第35話
海を充分に楽しみ、疲れ果てた私たちは夕方ながら温泉に入ることにした。
シャワーを浴び、水着から着替えて旅館へと戻る。そういえば杏からのひなについての報告をまだしてもらっていない。
どうせなら温泉に入る前に聞いておこう。そう思い、杏の肩を叩いた。
「杏、ちょっと話あるんだけど温泉入る前にいい?」
「あ、はい。わかりました」
先々に温泉へ向かうギャル共を横目に私と杏はその列から抜け出した。
ひながこちらを不思議そうに見ていたので聞かれてしまわないように意識して小さな声で話す。
「どう?ひなはなんか言ってた?」
「んー、それが、誤魔化されちゃって。なんでもないよとか、寝過ぎちゃったからかなとか。なんにしろ意味ありげな顔してましたよ」
「ふーん…そっか…」
「これは嫉妬してるんですよ!ひなは完全に綾華さんのこと気にしてますって!」
正直私もそう思っている。ひなは私のことを気にしている。これは友達とか親友とかの目線で、ではないだろう。
「やっぱりそう思う?…ねぇ、これからさひなをより嫉妬させるためにはどうしたらいいと思う?」
「うーん…やっぱり他の人との接触を増やす、とかですかね?」
「でしょ?私もそう思うんだ。でね、杏ちゃんも協力、してくれるよね?」
私は目一杯の笑顔で杏に微笑みかける。杏は少しビクッとして苦笑いで答える。
「は、はい〜…」
すっかり萎縮してしまった杏を引きずって温泉へと向かう。道中、お手洗いを済ませたひなと合流し、共に向かった。
「遅いぞ!あや!」
「もううちらすっぽんぽんだべ〜」
更衣室へ入った途端、蛮族…もとい変t…ギャル共が現れた。
「ちょっと、ひなの目を汚さないでよ」
「うわ!あたしらの美しき裸体を汚いと言ったな!翡翠っち!こいつとても無礼だ!」
「うわ〜!あれだぞ!親しき仲にも礼儀あり!」
「あ〜…紫苑、頼んだ」
「へ?」
うるさいギャル共は紫苑に丸投げしておいて衣服を脱ぎ始めることにした。
「無視すんなし!」
「最低〜!」
「ま、まぁまぁ…いつまでも裸のままだと風邪ひきますよ。早めに温泉につかったらどうです?」
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