第96話 喜劇の始まり
分身ナンバー2の映像。
「隠蔽魔法の達人と、最下層までシュートがあるダンジョンの情報か。なくもない」
「では金貨100枚を支払おう」
プリンクとマイム男爵が取引をまとめた。
プリンクの所に来た隠蔽魔法の達人はファントム。
「あっしは足を洗ったんですがね。他の人を当たってもらいますか」
「金貨30枚出そう」
プリンクとファントムが交渉中だ。
「受けろ」
姿を隠した分身ナンバー2がファントムに耳打ちする・
「分かりました。この仕事を受けさせてもらいます。ですが、これっきりですぜ」
「おう」
ダンジョンの方は、落とし穴を探して、見つけたら空を飛べる使い魔を偵察に出すみたいだ。
ダンジョンの情報も揃ったみたいだな。
「親分、マフィアが騒がしいですぜ」
従者のファントムがそんな報告をしてきた。
「ああ、ワイズベルがボスを殺したことになっているあのマフィアな」
「地方から、この王都に結集してるようです」
「蝶々部隊、マフィアの動向を探れ」
「「「了解致しました」」」
蝶々部隊から次々に情報が入って来る。
マフィアの人数は1000人を超える。
蝶々部隊は幹部の動向だけ把握してて、幹部も構成員の正確な人数は知らないようだ。
ただ、大まかな数字は分かっている。
雑だな。
構成員のリストぐらい作れよ。
「俺が次のボスだ」
「ワイズベルの首を取ってから言うんだな」
「手打ちにした方が良いんじゃないか。魔法使いの集団は厄介だぞ」
「何を弱気なことを」
幹部の会合を覗き見たが、一枚岩ではなさそう。
ボスは俺だと主張する奴が半分ぐらい。
手打ちが4分の1。
あとの残りは態度をはっきりしない。
ボスになるという主張をする奴は、ワイズベルの首を取ったのが次のボスということに落ち着いた。
戦いの場を魔法学園にすると、ワイズベルに地の利がある。
なので、王都の外で男らしく決戦しようという話らしい。
ワイズベルがのこのこ出て来るかな。
そっちは、どう介入するかは流れを見て決めよう。
とりあえずは、カリーナ誘拐から俺をダンジョン最下層につき落とす企みの方だな。
学園の廊下で、ファントムがカリーナの分身に隠蔽魔法を掛ける。
「カリーナ様が見えない」
「探せ」
「近くにいるはずだ」
護衛チームは演技が上手いな。
ファントムがカリーナ分身の口を塞ぎ、担いでその場を後にする。
ファントムの演技も上手いな。
ただ隠蔽魔法が掛かっているので、ファントムの演技を知っているのは俺だけだ。
俺も魔力の流れで、把握しているだけで、目で見ているわけではない。
ファントムがカリーナの分身を使われてない部室に連れてった。
待ち受けていた、覆面をした賢者の塔の団員がカリーナの分身に猿ぐつわをする。
そして部屋を施錠して去った。
俺が住んでいることになっている寮の部屋、その扉の隙間に手紙が差し込まれた。
カリーナを返してほしければ指定のダンジョンへ行けと。
分身ナンバー1はその手紙を読むとダンジョンに向かった。
ダンジョンまで三日。
カリーナが分身だとばれると不味いから、カリーナの分身を霧化して、救い出す。
ワイズベルは慌てた。
その様子を蝶が監視している。
「カリーナが消えたと。だがライドはダンジョンに向かって旅立った。問題ないだろう」
いや。誰が助けたとか考えようよ。
そう突っ込みを入れたいが、それに疑念を持たれるのもな。
ワイズベルは頭が良いようで抜けている。
分身ナンバー1がダンジョンに到着。
地図で示された場所に立った。
ファントムが姿を隠したまま来て、分身ナンバー1の背中を押した。
トラップが作動して落とし穴が開く。
分身ナンバー1はふわふわと落ちて行った。
最下層と思われる場所に見事着地。
さあ、パーティの始まりだ。
「主役は君だ。
生身の人間の転移成功。
実験台ありがとう。
「助演は君だ。
「エキストラは君達だ。
クラフティは今回の件に関係ないが、たまにはモンスターを討伐しないと鈍るだろう。
ちょっとした親切心だ。
転移魔術にもなれたな。
魔力結晶の目印があれば失敗しないようだ。
でも転移は風情がない。
俺としてはこれからも移動は、飛ぶ座席でやりたいところだ。
「えっ、ここはどこだ。僕を元の場所へ返せ」
「ワイズベル様、ここはライドを落としたダンジョンです」
「お前はワイズベルじゃないか」
「兄だったプリンクか。こんな所で会うとな」
「くそっ、誰の仕業だ」
「こんなことは許されないわ」
「私達を真勇者パーティと知っての狼藉なの」
諸君、楽しいパーティを楽しんでくれ。
とりあえず、6人は助け合うことにしたようだ。
小悪党チームが結成された。
前衛、プリンク、クラフティ。
中衛、ワイズベル、その側近。
後衛、スロベニー、カルエル。
バランスは取れている。
生きて帰れなくても別に構わない。
ちょっとした罰だ。
これに懲りて悪だくみをしなくなれば良いなと思っている。
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