第93話
今日は放課後に紫苑とともに買い出しにきている。
買い出しと言ってもこの間、クラスの男子たちが近所のスーパーから大量の段ボールをもらってきており、段ボール自体は足りている。
買わなければならないのはボンドである。
ボンドというのは案外使うもので一般家庭にあるような木工用ボンドでは事足りないので、ホームセンターにボンドを探しに行くことにした。
ついでに他のクラスメイトからのお遣いをもらっているので、それらを探しながらの買い出しとなる。
本当ならひなも来る予定だったのだが、想定していたよりも鈴木さんの画力が足りていなかったため抜け出せなかった。
「そ、それでですね!今度翡翠さんとカフェに行くことになりまして…」
紫苑は顔やら耳やらを真っ赤にしながらもボソボソと話す。
私に想い人を告白してからの紫苑はかなり惚気けるというか、やたらとデレデレと恋バナをするようになったもので、随分と素直になったものだ。
「あ、あれ?どうしたんですか?」
ぼーっとしている私に不安を覚えたのか、紫苑が心配そうに顔を覗き込む。
一昨日、ひなのスマホに『正樹くん』たる人物の名前を知ってからというものの、なんだか心が落ち着くことがない。
私はどうしようかと悩んだが、素直にあったことを紫苑に話すことにした。
「はぁ…ひなさんのスマホに男性の名前…」
紫苑は真剣な顔で考え込む。
「親戚の方という可能性は?」
「それも考えた。その可能性が高いっちゃ高いんだけど、親戚だからといってひなを狙っていない理由にはならないでしょ」
いとこ同士なら結婚できるというのをどこかで聞いたことがある。
ひなはいい子でこんなにも可愛らしいのだから、親戚であれど恋愛感情を持たれる可能性だってあるはずだ。
「な、なるほど……で、でも最近のひなさんの様子に変化はないんですよね?」
「うん、それはない。それどころか最近は結構甘えてくれるようになったぐらい」
最近のひなにやましい様子はないし、特に何かを隠している様子はない。ただ、親しげな呼び方が引っかかるだけではある。
「ま、まぁ気にしすぎですよ!傍から見てるとお二人ってとってもラブラブですし、ひなさんってガードが堅いって男子の間では有名らしいですよ!」
「そうなの?」
ここまで気になってしまうのなら、ひなに直接聞いてみるのもありかもしれない。
「ちなみにラブラブってどこらへんがそう見えた?」
「え?えっと、それはですね、例えば………」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます