第121話

 ひなに昨日映画に行っていたことを話すと、なにかの運命なのかひなも昨日映画に行っていたようだ。


 ひなはどうやら最近流行りの恋愛映画を見に行っていたらしい。


 あの映画といえば予告は見たけど、独占欲の強い推しに翻弄される主人公の話じゃなかったっけ。それを家族で見に行くのって気まずくないのかな。


 まぁそれはそれとして、映画の話をするとひなはさっきよりも明るい表情をしているけれど、どこか暗さが増した気がする。


 話の流れから察するならば、昨日見た映画が相当すごい結末で胸に少し傷跡が残ったのかもしれない。ひなは感受性が豊かだ。それも十分ありえる。


 となれば恋人としてやることは1つ。


「ひな、おいで」


 私は両腕を広げてひなを抱きしめる準備を整える。


 ひなの気分が優れないのならば、それをちゃんと癒せるのは恋人である私だけ。恋人としての責務でもあるだろう。


 ひなはおずおずと腕を伸ばし、私の腕にちょこんと収まった。


 いつものひななら最終的にハグはするけど、それまでは多少なりとも恥ずかしがって一言二言何かしら言うはずだ。


 つまり、今の状態は異常。やはり心労?


「ひな、今日は私が1日癒やしてあげる」

「え?あ、あやちゃ…」


 私はひなを誘導してひなに膝枕をする。


 ひなは度々膝枕をしてくれるのだが、その際にはとても癒やされる。これはそのお返し。たっぷり癒やし返そう。


 足に乗せられたひなの頭を優しく撫でる。ひなはまだ恥ずかしそうにしているけど、しばらくすれば慣れてリラックスしてくれるはずだ。


「あ、あやちゃん…そ、その…ちょっと恥ずかしいんだけど…」

「大丈夫。直に慣れるよ」


 起き上がろうとするひなを抑えながらひなの頭やほっぺ、お腹に至るまでを撫で尽くす。


「あ、あやちゃっ…も、もういぃ……もういいよぉ!」


 私の手から逃れようと身を捩るひなの様子に少し興h……違和感を覚えた。


 いくらひなが感受性豊かだとしてもこんなにはしゃいでいれば気も紛れてくるはず。それなのにひなの顔から暗さが消えきらない。


「ひな、何か隠してる?」


 私はもしやと思い、聞いてみるとひなはそっと目をそらした。


「な、何も…」

「………嘘」


 疑惑から確信に変わり、ひなが目を逸らせないようにしっかりと顔を上に向けさせる。顔が熱い。動揺してる。


「い、いや…ほんとに」

「ひなが本当のこと言ってくれるまで離さないから」


 これはひなと私の我慢勝負。しかし、ひなが負けるのが確定事項。


「あ、あぅ…」

「ひな、話して」

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