第77話 無限灯

 さて、回収コレクトの魔道具を量産しますかね。

 魔道具の量産は時間が掛るので少しずつだ。

 回収コレクトの魔道具を着けた犯罪奴隷から魔力が巨大魔石に溜まる。


 回収コレクトの魔道具と巨大魔石の間の繋がりを作る作業は俺以外にはできない。

 何と言うか高い場所から、低い場所に水を移す場合。

 ホースの中に水を入れて、そして繋ぐだろう。

 あんな感じだ。

 呼び水みたいな物だと思ってくれたら良い。


 それを出来るのは俺だけだ。

 何せ体外で魔力を扱えるのは俺だけだからな。


 犯罪奴隷は、大人しく物を作りながら魔力を取られている。

 王様は凶悪犯でない事故みたいな殺人とかそういう人を何年かで釈放するつもりらしい。


 まあ、頑張ってくれとしか言いようがない。

 巨大魔石の入力はできた。

 出力だな。

 これは回収コレクトと逆だから、そんなに問題はない。

 ただ、武器は嫌なんだよな。


 なので、灯りを作った。

 魔力の補充なくは言い過ぎだが、永遠に灯るであろう灯りの魔道具。

 犯罪奴隷がいなくならない限り無限だな。


「大変なことをしてくれたな」


 王様がなぜか訪ねてきた。

 大変なことって何だ?


「心当たりがないんだが」

「無限灯の魔道具を貴族達が欲しがってな。巨大魔石をまた獲ってきてくれると嬉しいぞ。それにあれは灯りだけではないのだろう」

「まあね。第2弾は送風機を考えている。第3弾は暖房。第4弾は冷風」

「夢のような生活だな。この功績だけで爵位を与えたいほどだ。どうだ爵位と言わず王族にならないか」

「お断りします」

「残念だ。だが巨大魔石はなんとかしてくれるよな」

「それはやりましよう」


 巨大魔石の製作費はもちろん貰う。

 かなりぼったくったが問題ない。

 うちの邸宅にも巨大魔石を設置した。

 この魔石には俺が魔力を込めた。


 犯罪奴隷にやらせなくても俺がやれば一瞬で満タンなのは言わない約束だ。

 能力は隠しておく方が良い。


 分身ナンバー1。

 ワイズベルの所。


「マッドサイエンティストが討伐されただと。なぜに上手くいかない。しかも似たようなシステムを王が開発するのだ」

「成果を横取りされたのでしょう。王家の影が動いたと思われます。マッドサイエンティスト討伐には王が一筆書いたらしいですよ。ファントムが守備兵に提出してました」


 うん、色々と情報が飛び交っているな。


「くっ、ファントムめ。奴をどうやったら出し抜ける」

「とりあえずここの警備を強化しました」


 ワイズベルは頭が固いな。

 もっと、柔軟に考えないと。


 分身ナンバー2。

 プリンクの所。


「ここで紹介した男達が違法な魔法実験によって死んだ」


 守備兵が聞き込みにきたようだ。


「ああ、あの痛いのが好きな男達か。そんなの知らん。プレーの内容まで責任は持てん。喜んで実験台になったのだろう。俺は無理強いしてないぞ」


 まあそう言うと思ったよ。


「その通りだが、責任は感じないのか?」

「ちっとも」


 反省の色なしか。

 変態仲間の友情などないのだろうな。


「邪魔したな」


 守備兵が帰った。


「儲かったが、ひやひや物だな。淫魔法で忘れよう」


 しばらくして蛇女が入ってきた。


「毛がうっすらと生えているな。どうしたんだ?」

「毛がなかったのは性病のせいです」


 そんな設定があったんだ。


「ああ、あの忌々しい薬のせいか」

「ええ。今、パートナーはあなたしかいません」

「そうか。嬉しいぞ」


 おお、プリンクが盛っているな。

 早死にするぞ。


 分身ナンバー3。

 クラフティ達の所。


「ファントムと王に美味しい所を持って行かれた」

「王様に文句を言う訳にもいかないし」

「命が助かったのが幸運」


 王様はちょっと美味しかったかな。

 後で貸しとして取り立てよう。


「くそっ、マッドサイエンティストがあんなに強いとはな」

「200人分の魔力を集めたらしいわよ」

「それでは勝てないわよね」


 200人分の魔力を体内に溜め込んだのか。

 やるな。

 さすがマッドサイエンティスト。

 気持ち悪かったが、大した実力だ。

 俺もちょっとマッドサイエンティストの気があるから気をつけよう。


「ファントムめ、王様と取引しやがって。巨大魔石をみたが流石にあれはないなと思う」

「ええ、どれぐらい強いモンスターなんでしょうね」

「ドラゴンの1000倍ぐらい」


 ゴブリン数十万匹の魔石だよ。

 こいつら流通を追うという考えはないのか。

 もっともカリーナに頼んで仕入れてもらったから。

 使い捨ての魔道具を大量生産したことになっている。


「だがファントムは胡散臭い。何かカラクリがあるに違いない。下賤の民が貴族より優れているなんてあってはならないことだ」

「そうね。やっぱり毒かしら。ファントムのデス魔法は毒かもね」

「島ほどの大きさのモンスターが一瞬で死ぬ毒はやっぱり伝説の劇毒魔法かな」


 劇毒魔法なんてのがあるんだ。


「伝説では1年間、あらゆる毒を入れた風呂に浸かって、会得したんだったな」

「そうなの」

「暗殺者ならそういう訓練をしそうね。前に毒手というのを見たことがあるわ。あれは片手だけを毒に浸すのだけど、恐ろしかった。かすっただけで死ぬと脅されたわ」


 毒の風呂なんて浸かったら死ぬだろう。

 この世界にも毒手があったんだな。


「毒を使うなんて卑怯だ」

「うんうん、裏の者はこれだから嫌ね。正義なんて通用しない」

「あらゆる毒を治すエリクサーを購入しない?」


 誰が卑怯だ。

 お前らの方が卑怯だと思うぞ。

 まあカリーナの所からエリクサーをお買い上げ下さるのなら、まいどという以外にない。

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