第77話
その場に立ち尽くすひなと鈴木さんに抱きつかれた状態の私。
「へぶっ!」
私はすぐに鈴木さんを引き剥がし、ひなのもとに小走りで近づく。
「ひな、用事はもう終わったの?」
「えっと…うん」
ひなはきっとさっきの光景を見て浮気を疑っているかもしれない。
「おや、浜崎さん!いやぁ〜田代さんをお借りしておりますぅ」
鈴木さんはおちゃらけた様子でそういった。ひなも『は、はぁ』と困惑している様子だ。
「ん、ただ相談事に乗ってただけだよ。もう用はないんだよね?こっちも鈴木さんの話終わったから一緒に帰ろ」
ひなはコクコクと頷いて了承する。
鈴木さんと別れを告げて、駅の改札へと向かった。
「あ、あやちゃんが他の人といるなんて珍しいね」
「ん、帰り道に話しかけられて。悪い人じゃなさそうだったからいいかなって」
「ふ〜ん…」
ひなはこちらに目を向けることなく俯いたまま空返事する。
「ひな、もしかして嫉妬してるの?」
ひなは肩をビクッとさせてそっぽを向く。
そんな様子がとんでもなく可愛らしくて、もっといじめたくなってしまう。
「ひな、こっち向いてよ」
「ほ、ほら!電車来たよ!」
ひはな変わらずこっちを見ることなく私の手を引いて電車の扉の方へと向かう。
私はそのままひなを押し込むようにして座席に座った。二人がけの席なのでこれでひなは逃げられない。
「ひーな」
私はひなの細い腰を抱いて耳元でそうつぶやく。
胸元にあたっているひなの胸からはドキドキと大きな鼓動が伝わってくる。そして、ひなの体温が上昇するのを感じる。
「あ、あやちゃん…離れて」
ひなから離れてほしいと言われるのは少しショックだ。傷ついた。
なので私は大人しく離れる。ひなを抱いていた手も膝の上に置いておく。胸がサーッと冷たくなっていくのを感じる。
「あ、あやちゃん?そ、その…嫌だったわけじゃなくてね?き、緊張しちゃうからで、え、えっと…」
ひなはそんな様子の私に対してオロオロと慌てている。
「ん、今度ひなからキスしてくれるなら機嫌治す」
私は唇を尖らせて甘えるようにそういった。
自分でやってて反吐が出るが、ひなは私のこういう子供っぽい行為にはとても弱い。
「うっ……わ、わかった」
こうして私はひなからのキスという約束を勝ち取った。
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