第76話
私はチョコバナナのクレープを一口、食べる。
それに対して鈴木さんは豪快にストロベリーのクレープを頬張った。
「あ!田代さんの食べ方かわいー…なるほどそうやって食べるのか…」
ジロジロと見られながら食べるのはとても居心地が悪いのでやめてほしいところだが、これは鈴木さんの奢りなのである程度のことは許してあげよう。
「てか、田代さんが誘いに乗ってくれるとは思わなかったよ〜」
「うん、断ろうと思った」
「素直だね?!」
私の機嫌しだいでは断っていただろう。そういう意味では鈴木さんは運がいい。
「私さ、好きな人いるんだよね〜」
鈴木さんは突然私の返事もなしに語りだした。
「んで、その人の好きな人が田代さんなの。だから私、田代さんみたいになりたくって〜!んで、好きな人に振り向いてもらうの!」
鈴木さんはガハハと豪快に笑った。
「……誰かに似せた自分を好きになっもらうって…意味なくない?」
「うぐっ」
自分を隠して誰かの皮被って好きになってもらうってなんて虚しいんだろう。
「…でも、そうしないと振り向いてもらえなくない?」
鈴木さんは今までとは違う悲しそうな顔で小さくつぶやく。
「……恋愛は受験とか就職とかと一緒。自分らしさとかを相手に売り込んでほしいと思わせる。それが恋愛ってもんだと思う。だから他人のマネじゃなくて自分だけのものを磨くべきだよ」
「自分らしさ…売り込む…」
私だって恋愛経験はひな以外ではない。だから少し恥ずかしいが、ひなにアピールする時はいかに私じゃないとダメだと思わせるかを意識した。
「くふっ…田代さんって意外と優しんだね」
「……」
きっといつもならこんな恋愛相談なんて乗らない。
しかし、奢ってもらった分のお礼でもあるし、鈴木さんを利用するためにもこの相談に乗るのは重要だと思っている。
「はぁ…見返りは求めてるからね」
「はーい!私にできることであれば」
鈴木さんは私に向かって抱きついてくる。
これだからイマドキ女子の距離感は嫌いなんだよ…。すぐに抱きつくなんて尻軽な……。
「あやちゃん…?」
ふと聞き慣れた声が聞こえてきた。
そちらを見るとこちらを見て驚いているひなが立っていた。
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