第78話

 今日のひなは可愛かった。


 明らかに嫉妬していたし、ひなの中で独占欲が湧いてきているのがよくわかって嬉しい限りだ。


 私は家に帰ってご飯を摂るとすぐに自室に引きこもってスマホを起動する。


 アプリを開いてひなの部屋に仕掛けたカメラでひなの様子を見る。


 ちょうどひなも部屋にいるようでベッドの隅に座ってスマホを触っているのが見える。


 まだ暑さの残るこの時期だからか、ショートパンツから覗いている真っ白な太ももが魅力的だ。


「ひな…何してるのかな」


 画面にうつるひなをそっと撫でて様子を見守る。


 このカメラには残念なことに音声を受信することはできない。だからひなのことを文字通り見守ることしか出来ない。


 ひなはスマホを触ってはニコニコと笑っている。画角的に何を見ているのかがわからないのがむず痒い。


 じっと見ているとひなは段々と元気がなくなっていく。暗い顔でスマホをベッドに放り投げて顔を伏せた。

 少しすると赤い顔でガバっと起き上がって着替えを持ってお風呂へと向かったようだ。


 何を見て不機嫌になったのかは分からないが、これがもし今日についての嫉妬なら嬉しい。


 私もひなのいなくなった部屋を見続けるわけにはいかないのでお風呂にでも入ろうかと席を立つ。


 少し前のひななら私がクラスの女子と二人で放課後に寄り道していようが嫉妬はしなかっただろう。


 私は自身の唇を指の腹でそっとなぞった。


 ひなと何度か口づけしたその唇は口角が上がっていた。


 私が本来ひなに持ってほしい独占欲を10とするなら今のひなには2程度といったところだろうか。


 これはきっと一般的なカップルなら普通に持ち合わせるぐらいの値だろう。


 やはり嫉妬させるというのは難しい。愛想をつかされてはいけないのだから、冷たくするだけではダメだ。


 うん、やはり鈴木さんを利用しよう。


 鈴木さんを踏み台にしてひなとのステージを一段階進めようじゃないか。

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