第9話 暫定1位
学園は順位戦の真っただ中。
順位戦というのはまず1年生は成績順に順位が決まる。
そして、去年の順位戦の成績で作られた3年生と2年生の順位の下に付けられるわけだ。
そして、順位が下の者は上の者へ挑戦ができる。
逆は無理。
弱い者いじめはできない仕組みだ。
勝つと順位が入れ替わる。
同じ組み合わせの再戦は10日間、間を開けないと出来ない。
ひとりが戦えるのは1日10回。
申し込みが殺到するとくじ引きになる。
順位戦の期間は30日。
同じ者へは最大3回挑める。
今年のスタートの順位は、1位が伯爵次男のスェインで2年生。
2位のゲイリック第三王子は3年生。
3位のクロフォードは男爵嫡子で2年生。
この3人は女子の人気も高い。
ちなみに去年の1位は卒業して抜けた。
抜けがあると年度が替わると繰り上げが起こる。
スェインは去年最終2位だ。
スェインとゲイリック王子は勇者の称号獲得でしのぎを削っている。
ちなみに順位戦は武器や魔道具の使用も許可されている。
一定のダメージを負うと弾き出される結界の中で戦いは行われる。
怪我の心配がないので思いっ切りやれる。
もちろん俺は
俺の今の順位は313位。
もちろん1年生では最高順位だ。
俺は1位のスェインに戦いを申し込んだ。
抽選になるかもと思っていたが、みんな気後れしたのか、俺が1番最初にスェインとの対戦となった。
「君はなんという勇気がある男なんだな。尊敬するよ」
スェインからそう言われた。
なんのことだ。
「勇気というか自信はある」
「なるほど、みんなが初日の第一試合はゲイリック王子に譲るのに、勝てる自信あってのことか。では僕も全力で挑ませてもらう」
ええと、申し込んだらあかん奴だったか。
ゲイリック王子がスェインに申し込んでみんなが遠慮する。
第一試合が終わったら急いで1位に申し込むのか。
ええと抽選は2分の1だったのか。
そりゃ第一試合になるというもの。
試合が始まる。
スェインがコールされると歓声が、俺がコールされるとブーイングが起こる。
俺の立ち位置が悪役になるのかな。
まあ悪役でも構わない。
「ではよろしいか。両者構えて、始め!」
スェインは武器として剣を持っている。
「
俺の初手は妨害だ。
「
俺は駆け出して、驚いているスェインに距離を詰めた。
スタンガン魔道具を押し付けようとしたが、さすがに1位は伊達じゃない、剣で俺を切ろうとした。
無駄だ。
俺はするするとよけて、魔道具を押し付け起動した。
バチっと音がして、スェインが気絶する。
ダメージはさほどないので、結界からは出されない。
「スェイン、戦闘継続可能か? 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。戦闘不能とみて、ライドの勝ちとする」
キャーという悲鳴が上がる。
あーあ、という声も聞こえる。
身なりの良い3年生が寄って来た。
制服を高級品に改造してるところから、ゲイリック王子だな。
「とりあえず、見事だと言っておこう。君は勇者の称号に興味があるのか?」
「ぜんぜん」
「こいつ、王子様に対してタメ口を」
王子の取り巻きが気色ばむ。
「構わん。学園では魔法の実力が全て。遠距離
かなり濃密度に魔力だぞ。
対抗できたら褒めてやろう。
そういうライバルがいればきっともっと強くなれる。
プリンクが寄ってきた。
「おい、お前、実技の授業で遠距離
「何を証拠に言うんだ」
「今日の戦いがそれを証明している」
「知らんな」
「くっ、魔法学園に訴えるぞ。退学にしてやる」
「ご自由にどうぞ」
魔力を受け流す
存分に調べてくれ。
めずらしいことにカリーナが俺のそばに来た。
「1位おめでとうございます」
「ありがとう」
「あの回復魔法を掛けていた日々が懐かしいですわ。すっかりお強くなられて」
「苦労したからな。約束は卒業までに果たす」
「ええ、期待しておりますわ」
カリーナが去って行った。
ますます美しくなったな。
絶対にプリンクなどには渡さない。
「ファントム、賭けはどうだった」
「へい、大儲けです」
「半分はお前の取り分だ」
「金貨52枚もありますぜ」
「取っておけ。とりあえずしばらく妨害行為の監視を頼む。下剤とか入れたりする奴がいるだろうからな」
「へい」
下剤で負けたなんてみっともないことはできない。
毒対策は必須だな。
魔力操作で出来ないかな。
解毒魔法は魔力で毒を排除する。
きっと魔力が磁石のように毒を吸い寄せて体外に出すのだろう。
うーん、魔力の性質を魔法に頼らず変えるか。
とりあえずは魔道具を作ってもらうか。
バッタ屋に頼もう。
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