第101話 手打ち式
手打ち式。
分身ナンバー1とナンバー2が揃っている。
ワイズベルとプリンクがいるからね。
分身ナンバー3の映像。
クラフティ達が悪だくみしている。
「マフィアの幹部が揃うんだってな。こいつらぶっ殺せば功績になるよな」
「やりましょう」
「懸賞金が掛かっているいる幹部もいますから、お金がっぽりですね」
クラフティ達が手打ち式に殴りこむ。
「お前らどこのもんだ」
「真勇者だよ。悪党は許せない性質なんでな」
思ってもないことを言うクラフティ。
「刺客なんて怖くない。どれだけ修羅場をくぐっていると思っているんだ。やっちまえ」
「言っとくが情報はワイズベルから漏れた」
「何だと。ワイズベルの、手打ち式に刺客を呼ぶなんてどういうことだ」
「知らん」
「そこのプリンクもグルなんだよ。兄弟だからな」
「くそっ、ばれたなら仕方ない。皆殺しだ。
プリンクが真っ先に暴れ始めた。
こうなるともう収拾がつかない。
ワイズベル達は空手だが、魔法を使うのに武器は要らない。
マフィア幹部の劣勢かな。
プリンクは情報を売ったから裏切ってはいるが、ワイズベルは裏切っていない。
だがマフィアを乗っ取る気満々だが。
クラフティ達はマフィアを狙っている。
ワイズベル達もだ。
プリンク達は、ワイズベルもマフィアもお構いなしだ。
なんと言うか乱戦だな。
「騒乱罪で逮捕する。大人しくしろ」
近衛騎士が乱入してきた。
ワイズベル達は、近衛騎士とやると不味いと思ったのか防衛以外の戦闘をやめた。
プリンクは逃げ出した。
クラフティ達は、ご苦労様ですとか言っている。
だが、逃げ出したプリンク以外は、全員が捕まった。
ワイズベル達は金を使って罪を逃れたようだ。
暴れたという罪だけだから、罪は軽い。
クラフティ達も同様だ。
ただクラフティ達は懸賞金の取り分を近衛騎士に要求した。
面の皮が厚い奴らだ。
とうぜん、今の近衛騎士団長は却下した。
プリンクの所の従業員は戦闘をしてませんと無罪を主張して受け入れられた。
実際にプリンク以外は戦闘してなかったからな。
マフィアは懸賞が掛かることになった犯罪は殺しとかなので、ほとんど処刑された。
マフィアと繋がりがある貴族の犯罪の証拠も出て来た。
概ね良い結果だ。
ワイズベルとマフィアの間はもはや修復不可能になった。
手打ち式にマフィアの武闘派は出てなかったので、マフィアは戦闘馬鹿が残ったと言える。
こりゃ、今後の戦いはワイズベルの勝ちかな。
策略家がいなければ、集団戦は勝てない。
しばらくはマフィアも大人しくしているだろう。
きっと武闘派が残党を掌握して決戦になるに違いない。
それには時間が掛かる。
しばらくは様子見だな。
「使ったら死ぬシリーズの作者と会えるんだって」
「ああ、ファントムが会いたがっていると言ったら、承諾した」
バッタ屋で作者を待つ。
そしてフードに仮面の怪しい小柄な人間が現れた。
「私はノイズ」
声が変えられている。
たしかに男か女かの区別はつかない。
「ファントムだ」
「何の用で会いたいのだ」
「使ったら死ぬシリーズの製作意図とか色々と聞きたくて」
「あんなのは駄作だが、糊口をしのがねばならん。製作意図は相手を圧倒する力が、ただで手に入ると思って貰ったら困るだ。力にはリスクが付きまとう。それと面白いからだ」
こいつ好きになれそうもないな。
「命懸けで、魔道具を使うのが面白いのか?」
「すべては公平であるべきだ。殺す側も殺される側も。公平の実現が面白い」
神にでもなったつもりなのか。
でも、一方的に殺せる武器があったら、それはそれでどうなんだと思う。
チートみたいに魔力を使って殺している俺が言うことじゃないか。
そういうチートが許せないってわけか。
きっとこいつはコンプレックスの塊だな。
恐らく魔法の腕があまり良くないのだろう。
そんな気がする。
こいつにとって俺は敵なんだろうな。
「だいたい、どんな人間か分かった」
「こっちも聞いていいか。反則とも思える魔法を使って心が痛まないのか。不公平だと思わないのか」
「不公平だと思うよ。ただ、生まれた家や環境、才能はみんな違う。公平な世界などあり得ない」
「持っている奴はみんな同じだな。私の魔道具を使っても死なない奴か。唾棄すべき存在だ」
「謝らないよ。俺だって努力や苦労をしてこうなっている」
「くそっ、世の中糞だ。所詮、私は雑音のひとつに過ぎないな。分かっていたことだ」
これからの開発計画とか技術交換だとかしてみたかったが、こいつとは相容れない。
だが、世の中にはこいつみたいな奴がたくさんいるに違いない。
チートをうらやむという奴が。
「時間を取らせたな。だが、参考になった」
「こちらもだ。また会おう」
なんか、また会おうに不穏な気配を感じる。
こういう奴はテロに走ったりしそうだからだ。
始末しておくべきなんだろうか。
俺は殺人の許可証を持っているわけではないし、始末すべきほど悪とも言えない。
蝶々部隊に監視させるべきだろうな。
危険人物であることは間違いない。
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