第56話 勇者選抜試験

 勇者選抜試験会場のドラゴンの巣。

 中は熱帯雨林フィールドだ。

 スコールまである。

 虫や蛭などが鬱陶しい。


 まあ、デス魔術がある俺には関係ないが。

 総勢、37名が参加。

 収納魔法ができない人は、遺失級魔道具である収納鞄が配布された。

 20個近くも収納鞄を国は持っていたんだな。


 みんな必要な物を収納した。

 他人を妨害しなければ、ほとんど何をやっても良いルール。


 妨害するようなマナーのない奴は勇者に相応しくないんだろう。

 参加している奴で知っている奴は、ゲイリック王子、スェイン、プリンクだ。

 プリンクは真っ裸まっぱパンチに懸けるらしい。

 あれは確かにザコには効くけどドラゴンは殺せないだろう。


 ルールは簡単、モンスターによって点数が付いていて、それで倒した数を集計する。

 ザコを中心に狙うのも良いし、大物を狙うのも良い。

 俺、実は収納魔術を物にした。

 あまり関係ないけどね。


 さて、いくぞ。

 俺が進むとデスの圏内に入った虫が雨の如く落ちる。

 プリンクは俺の後をついて行く作戦のようだ。

 落ちている虫の死骸を拾っている。


 虫のモンスターも点数になるのかな。

 俺はそんなのを拾うつもりはない。

 さっさと進もう。


 巨大なトカゲのビッグリザードが現れたが、デスの圏内に入って死んだ。

 収納魔術で片付ける。


 お次は岩の皮膚のロックリザートか。

 デスの敵じゃなかった。


 氷結魔術使ってみるかな。

 俺を中心に100メートルが氷の世界になった。

 中に入ったモンスターは全て動きが鈍くなってそして死んだ。


 寒いのは苦手なんだな。

 でもデスの方が良い。


 サクサクと進み、第1階層のボスに辿り着いた。

 実は4階層まで地図があるんだよね。

 今回は戦う能力を見るタイプの試験らしい。


 そうだよね。

 勇者に求められるのは索敵能力ではない。


 いよいよドラゴンか。

 レッサーだけどね。


 ボス部屋の扉の前には誰もいない。

 扉に手をやると開いた所をみると戦っている奴もいないようだ。

 もしかして、俺が1番乗り。


 時間勝負ではないからね。

 1週間掛けてやる試験だ。


 レッサードラゴンはワイバーンより小さい。

 しょぼいな。


デス


 おや、目から血を流したが耐えている。

 氷結魔術。

 うん、動きが遅くなった。


 あのネタ装備の使うと死ぬスタンガンを使ってみよう。

 身体強化魔術を使い電光石火の速さで近づいて、バチっとな。

 目が眩むほどの閃光と、轟音がした。

 おう、スタンガン魔道具は溶けている。

 ドラゴンは確かに無力化したけど壊れているじゃないか。

 バッタ屋に言ったら文句を言ってやろう。


 ドラゴンはフラフラしている。

 仕方ない。


ガン


 銃を生成、弾を込めて発射。

 弾丸はドラゴンの鱗を貫通したが、たいしたダメージにはなってない。

 肉で衝撃が吸収されたな。


死竜巻デストルネード


 今度は死んだようだ。

 かなり高密度の魔力でないと死なないらしい。

 ドラゴンの名前は伊達じゃないな。


 レッサードラゴンを収納して、奥へと進むポータルがあったので登録する。

 さて、攻撃が効かないとやばいな。

 どうせ奥はもっと強いのだろう。


 とりあえずの主戦力は死竜巻デストルネードだな。

 氷結魔術で動きを鈍らせてからのコンボが良いだろう。


 分身を収納魔術で取り出して放った。

 隠蔽ハイド魔術を掛けてだ。


 最初に見つかったのはプリンク。

 俺が通ってきた道を虫の死骸を拾いながら辿っているからね。


 虫の死骸って点数になるのかな。

 ならない気がする。

 点数表は発表されてないから、分からないけど。

 まあプリンクが0点でも構わない。


 次に見つかったのはスェインで、順調に進んでるが、虫に悩まされていた。

 でも手の届く所に虫が来ると剣で斬り捨てている。

 地味に凄い奴だ。

 剣の腕だけなら、きっと1番だな。


 次に見つかったのはゲイリック。

 虫を殺す魔道具を手に提げていた。

 国宝並みに貴重な魔道具なんじゃないだろか。

 虫対策が勝敗を分けるか。


 その点、俺は有利だな。

 弱い群れる奴には最強だと思う。


「おい。プリンク。虫って点数になるのか?」


 分身が姿を現し尋ねる。

 妨害行為ではないから聞いてみようと思ったのだ。


「邪魔しにきたのか」

「いいや不思議に思ってさ」

「ふっふっふっ、秘策だよ。頭の悪いお前には分からないだろう」

「分からなくっていいよ。プリンクと同じ思考はしたくない」


「そのうち見てろよ」

「ああ見てるよ」


 分身を再び隠した。

 どうせろくでもない秘策なんだろうな。

 聞くまでもないと思う。

 でもちょっと興味があるから分身の追跡はやめない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る