第57話
コンコン
紫苑の暴走も落ち着き、メイクもあらかた終わったところで控室のドアがノックされた。
「こんにちは〜」
ドアを開けて入ってきたのはアイラさんと2人の女性。純恋さんが言っていた相手側のモデルだろう。
「綾城ちゃんも久しぶり♡」
「……ども」
甘い匂いに顔をしかめるのをなんとか抑えつつ、返事をする。
「紫苑ちゃんも今日はモデルの仲間入りでしょ?かわいい〜♡」
「あ、ありがとうございます…」
アイラさんは私の返事に満足したように頷き、紫苑へとターゲットを移した。
「あなたが綾城ちゃんだね!今日はよろしく!」
「よろしくねぇ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
他のモデルの2人にも挨拶を済ませ、後は萌歌さんの後ろあたりで存在感を0にする。
萌歌さんには『何してんの?』みたいな目で見られた。
しばらくはお菓子を食べたりしつつ待機して、呼びにきたスタッフさんについて撮影スタジオに移る。
紫苑はビビリ散らかしており、完全に私の後ろに隠れてしまった。
まずは私とアイラさんの撮影らしく、早速気分が落ち込んでくる。
「綾城ちゃん、もっとこっちに寄って」
アイラさんに引っ付かれながらも感情を無にして耐える。
「綾城さん、もっと笑ってください」
「バカがお前、綾城はあの無感情クール感なのがいいんだよ」
スタッフさんの無理なお願いにどうしようかと思っていると純恋さんから思わぬ助け舟が来た。
私って無感情クール系なんですね…。楽だからいいけど。
「綾城ちゃん、リラックス♪リラックス♪」
「……はぁ…」
「うっわ…綾城さんめっちゃ耐えてる…」
「が、頑張れあやさん…!」
アイラさんと接触する時間は相対的に見ると少ないはず。もうしばらく耐えよう…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます