第122話

 しばらくひなを上から詰めているとひなは噤んでいた口をようやく開いた。


 ひなによるとなんとたとえ従兄妹だったとしても、私が誰かと仲よさげにしていると嫌な気持ちになるんだとか。


 ………もしかして、独占欲?


 そう気づいた瞬間、体がどんどん熱くなってくる。


 私の当初の目的が1つ、ようやく叶おうとしているんだ。あとはより深い依存関係になってお互いから離れられなくなれば完璧。


 それよりも今は今のひなのことだ。


 今のひなはきっととても寂しくて心細いはずだ。私だったらとってもイライラするから、気持ちはよく分かる。


「ひな、大丈夫だよ。私もよく同じ気持ちになる」

「ほ、ほんと…?」


 ひなは顔を隠していた両手の隙間から目を覗かせてそう聞いてきた。


「うん。私、ひなのこと、ずーっと好きだったからね」


 私はひなの頬を撫でるようにしてひなの手をどかせる。


 頬は真っ赤だし、今にも泣きそうなほど目に涙を溜めて。本当にかわいい。


「多分、この気持ちはね、独占欲っていうやつだと思うの」


 私は心を決めて、ひなにはっきりと自覚させるため、言い聞かせるように話す。


「でも、こんな気持ひなに話したら重いって言ってフラれちゃうと思ってたんだ。だから、ひなも同じ気持ちだって、今確認できて嬉しい」


 ひなの頬に添えていた手に何か暖かい液体が触れる。ひなの涙だ。


「私、ひなに独占されるならとっても嬉しいよ」


 きっとあともう一押し。あともう一押しでひなも素直になってくれるはず。


 独占欲を隠さなくなったひな。その言葉だけで失神してしまうのではないかと思うほどにクラクラする。


「だからね?ひな、私達もうちょっと素直になっても良いんじゃないかな」


 ひなはのそりと起き上がって私の隣にちょこんと座り直した。


 ひなの顔はもちろん、耳や首まで真っ赤になってしまっている。


「……す、素直になりまひゅ」


 ひなはうつむいたまま小さくコクコクと頷き、ぼそっと私の悪魔的な誘いを受け入れた。


「……うん、素直になっちゃおっか」


 膝の上で強く結ばれたひなの手を上からそっと握る。


 今のひなはとっても緊張している。ここで無理にハグでもしてしまえばひなが気絶してしまうかもしれない。だって私もそうだからね。

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