第84話
「……今日はあんまりあやちゃんとこうして触れられなかったから、ちょっとだけ」
私はその言葉を聞いた瞬間、眼の前が真っ白になって意識が飛びそうになった。
今の言葉を聞くに、ひなは今こうして私にすり寄って甘えているということなのだろうか。
私はそっとひなの頬に触れている手を動かしてひなのメガネを外した。
「…ひな、あんまり可愛いこと言ってると襲っちゃうから、ダメだよ?」
ひなのメガネをそっと離れた場所に置いてひなの頭を抱え込むようにハグをする。
きっとひなには私の激しい心音が伝わっているだろう。
「…ま、まだ心の準備ができてないかな」
ひなはそう言いながら私のハグを受け入れるように私の腰に手を回して深く密着した。
「あ、あやちゃん…その、明後日って空いてる、かな?」
ひなとのハグを満喫しているとひなはおずおずと私の予定について聞いてきた。
明後日といえば確か翡翠さんと仕事の予定があった気がする。それも午前と午後にまたがるように。
「…ごめんね、仕事があるや」
「…そっか」
私の腰に回っているひなの腕の力が少し緩んだ気がする。
ひなはきっとデートに誘ってくれようとしたんだろう。ひなから誘われるデートを断るなんて、それはあまりにも嫌すぎる。
「午後の4時くらいからなら空いてると思うけど…」
私は脳内にあるスケジュール帳を懸命に思い出しながら空いている時間をひねり出した。
「うん、じゃあ夕方から…デート、しない?」
ひなは真っ赤な顔をあげて恥ずかしそうにデートに誘ってきた。
「もちろん。…今回はひなにエスコートしてもらおうかな?」
「う、うん!任せて!ディナーのプランも練ってくるよ」
ひなは安堵したのか少し脱力して緩く微笑んだ。
私はこのままひなをドロドロに甘やかしてしまいたい欲に駆られる。
甘やかしすぎて赤ちゃんみたいになってしまったひなの世話をなんでもかんでもしてみたいな。ひなの包容力に甘えてずっとひなの胸に抱かれているのも良いだろう。ひなによしよしされて私のすべてをひなに曝け出して……。いや、やっぱり私は甘やかされるよりも甘やかす側が良い。
「?」
私の薄い胸に顔を埋めるひなの頬をそっと包んで顔をあげさせる。何がなんだか分からず、きょとんとしている様子が可愛らしい。
愛しいひな、ひなは将来どんな顔で私を見てくれるのかな。
そう思いながら私はひなの前髪をそっと横に流し、ひなの可愛らしいおでこに唇を落とした。
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