナンバー3。

 クラフティの所。


「くそっ、ファントムの奴」

「あんなに金を持っているとはね。王国を飲み込むぐらいお金を持っているんじゃないかしら」

「私達に分けてくれたっていいじゃない」


 分けるなんてとんでもない。

 見逃してやるだけでもありがたく思え。


「スェインはドラゴンを討伐して金貨5万枚を得たらしい」

「その話は聞いた。ほとんど寄付したって」

「勿体ない」


 スェインは頑張っているな。


「俺達と何が違う。俺達にも出来るはずだ」

「そうね。運よ。運が無いんだわ」

「今は我慢の時」


 相変わらず、自信満々な奴らだ。


「運か。よし厄落としにぱーっと散財しよう。金なら踏み倒せば良い」

「ええ、そうしましょう」

「そうね」


 こいつら本当にどうしようもないな。

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